« 新・私の本棚 番外 NHK BSP「邪馬台国サミット2021」補 ⑵ 概論 5/5 | トップページ | 新・私の本棚 番外 NHK BSP「邪馬台国サミット2021」補 ⑵ 概論3/5 »

2022年3月14日 (月)

新・私の本棚 番外 NHK BSP「邪馬台国サミット2021」補 ⑵ 概論 4/5

[BSプレミアム] 2021年1月1日 午後7:00, 【再放送】 5月30日 午後0:00
私の見立て ★★★☆☆ 諸行無常~百年河清を待つ    2021/05/24 補充 2022/03/14 2024/06/02
NHKオンデマンドで公開中 (2022/03/14現在)

*加筆再掲の弁
 最近、Amazon.com由来のロボットが大量に来訪して、当ブログの記事をランダムに読み囓っているので、旧ログの揚げ足を取られないように、折に触れ加筆再掲したことをお断りします。代わって、正体不明の進入者があり、自衛策がないので、引きつづき更新を積み重ねています。

*不用意な失言集 順不同

  •  纏向関係者は、好んで「日本」と言いますが、三世紀当時、「日本」などありません。
  •  三世紀「日本列島」に現代風「都市」はないし、中国外に「王都」は存在しません。
  •  「倭人伝」には、卑弥呼を「諸国で」共立したとは書かれていません。
  •  どさくさ紛れに、卑弥呼遣使を二百三十九年と言うのも、考証不正で杜撰です。
  •  卑弥呼は「鬼道」に事えたと言いますが、「倭人伝」には、卑弥呼が呪術を行ったとは書かれていません。
  •  後漢書倭条では、邪馬台(たい)国でなく邪馬臺(だい)国です。ごまかしてはなりません。
  •  最初の王が女性と言うものの、それまで「男王」が代々続いていた筈です。
  •  倭国「乱」は、諸国が近隣と諍いして、王が調停できかっただけであり、戦い合ったわけではないし、三世紀の交通、通信事情では、遠隔地と長期間の交戦は不可能です。
     范曄「後漢書」が持ち込んだ「大乱」は、国の覇権を目指して竜虎角逐するものであり、総力戦と言わないまでも、相当の壮丁を死傷させるので、安直に行うものではありません。三世紀当時の「国」が、農耕を度外して総力戦に乗り出せば、亡国必至です。

 以上、勉強不足の勘違いが、雪崩れています。『「倭人伝」など、苦労して解釈する必要はなく、好きなように書き換えれば良い』のだという、安易な姿勢が感じ取れます。

*「ネットワーク」の怪
 文字のない、つまり、文書のない三世紀に「ネットワーク」とは時代錯誤であり、奇異です。広げた網の節々同士、相互の連絡をどうしていたのか。そもそも、カタカナ言葉の本来の意味がわからないままに、うろ覚えで当てはめられては、不可解です。また、連携を言うなら、平時の行政運営を重視すべきです。
 いずれにしろ、言っている当人すら、言葉の意味が理解できていない「生煮え」、「うろ覚え」の理屈を振り回されては、読者、視聴者はたまりません。ことは、簡単で、古代史論で、カタカナ語を原則排除すれば良いのです。

*雑言集
 「スケール小さすぎ」と褒めているのは、女王国「邪馬臺国」七萬戸説に惑わされています。一度、倭人伝の戸数記事をよくよく見直して欲しいものです。いずれにしろ、このような「幼児語」では、論議できません。何しろ、時代錯誤の大国幻像を脳内に飼っているので、大小判断が錯綜しているのです。
 素直に読むと、女王が居処としているのは、官吏が千人程度いるだけの隔壁聚落であり、万戸代の戸数を有する「国家」ではないのです。

 鉄鏃出土数の話は,九州説にとって効果的ですが、そのため、纏向説論者からは、黙殺されます。それでも考古学無視の勝手な論議と批判され、絶句するのです。
 銅鐸については、史書に、しかるべく書かれていないのが命取りです。全国の銅鐸は、無償配布の証拠と纏向説論者から聞きますが、無茶なこじつけです。「配布」とは、それぞれ自国官人が持参したということですが、どんな口上を持って参上し、何を持って帰ったのか。不思議です。

 今回は、唐古・鍵遺跡に言及していますが、なぜ、奈良盆地外の外界に近い唐古・鍵が凋落して、山沿いの纏向が頂点か、二百年環濠を維持した唐古・鍵は、纏向隆盛をどう見たのか。是非、欠席裁判は止めにして、当事者の意見を伺いたいものです。

*共立綺譚~古代国家幻想
 そこで、渡邉氏が「共立」について得々と語りますが、「当人にその気がないのに、大勢で寄ってたかって無理矢理に」とは、落語の落とし話めいて、奇異です。氏は、全訳を実現された范曄「後漢書」に加えて、「三国志」を全巻通読しているはずですが、それにしては、「倭人伝」が、中国文化にどの程度影響されていたか、見識を持ち合わせていないのでしょうか。
 どさくさ紛れに、倭人伝に複数回登場する「壹與」が自動的に「トヨ」になるのも不思議です。ここでも、説明はありません。倭人伝に一度一度しか書かれていない所謂「邪馬臺国」に関しては、范曄「後漢書」を手がかりに遮二無二こじつけて改竄を正当化しています、倭人伝」に、繰り返し書かれている卑弥呼宗女の名前が、繰り返し誤記されたと判断できる根拠は見当たりません。

 それにしても、各陣営とも、なぜ三世紀に強大な中央政権を見るのでしょうか。中国周代は封建制でしたが、諸公が周王を頭領に立てただけで、絶対服従では無かったはずです。ある程度権力を握っていた西周時代も、諸国がひしめき合う「関東」を統御していたのは、東都雒陽であり、周王は、西方の関中「長安」に腰を据えていたのです。
 加えて、太古の中国には文書で締盟し、命令を徹底する体制が整っていたから、遠距離統制の「法と秩序」が蔓延っていましたが、文字の無い東夷では、相互に盟約もできず、また、何しろ、文書が通じていなかったので、纏向仕立ての法制に強制的に服従させられるわけでもなく、後は、各地に、説客を派遣して、舌先三寸で異国の支配者を丸め込んだことになるのです。
 それにしても、御説に従うならば、三世紀当時の各地諸公は、なぜ大々的に反抗しなかったのでしょうか。
 それはさておき、三世紀当時の文字の無い世界で、広域政権が成立したとしても、どんな手段で服属を長く維持できたでしょうか。どうして、自分たちの墳墓造成の労役を、広域に課することができたのでしょうか。さらには、各国に勝手な墓制を強制できたのでしょうか。これこそ、古代史最大の謎と言うべきです。

*雑感
 「細かい」批判はそこまでとして原典に戻ると、倭人伝に「邪馬台国」と書かれているという不可解な妄言』帯方郡から海の「径」〔みち〕をたどるとする安易な決め込み』が、一般人の理解の妨げ、躓き石となっています。初学者ならともかく、斯界の権威が、安直で子供じみた誤読や改竄を、権威の生命線として信奉しているのは残念です。

 また、『陳寿が実情不明と匙を投げた投馬国から「水行十日、陸行一月」の果てに邪馬台国がある』という、保証付きの「誤読」(私見です)を言い立てているのは、困ったものです。既にドブに嵌まっているのに、気づかないのは、困ったものです。このあたりの頑冥さは、学問の道とは思えないのです。
 世上、俗耳に馴染みやすい「素直に読む」とか「簡単に読み下す」という助言が健在ですが、少し考えれば誰でもわかるように、代中国人が古代中国人のために書いた史書を、現代人が「素直に」、つまり、適切な教育、訓練無しに読んで、無教養な世界観で、すらすらと正確に理解できるはずがないのです。
 まして、当時、「世界」最高の知性であった陳寿と弟子達が、長時間、精力を注いだ深意を、現代人が易々と探り出すのは無理そのものです。

                                未完

« 新・私の本棚 番外 NHK BSP「邪馬台国サミット2021」補 ⑵ 概論 5/5 | トップページ | 新・私の本棚 番外 NHK BSP「邪馬台国サミット2021」補 ⑵ 概論3/5 »

倭人伝随想」カテゴリの記事

新・私の本棚」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« 新・私の本棚 番外 NHK BSP「邪馬台国サミット2021」補 ⑵ 概論 5/5 | トップページ | 新・私の本棚 番外 NHK BSP「邪馬台国サミット2021」補 ⑵ 概論3/5 »

お気に入ったらブログランキングに投票してください


2025年1月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  

カテゴリー

  • YouTube賞賛と批判
    いつもお世話になっているYouTubeの馬鹿馬鹿しい、間違った著作権管理に関するものです。
  • ファンタジー
    思いつきの仮説です。いかなる効用を保証するものでもありません。
  • フィクション
    思いつきの創作です。論考ではありませんが、「ウソ」ではありません。
  • 今日の躓き石
    権威あるメディアの不適切な言葉遣いを,きつくたしなめるものです。独善の「リベンジ」断固撲滅運動展開中。
  • 倭人伝の散歩道 2017
    途中経過です
  • 倭人伝の散歩道稿
    「魏志倭人伝」に関する覚え書きです。
  • 倭人伝新考察
    第二グループです
  • 倭人伝道里行程について
    「魏志倭人伝」の郡から倭までの道里と行程について考えています
  • 倭人伝随想
    倭人伝に関する随想のまとめ書きです。
  • 動画撮影記
    動画撮影の裏話です。(希少)
  • 古賀達也の洛中洛外日記
    古田史学の会事務局長古賀達也氏のブログ記事に関する寸評です
  • 名付けの話
    ネーミングに関係する話です。(希少)
  • 囲碁の世界
    囲碁の世界に関わる話題です。(希少)
  • 季刊 邪馬台国
    四十年を越えて着実に刊行を続けている「日本列島」古代史専門の史学誌です。
  • 将棋雑談
    将棋の世界に関わる話題です。
  • 後漢書批判
    不朽の名著 范曄「後漢書」の批判という無謀な試みです。
  • 新・私の本棚
    私の本棚の新展開です。主として、商用出版された『書籍』書評ですが、サイト記事の批評も登場します。
  • 歴博談議
    国立歴史民俗博物館(通称:歴博)は歴史学・考古学・民俗学研究機関ですが、「魏志倭人伝」関連広報活動(テレビ番組)に限定しています。
  • 歴史人物談義
    主として古代史談義です。
  • 毎日新聞 歴史記事批判
    毎日新聞夕刊の歴史記事の不都合を批判したものです。「歴史の鍵穴」「今どきの歴史」の連載が大半
  • 百済祢軍墓誌談義
    百済祢軍墓誌に関する記事です
  • 私の本棚
    主として古代史に関する書籍・雑誌記事・テレビ番組の個人的な読後感想です。
  • 纒向学研究センター
    纒向学研究センターを「推し」ている産経新聞報道が大半です
  • 西域伝の新展開
    正史西域伝解釈での誤解を是正するものです。恐らく、世界初の丁寧な解釈です。
  • 資料倉庫
    主として、古代史関係資料の書庫です。
  • 邪馬台国・奇跡の解法
    サイト記事 『伊作 「邪馬台国・奇跡の解法」』を紹介するものです
  • 陳寿小論 2022
  • 隋書俀国伝談義
    隋代の遣使記事について考察します
無料ブログはココログ