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2022年10月12日 (水)

新・私の本棚 平本 嚴 「邪馬台国はどこにあったのか」再掲 1/2

~倭王卑弥呼の朝貢から読み解く 22世紀アート  アマゾンKINDLE電子ブック 2019年8月刊
私の見立て ★★★★★ 好著必読  2020/05/12 補充 2022/10/12

〇始めに
 見事なのは、「はじめに」として、本著の基本理念が適確に表明されていることです。これは、「商品」として不可欠ですが、近年古代史で目立つジャンク本では、一流出版社の単行本でも欠落していることがあり、むしろ貴重な特質です。

 本書は、「景初二年の朝貢から見た邪馬台国の所在地論」です。 研究に関し重要なポイントを「発想」という視点で述べます。

 当ブログで機会ある毎に説いていた準備、そして実行という着実な考察が書かれていて、心強いものでした。また、極力、倭人伝記事の妥当な解釈による考察であり、それ自体大変説得力のあるものでした。

 それにしても、22世紀アート社は、編集部に優れた人材を擁しているようで、これなら、書店店頭で立ち読みできないご時世でも、安心して大枚を投じられるかと思うものです。掃き溜めに鶴と言いたいところです。

*丁寧な準備
 前例のない大事業に乗り出すには、内外情勢確認、実施手順策定、そして、実施に際して、綿密な工程管理、進度管理が必要です.参上する相手との綿密な交信も必須です。そういった段取り事情を丁寧に説き起こす「倭人伝」考は、ここ以外では見かけることがありません。世に、ジャンクフードの画餅が氾濫していて、このように、歯ごたえのある正餐に出会うと感嘆するのです。
 後ほど、無作法な批判をしますが、随分前から、言葉遣いの節度をなくしているので、お許しいただきたいのです。

*両論併記の取り組み
 本書で感心するのは、畿内説と筑紫説の両論を併記して、それぞれに於いて、適切な考察を試みていることです。
 「当分野」は、まずどちらの説で書かれているかで、書棚行きの積ん読かゴミ箱投棄かが決まり、所在地比定の論考でも、恣意だとか、偏向だとか、感情論で切り分けられ、投げ出されていしまうため、折角の著者の考察が、読者の眼に届かない様子を見ると、ここは大人の行き方と見ます。何しろ、諸説の上っ面をつまみ読みして、理解できないままに、「全部間違いに決まっている」と絶叫する論者が目立つのです。
 ここでは、畿内王都と仮定して、半島事態を知るのに要する時間、畿内での準備期間、半島までの行程日数を合わせ考えると、景初二年六月には帯方郡に着かないと見え、三年誤記説に逃げず、どう解決するのか興味のあるところです。
 当方の考えでは、王の意志決定に従い、派遣使節人員の大半と荷物、そして、乗船は、筑紫拠点に手配を指示し、畿内からは、大夫一人、ほとんど手ぶらで出たと見ます。大夫が乗馬できれば移動時間は大幅に短縮できます。
 私見では、急遽派遣という状勢であるから、人員も荷物も、随分小振りで書面指示したはずですが、氏の意見は別で、王都に集中しているようです。
 郡に申告しておけば、御用達で、街道関所は、過所(通行証)いらず、関税免除、宿は官費です。数十人の大使節団はそう行かないでしょうが、「倭人伝」の貧相な使節なら、むしろ、同情されてもてなしを受けられたでしょう。

*若干の異議
 そのように思うのは、以下書くように、氏が想定した使節団が場違いにでかいからです。氏がそのように感じたのは、野性号案件が、漕ぎ手固定の手漕ぎ船で、積み荷の多寡、漕ぎ手の消耗はともかく、遮二無二、一貫航行できる、為せば成ると証明されたように報告を言い繕ったからでしょう。スポンサー、支援者の手前、「失敗した」とは、絶対に言えなかったためでしょう。
 当ブログでは、長距離の漕ぎ船移動は、維持不能な公用交通手段とみていて、意見が分かれます。
 御手並拝見という所です。

                                未完

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