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2022年9月28日 (水)

新・私の本棚 サイト記事批判 探訪する古代史~『魏志倭人伝』を探訪する(2)2/2

 VERY BOOKS 探訪する古代史 「よっしー」      2022/06/29
 『魏志倭人伝』を探訪する(2)

*大月氏の正体
 言い置くと、「大月氏」は、匈奴裸足の凶賊が西域の果てに逃亡して築いた盗賊国家であり、後漢西域都督に、屡々反乱した札付きの悪玉であったが、討伐には、多大な兵力と国費を要するので、飴玉をしゃぶらせていた。大月氏は数代で貴霜(クシャン)に吸収され、往時の印綬を担ぎ出したと見える。
 そのような不穏な来歴は、洛陽の所管官庁、鴻臚に残されていて、史官は、正体を見失うことはなかったのである。枯れ木の賑わいである。

*洛陽道里批判
 洛陽から大月氏までの道里は計算でなく「見立て」である。漢代、西域の果て安息諸国は、京師長安から万二千里と格付けされ、代が変わっても東京雒陽道里に関係無く「万二千里の国」と格付けが維持された。測量し直したわけではない。

 別に、あれこれ忖度して捏造したのではなく、景初の倭人招請に先立って、そのように身上書が奏上され皇帝の承認を得て公文書に記載されたのである。

*司馬氏観の錯誤
また、邪馬台国が魏に朝貢できたのは、司馬懿が公孫氏を滅ぼしたからであり、司馬懿の功績である。司馬氏が治める晋の士官である陳寿は、その邪馬台国のことを理念的に好意的に記すことで、司馬氏に忖度しているのである。

 倭人来訪は、明帝が帯方郡を直轄して来貢を命じたためであり、司馬懿の遼東討滅とは関係無い。
 司馬懿は、遼東からの帰還時、西方軍務を予定されていて、東夷管理は、念頭に無かったのである。全て、勝手な憶測である。

*史官倫理の誤解
 その後に続く陳寿観は、現代人の尊大な「小人史観」に彩られ、「けったい」である。評者たる「第一人者」の自画像が掲示されている。
 倭人を「理念的に好意的に記すことで、司馬氏に忖度」と決め付けるが、陳寿は、動乱の世に史官倫理を貫いていて、保身汲々の「小人」ではない。
 以上、史官倫理を唾棄する「第一人者」の「小人史観」に追従しているるが、倭人伝踏破という壮大な行程には、丁寧な基礎固めが必要ではないか。
 古人(莊子)曰く「小人則以身殉利,士則以身殉名,大夫則以身殉家,聖人則以身殉天下。」
 陳寿は、保身、走利の「小人」ではない。

*史観の混濁
 因みに、「司馬氏が治める晋の士官(ママ)」と言うのは、時代錯誤の誤解であり、陳寿が服属したのは、(司馬氏が君臨する)「天下」であり、所詮、曹氏の天下を引き継いだにすぎない。司馬一族の私物ではない。このあたり、ちゃんと理解すべきである。
 総じて、氏が依拠しているのは、後世の無学、無謀な個人の風評所感であり、少し調べれば裏付けのないドブドロと露呈するのは示したとおりである。

*まとめ
 これまでの先人たる諸兄姉の偉業を拝見すると、初動段階で、誤解を多用したため、忽ち迷走して、是正できないことが多い。
 本件は、まだ、出発点なので、早めに苦言を呈するのである。
 念押しであるが、本論は、氏の視点である「北九州説」に異を唱えているものではない。陳寿が、倭人を高める趣旨で書いたことに反対して稲野でもない。不出来な先行資料(主として、第一人者著作)に無批判に追従して、氏の視点を歪めている惨状を歎いているのである。

                                以上

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