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2022年3月 4日 (金)

新・私の本棚 第395回 邪馬台国の会 講演 安本 美典 「謎の4世紀第11代垂仁天皇時代のできごと」

 謎の4世紀第11代垂仁天皇時代のできごと(みかん物語・田道間守の話)
私の見立て ★★★★☆ 潤沢 2022/03/04

〇始めに
 当記事は、情報豊富で大変参考になるが、細瑾が見えたので、以下、私見を提示する。

⑴古墳古尺談義
 (5)永寧二年(302)の骨尺にもとづけば、晋の一尺は、二十四センチである。このものさしではかれぱ、崇神天皇陵古墳の全長240メートルは、ちょうど1000尺である。垂仁天皇陵古墳の全長は、950尺、景行天皇陵古墳の全長は1300尺である。晋のものさしを用いて、古墳の設計が行なわれているようにみえる。

 安本氏にしては、突っ込みが浅いと書いてしまった。「尺」は度量衡で、土木工事には場違いである。古代に多桁数字はなくて間尺に合わず、誤解を誘う時代錯誤である。
 古墳全長は、測量単位の歩(ぶ)、一歩六尺、1.5㍍程度が必須である。概算で、崇神陵、垂仁陵は六百歩程度、景行陵は九百歩程度となる。机上計算は精密でも、実務「縄張り」は、必然的に大まかである。

 と言うものの、多少大まかでも、魏晋「尺」基準の設計、施工を否定するものではない。先行論文を参照された方が良いように思う。
 例『「古韓尺」で作られた纏向大型建物群』 新井 宏 計量史研究 32-1 2010
   国立国会図書館デジタルコレクション ART0009530400.pdf

 表2 後漢尺、魏尺および古韓尺の纏向遺跡への適合度
 見る限り、垂仁/景行陵は25㌢㍍の「尺」、1.5㍍の「歩」で採寸されたと見える。古墳全長は土木工事分野で、万事大まかと見える。私見では、精密さを問うには、精測可能な墓室内の尺度領域を言うべきだろう。

⑵柑橘類談義
 『中国での柑橘類の「大産地」は、おもに、かつての、呉の国と、蜀の国との領域内になることがわかる。』と至当である。柑橘類は、水分に満ち、降水量が多く、気温の高い土地でないと育たない。まして、現代日本では、長年の品質改良で、多果汁、甘く、種が少ないもので参考になりにくい。
 現代日本でも、ミカンは南、林檎は北で好まれ、果物に地域性がある。

⑶「弱水」談義
 私見では、国内古代史論者に共通の古典書教養不足のようである。厖大な史料に通じた巨峰白鳥庫吉師も軽視したから、仕方ないが、漢字学泰斗白川勝師によれば、「弱」は下部に飾りのある弓で、祭壇に献げたのである。私見では、武器に無意味な「弱い弓」は「飾り弓」だからである。そして、西王母の前に、河流「弱水」が控えると見るものである。あくまで、素人の推定だから、ご一考いただくだけで幸いである。

 楊子雲は、司馬遷「史記」大宛伝や班固「漢書」西域伝の元史料を見たのか、西の最果て「西王母の住まいの裾野に弱水が在る」と述べているが、西遊記の孫悟空が達した「五本の柱」のように最果ての奇観(賛辞)である。

 「西海」が、大海「裏海」かどうか不明である。武帝使節団は安息東境木鹿城Mervに長期滞在したが、私見では、応対の安息長老、実は、二万の兵を擁する司令官が、百人級の軍使団に、不用意に内情を漏らしたとは思えない。

⑷范曄大秦夢譚~余談
 私見では、范曄「後漢書」西域伝は、安息、條支の西に「西王母」と「弱水」を仮想している。「流沙」は、西境に揺蕩う「砂の海」と見え、笵曄は大秦を雒陽官僚の落書きと明言して、筆が踊っている。いや、大秦がローマとは、古来の大「誤謬」であるが、安本氏が唱えたものではない。為念。
 私見では、笵曄は、先例の乏しい蛮夷伝では、自由な語り部になるのである。

                               以上

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