新・私の本棚 番外 NHK BSP「邪馬台国サミット2021」 新総集 2/3
[BSプレミアム]2021年1月1日 午後7:00, 【再放送】 5月30日 午後0:00,12月27日 午前9:14
私の見立て ★★★☆☆ 諸行無常~百年河清を待つ 2021/05/24 補充 2021/12/27
*「自虐論」始末記
「自虐」論は、纏向論者が、纏向絶倫と認めない九州論者に浴びせた罵倒、自爆です。というものの、挑発し泥仕合の罵り合いに持ち込む子供の口喧嘩戦法に、大人は乗らないのです。「自爆」は、論議に窮した焦りを暴露するのです。箴言をもじると「暴言は無能な論者の最後の隠れ家」。自滅の手前と言えます。
視聴者が、このような乱暴な決めつけに賛成すると見くびっているのでしょうか。
*文学表現の曲解
続いて提出された、乱暴でくたびれた俗説「白髪三千里」は、無風流な浅知恵です。
李白は、漢詩三千年の史上最高の詩人であり、気宇壮大な比喩は、現実を大きく離れ、感動を誘うのです。白髪三丈などと、陳腐な戯言と次元が違うのです。それとも、評者は李白の上を行く芸術家でしょうか。奇特です。
普通、そのような芸術性を「誇張」と感じるのは、感性の貧困です。李白と現代の俗物の背比べなど、見たくもありません。
いや、どんな俗物でも、この表現は明らかに詩的比喩であり史学的発言でない位は理解できるはずです。とことん場違いでしょう。古代史学の先賢が、中国文化蔑視のために言い出したことでも、無批判に追従しない方が良いでしょう。先賢の恥を蒸し返すのは、勿体ないと見えます。
*軍人功名談の愚例
「戦果十倍誇張」は史書表現ですが、史書では、論外の愚行としてあげられていて、参考にも何にもなりません。これは、皇帝の警鐘であって、「軍人の手柄話では騙されないぞ」と釘を刺しているのです。
軍功はクビの数ですから、十倍誇張で十倍の褒賞が帰ってきますが、新来蛮夷に関して、道里、戸数を誇張して、何の報いがあるのでしょうか。直にばれるウソなど、悪くすると、虚言の廉で(本当に)首が飛ぶのです。軍人は、多くの試練を経て将たる地位を得るから安直な誇張はしないのです。まして、魏使は戦果を求められていないから、この手の誇張はあり得ないのです。
特に、曹丕、曹叡は、曹操の布いた厳格な軍規を継いでいて、なまくらな皇帝ではありませんから、薄汚い功名稼ぎのおおぼらは通用しないのです。あるいは、論者は、遼東公孫氏を、郡高官もろとも殺戮した司馬懿に筆誅を加えているつもりかも知れませんが、司馬懿は、現地に、遼東郡の死者の「京観」を築いて軍功を公開したのですから、方向違いと言うべきでしょう。
*くたびれた「定番」の去るべき時
この二件は、纏向説論者の好む、「定番」の古典的罵倒表現でしょうが、外界で通用するものではないので、何れかの世代で棄却すべき負の遺産でしょう。同学の先師の旧説の中で、安直な比喩(大抵は誤解)余談は、学問の世界では進歩に取り残された遺物、「レジェンド」となりかねないので更新されるべきです。
当番組では、新証拠が展開されるはずでしたが、使い古した年代物の詭弁連発でした。今回の纏向論は、先進の気概の乏しい人材で随分損をした感じです。こうした前世紀定番の蒸し直ししか出せないのであれば、番組の時間の浪費でと思うのです。
早急に「纏向邪馬台国」の存亡をかけて、世に問うべき「新説」を創出すべきではないでしょうか。それが、「纏向邪馬台国」の晩節を飾るものと思います。
因みに、当ブログ筆者は、倭人伝が正確無比な記録文書だと言っているのではないのです。むしろ、入念極まる推敲を重ねた高度な「創作」文書であると信じています。
この点は、登場した渡邉氏の表現が正鵠を得ています。陳寿は、読者たる西晋皇帝などの当代知識人に理解できる用語、表現を凝らして「倭人」伝を書き上げたのであり、そのために現代人には理解できない婉曲な表現になっても、それは「倭人伝」の本質なので、現代人が文句を言っても仕方ないのです。陳寿の綴った「設問」の真意を理解できない「落第者」が、門前山を成しているようですが、このように簡単に「降参」して、二千年を経た「問題集」を臥竜で書き換えるのでは、視聴者に醜態をさらしていることになるのです。何とか、「思い込み」を棄て虚心で「倭人伝」世界に入門してほしいものです。
*闇談合露呈
まして、収録終了後「オフレコで言いたい放題言い合おう」などとは、闇談合で抱き込もうとの、さもしい根性でもないのでしょうが、歴史を夜作るのは、良い加減にしてもらいたいものです。視聴者が見ているのです。
それにしても、「爆問」が最後に小声で漏らした総括は「史料の原文に戻って、最初から丁寧に考えなおした方が良い」という趣旨のようで、冷静で控え目でした。それが、入門を目指す「倭人伝素人」の採るべき(唯一の)道なのです。
纏向論者は豊富な学識を駆使して、陳寿が「倭人伝」で描いた「倭人」世界像の理解に勉めるのが本務であり、視聴者、納税者に対する義務のように思うのです。
未完
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