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2022年1月 6日 (木)

新・私の本棚 小畑 三秋 「卑弥呼は北部九州や吉備主導で擁立した」 1/2

産経新聞 The Sankei News 「倭の国」「卑弥呼は北部九州や吉備主導で擁立した」 1/6 07:00
私の見立て ★☆☆☆☆ 安直な提灯担ぎ  (★★★★☆ 堅実な時代考証)        2022/01/06 2022/11/23

〇はじめに
 お断りしておくが、当記事は、「産経新聞」ニューズサイトの有料会員向け記事であり、当ブログ筆者は有料会員でないので、記事末尾は見えていない。但し、新聞記事の伝統に従い、当記事の要点は、冒頭に明示されている思うので、的外れな批判にはなっていないものと信じて、当記事を書き上げた。

*二段評価の説明
 当記事は、持ち込み記事の提灯持ちであり、一流全国紙文化面の署名記事として感心しない。タイトルが文法乱調で混乱しては勿体ない。
 持ち込み記事部分は、考古学の本分として、堅実な時代考証に賛辞を送る。

*適切な著作権処理
 今回の図版は、纏向研寺沢所長著作の持ち込みのようだ。個別の資料写真は、出典が明示されていて、公共研究機関の広報資料としては、まことに堅実である。また、趣旨不明の「卑弥呼」像と図版全体には署名がないが、当然、寺沢所長提供と見るが、明示されていないのは、産経新聞の疎漏である。

*画餅の不備
 一見して、纏向は、「現代の西日本地図」に示された各地勢力から見て「極東辺境」である。しかも、西方勢力から長延の行程の果てとして到達困難な山中の奈良盆地の「壺中天」である。その東端のどん詰まり」、「袋の鼠」の纏向勢力が、どうやって、これら交通至便な有力勢力を屈従させたのか、まことに不可解である。
 いや、この感想は、随分以前に「纏向」と訊いた瞬間に想定されたのだが、かくの如く図示されると、画餅の意義が見えないのである。

*あり得ない広域支配
 当時の交通事情、そして、当時は、騎馬文書使による文書通信が存在しなかったことから、纏向と諸勢力の報告連絡は、遅々たる徒歩交通の伝令の口頭連絡であり、従って、遺物が残っていないのかも知れないが、年々歳々の貢納物は、延々と徒歩搬送であり、極めつきは、互いに闘うと言っても、武装した兵士が、延々と徒歩行軍するときては、往復の行軍中の厖大な食糧の輸送・補給を含めて、消耗が激しく、遠隔地に渡海遠征など、はなっからできないのである。このあたり、肝心の足元が裸足のさまで、到底成り立たない夢想と見られても、仕方ないのである。

*一極集中の破局
 また、氏は、「各勢力貢納物が纏向に集中した」と言うようだが、九州からの貢納物は、ほぼ必然的に吉備勢力圏を通過するが、まさか、素通りできないのである。途中で割り前を取られたら、とても、纏向まで物資は届くまいと見るのである。
 ということで、纏向一極集中の無理を、九州、中国、四国の支持あっての纏向としたかったようであるが、どうも、無理のようである。

*密やかな四国「山のみち」提唱
 図は、四国山地の中央構造線沿いの「山の路」を、弥生時代の大分海港から鳴門に至る交易路としていると見える。我が孤説の支持と思うが、大変うれしいものの、何か根拠があるのだろうか。あれば、是非提示いただきたいものである。四国に古代国家を見る諸兄姉には、大変心強い支持となるのである。
 この経路は、瀬戸内海の交通を難く妨げていた関門海峡から鳴門海峡までの数多い海の難所が無関係となり、また、但馬勢力を飛ばすので、手ひどい収奪は避けられる。但し、この経路に潤沢な交通があれば、ものの理屈として、途上に地方勢力が形成され、結局、とても纏向まで物資は届くまいと見るのである。交易の鎖は、ひ弱いように見えても、その区間を強く支配しているので、手強いのである。

 心地良い絵が描けたら、どのようにして、日々運用し持続するか考えてみることである。それが、伝統的な考古学の本分と思う。

                                未完

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