私の本棚 33 笛木 亮三 「卑彌呼は殺されたか!」季刊「邪馬台国」125号 1/2 再掲
~卑弥呼以死考~ 2015年4月 梓書院
私の見立て★★★★★ 力作にして必読 2016/03/06 分割再掲 2020/06/18 補筆 2022/10/09
◯総評
当記事は、魏志倭人傳に於ける「卑彌呼以死」の解釈に関する論考です。
先行する諸論考を「軒並み」採り上げて論評している本体議論に関する意見は置くとして、笛木氏が諸説について考察を加えた後、ぽろりと感慨を漏らされている点に大いに不満を感じるのです。
*世間知らずの了見違い
第8章岡本説の検証と私見 115ページ上段です。
『今、「三国志」にある「以死」のすべてが簡単にパソコンで検索できるらしいのです』とよそごとのように述べていますが、ちょっと意外でした。この場で論説を発表するほどの識者が、ご自身で用例検索していないし、しようともしなかったと見えるからです。続いて、「コンピューターは大したものです」と感心しますが大きな了見違いです。
*えらいのは誰か
コンピューター(PC)がえらいのではなく、PCなどの「端末」を介して、ネットから世界中のどこかに貯蔵されているデータを確認できるのがえらいのです。更に言うなら、そういう仕掛けを作った人、従来秘蔵されていたデータを世界のどこかに貯蔵した人がえらいのです。いや、関西弁で言う「えらい」は、仕事が多いという意味ですから、二重に皮肉です。
平たくいうと、氏が称揚されているのは、「ネット」、そして、その向こうにいる大勢の「えらい」人たちであって、PCが「えらい」のではないのです。大型コンピューターの所蔵データを端末機から閲覧した時代は去り、自宅のPCで、三国志を全文検索して、用例を全文検索できるのです。
*PCすら不要の世界
これには、特に有償販売されているアプリケーションを購入する必要はなく、自宅のPCに導入されているWindowsに作り付けのインターネットエクスプローラーとその後継者や無償で利用できるFirefox, Google Chromeなどの「ブラウザー」を使用して、そうしたデータの貯蔵されているサイトにアクセスし、サイト作り付けの仕掛けを利用して検索を依頼するだけで、検索例を全部列挙させられる時代になりました。
ご自宅のPCは、別にえらくないのです。使用する「機械」がMacであっても、Androidスマホであっても、大差ないのです。
*頼れる友人が肝心
大事なのは、PCを買ってくるのではなく、だれか初心者に対して丁寧に教えてくれる人を持つことです。「困ったときに手を貸してくれる友人が本当の友人である」(A friend in need is a friend indeed)と言うことではないでしょうか。こうしてテキスト全文検索が広く普及したのは、「三国志」で言えば、刊本を自由に利用できるテキストデータとして公開している団体、ないしは、個人がいるからです。
「三国志」を出版している出版社は、当然、使用した全テキストデータを保有していますが、かなりの人・物・金を投じて構築したデータベースで、出版社の知的財産(著作物)であり、簡単に無償公開はしてもらえないものです。
*公開データの効用
と言うことで、WikiSourceや「中国哲学書電子化計劃」などの公開データですが、すべてボランティアが入力したものであり、時として誤読はありますが、膨大なデータ量を思えば仕方ないところです。
*見知らぬ友人
面識も交信もなくてもこうした努力を積み重ねた人たちは、本当の友人です。
未完
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