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2022年9月15日 (木)

新・私の本棚 山下 壽文 「末羅国伊都国間の道程を巡る諸説の検討」

 ~唐津平野の地形を中心として 季刊 邪馬台国 142号 投稿記事 令和四年八月一日
 私の見立て★★★★☆ 好記事     2022/09/15

◯総評
 本稿は、現代の精緻な地理識で「倭人伝」を批判する方針で丁寧に論じられたことに敬意を表するが、当方の「道里行程記事」解釈と意見が別れ、一言批判する。なお、本稿は「投稿記事」であり、編集部見解と輻輳するかも知れない。

 なお、後記するように、当稿は、氏の「道程」論本体部分に干渉するものではない。

*通説、異説の取り扱い
 「はじめに」で、「倭人伝」末羅条の「東南陸行五百里到伊都国」の道里に対して、「水行」と読む異説(風評か)が紹介されている。氏は、慎重に、「陸行」「通説」ながら「道程」に「陸行」と「水行」の両論があるとしている。

*合理的な解釈訴求
 末羅条記事は、「末羅に至る三度の渡海「水行」から、末羅で陸行に復元した」と明記しているにも拘わらず、「陸行」は改竄であるとの稚拙な思いつきであり、一考に値しないと見える。慎重な推敲を経た記事を「水行」と読む「異説」は、「説」に足りない「憶測」であり、はなから棄却である。

 「倭人伝」は、中国史書の道里記事で空前の「水行」を「大海中の洲島を渡海し伝い行く」例外的用語と定義したのであり、末羅が「伊都と隔絶した海島」と書かれていない上に、「さらに海を渡ると書いていない」以上、ここに「水行」が出る幕は金輪際無いのである。ことは、一字書換で済まないのである。「水」「陸」は、随分字形が違い、それは略字でも容易に識別されたはずであるから、素人でも誤写しないのである。

 氏は、現代日本人が「憶測」で倭人伝記事を覆すことの愚を歎いておられるので、この点以外でも、堅実な考察を進めていただけるものと思う。なお、「異説」を「さかな」にしたと見える道程地図論は、当論の圏外である。

*即決の勧め~同感と不同意
 無効な見解を即決せず審議を重ねるのは、氏の見識に勿体ないと思う。
 「おわりに」で逡巡の背景をみると、氏は、倭人伝道里を直線的と決め込んだために、いずれも不合理と頓挫、苦吟しているようである。
 率爾ながら、「伊都から女王まで水行十日陸行一月」との「不合理な通説」に固執せず、柔軟な視野で読みなおすようお勧めする。何か得るものがあるはずである。

 「倭人伝」論で、「通説」は「浅慮の旧弊」の同義語、骨董品、レジェンドなので、ちゃんと「壊れ物」扱いして頂きたいものである。

*用語の時代錯誤~定番の苦言
 因みに、氏は、「道程」と暢気に書いているが、砂浜は「道」や「禽鹿径」ではない。タイトルで、きっちり底が抜けている。因みに、「道程」は、「中国哲學書電子化計劃」のテキスト検索では、唐代「白居易」漢詩だけで、魏晋代には存在しなかったと見える。これでは、タイトル審査で落第である。

 魏志「倭人伝」は、三世紀中国人著作物であり、真意を解読するには、まずは、現代日本人の「辞書」を脇にどけて挑む必要がある。氏の一助になれば幸いである。

*「魏船」来航幻想~無視された無理難題
 氏は、魏使が、自前の船舶で末羅に来航したと決め込んでいるが、検証済みだろうか。
 山東半島から帯方郡の海津(渡し場)までは軽微な便船でも、遙か末羅まで、海図も寄港地案内も、何も頼るものもない、絶海、未踏の行程をどう解決したか、慎重に検証して欲しいものである。何しろ、「倭人伝」には、「狗邪韓国で海岸に出て、初めて海を渡った」としか書いていないのである。

                                以上

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