私の本棚 33 笛木 亮三 「卑彌呼は殺されたか!」季刊「邪馬台国」125号 2/2 再掲
~卑弥呼以死考~ 2015年4月 梓書院
私の見立て★★★★★ 力作にして必読 2016/03/06 分割再掲 2020/06/18 補筆 2022/10/09
*ユニコードの功績
合わせて言うと、Microsoft社の英断(当初、各国文化の個性を破壊すると非難されたが)で、全世界の文字データが、共通のユニコード体系で参照できることになり、楽々中国文献の検索ができるので、Microsoft社の功績は絶大です。ここに謝辞を表しておきます。
公開データを全文検索して用例列挙するのは、素人も追試でき、フェアです。
*先人功績の称揚
「邪馬臺国」「邪馬壹国」論争時に、三國志全文を手作業検索した話が、匿名の風評譚となっていて怪訝に感じるのです。手作業検索を評価するなら実名顕彰すべきです。と言う事で、曲がりくねった言い回しは残念です。
また、とうの昔に博物館入りしたはずの「レジェンド」記事が多く、笛木氏の責任ではないのですが、延々と引用紹介と解読を強いられる「論争」のあり方が、折角の労作に苦言を呈する原因となっていて、もったいない限りです。
◯書評本論~私見御免
素人考えながら、「悉皆」と表現される広範な用例検索の必要性は理解しますが、文献解釈の手順として「悉皆」は、本末転倒と思います。中国といえども、個々の文字、言葉の意味は、地域差もあり、時代差もあり、文献史料ごとに変動しているのであり、特に、古典典礼を踏まえない、日常用語の分野では、用例の適否判定が不可欠と見るものです。
陳寿が採用した記事の筆者は、「以死」と書くとき、汗牛充棟の古典用例でなく、普通の教養で書いたはずです。当該文書の文脈から解釈することが、大変困難となったとき、初めて、書庫の扉を開き、台車で古典を引き出して身辺に置き、ひたすら参照すればよい、と言うか、そのような手順を常道とすべきなのです。これは、ほぼ笛木氏の趣旨でもありますが、敢えて書き立てます。
倭人伝の書かれた真意を察するに、「卑弥呼は、不徳の君主でなく敗将でもなく、天寿を全うした」と見るのです。没後に大いに冢(封土)を造営したころからも、そう感じるのです。
□補足 (2020/06/18)
初回掲示の際、氏の提示された参照史料を書き漏らした不行き届きを、ここに是正します。
⑴阿倍秀雄「卑弥呼と倭王」(1971講談社)
⑵生田滋 「東南アジア史的日本古代史」(1975大和書房)
⑶松本清張「清張通史 1 邪馬台国」(1976講談社)
⑷樋口清之「女王卑弥呼99の謎」(1977産報ジャーナル・新書)
⑸栗原朋信「魏志倭人伝にみえる邪馬台国をめぐる国際間の一面」(1964史学会)
⑹上田正昭「倭国の世界」(1976講談社現代新書)
⑦大林太良「邪馬台国」(1977中公新書)
⑧三木太郎「魏志倭人伝の世界」(1979吉川弘文館)
⑨福本正夫「巫女王・卑弥呼をめぐる諸問題」(1981大和書房)
⑽奥野正男「「告諭」・「以死」・「百余歩」」(1981梓書院)
⑾白崎昭一郎「卑弥呼は殺されたか」(1981梓書院)
⑿三木太郎「倭人伝の用語の研究」(1984多賀出版)
⒀張明澄 「一中国人の見た邪馬台国論争」(1983梓書院)
⒁謝銘仁 「邪馬台国 中国人はこう読む」(1981立風書房)
⒂徐堯輝 「女王卑彌呼と躬臣の人びと」(1987そしえて)
⒃沈仁安 「倭国と東アジア」(1990六興出版)
⒄水野祐 「評釈 魏志倭人伝」(1987雄山閣出版)
⒅岡本健一「発掘の迷路を行く 下」(1991毎日新聞社)
⒆井沢元彦「逆説の日本史 古代黎明編」(1993小学館)
⒇生野真好「「倭人伝」を読む」(1999海鳥社)
㉑藤田友治「三角縁神獣鏡」(1999ミネルヴァ書房)
㉒佐伯有清「魏志倭人伝を読む (下)」(2000吉川弘文館)
㉓井上筑前「邪馬台国大研究」 (2000梓書院)
㉔武光誠 「真説 日本古代史」(2013PHP研究所)
㉕岡本健一「蓬莱山と扶桑樹」 (2008思文閣出版)
以上
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