新・私の本棚 小畑 三秋 「卑弥呼の都、纒向に突如出現」
産経新聞 The Sankei News 「倭の国誕生」「卑弥呼の都、纒向に突如出現」 2022/1/13 07:00
私の見立て ★☆☆☆☆ 提灯担ぎ 2022/01/13 2022/11/23
〇はじめに
当記事は、「産経新聞」ニューズサイトの有料会員向け記事である。以下の引用は、許容範囲と見ている。
*報道記事としての評価
当記事は、一流全国紙文化面の署名記事としては乱調で感心しない。
「邪馬台国(やまたいこく)に至る。女王の都するところなり」。中国の歴史書、魏志(ぎし)倭人伝は邪馬台国に卑弥呼(ひみこ)がいたとはっきり記す。
大変な虚報である。中でも、魏志「倭人伝」は、中国史書であり中国語で書かれている。「事実と異なる」報道である。「はっきり」記しているとは、虚報の上塗りとの誹りを免れない。また、記者の自筆を纏向研発表と誤解させるようで感心しない。「フェイクニュース」は、ご勘弁いただきたい。
*纏向研の幻像創造
寺沢薫所長の発言は、以下の通りと見える。
同遺跡は、卑弥呼の時代と重なる3世紀初めに突然出現した。「過疎地にいきなり大都市が建設されたイメージ」と寺沢さん。卑弥呼について魏志倭人伝は「各地の王が共立した」と記すことから、大和(奈良)をしのぐ一大勢力だった北部九州や吉備勢力が主導して擁立し、纒向に都を置いたとの説をとる。
*君子豹変
過去の発表で、纏向は、盆地地形で外部世界から隔離され、従って、文物の流入が少なく、また、温和な集団と聞いたが、一方、随分早くから筑紫に至る広域を支配していたとの両面作戦をとっていたように思う。近来、考え直して、女王渡来幻像(イメージ)作戦に「突如」戦略転換したのだろうか。
「突然」「突如」と言うが、これほどの大事業は、多数の関係者が、構想から建設の大量動員の年月を経て、女王入場まで、大勢が長期に携わって初めて実現できるのである。大変ゆるやかな大事業だったはずである。なぜ、ドッキリの「サブライズ」を催したのだろうか。
以上は、最有力研究機関の研究者の「総意」で進めていることだろうから、素人がとやかく言うことではないが、「君子豹変」は正当化できるのだろうか。
*倭人伝解釈の変調
因みに、「倭人伝』には、「各地の王が共立した」と中国語で「はっきり」書かれているわけではない。各国王は、限られた一部だけだったはずである。「倭人伝」で、伊都国には、代々王がいたと書かれているが、他の「諸国」が王国であって、王位継承していたとは書いていない。
念のため言うと、「倭人伝」記事で明記されていない「大倭」ならぬ「大和」の「一大勢力」を書いていないし、ました、「二大」か「三大」か「三十一大」かは知らないが、北部九州や吉備の勢力について、何も書いていないのである。
総じて、「所長」は、何を見て喋っているのだろうか。是非、後学のために、秘蔵、門外不出と言わずに「秘伝書」を公開頂きたいものである。
また、担当記者には、権力に迎合しない「報道の真髄」を示して頂きたいものである。
*「所長、大丈夫ですか」
それにしても、根拠の乏しい強調は、大抵、理論の破綻を覆い隠す常套手段である。所長は、大丈夫だろうか。いや、「大丈夫」というのは、所長のフィジカル、体躯が、三国志の関羽将軍なみにドデカいとか、言っているのではない。単なる冗句である。「過疎地」、「大都市」などと、時代離れした、現代日本語の冗句を飛ばすから、悪乗りしたのである。
纏向研は、「大家族」なので、武運長久とご自愛を祈るしかない。
以上
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