新・私の本棚 ブログ記事批判 刮目天一「邪馬台国問題で短里説はこじつけだ」 改改 2/5
2019/12/06 補充 2021/02/13 2022/12/04
〇分解写真的分析
指導的助言は、本来嫌われるものであり、特に、細かく区切った分析的な批評は、「面子」を潰されるとして、大変嫌がられるのは承知しているのですが、印象批判や感情論でなく、構文の難点を明らかにしないと批判した意味が無いので、敢えて以下のように「丁寧に」述べているのです。当ブログの書評は、概してこうしたすすめ方であり、「建設的」な「苦言」と考えているものです。
「邪馬台国問題」
氏の周辺では自明なのでしょうが、一般的な解釈として、「邪馬台国問題」には、二つ、ないしはそれ以上の「問題」、つまり、「検討課題」が含まれています。提起されているのは、「所在地問題」のようですが、何を課題としているか、読者との間に合意がなければ、以下の主張は空転するだけです。
つまり、氏の周辺で、氏の世界観、歴史観を共有している面々以外には氏の主張は展開できないという「問題」、問題点にぶつかるのです。
因みに、伝統的な論戦では、「問題」(problem,question)は、研究者に対して与えられた課題であり、正解を得ることにより、一段と進歩するものなのです。
「収拾つかなくなった」
「収拾がつかない」とは、どのような現象か、一般読者に理解できません。氏の周辺だけで通じる言い回しは、まず、丁寧に説きほぐす必要があります。氏の困惑の内容が理解できないと、解決策も浮かびません。
「最大の理由の一つ」
氏の理解では、収拾つかないという重大事態の発生した原因は、他にも幾つか上がっているようですが、それらはどんなものなのでしょうか。
この言い方は、英語系の由来のようですが、大抵は、追求を避ける「逃げ口上」のようです。
「この短里説なのだ」
「氏の理解する短里説」が悪者になっていますが、自分で仮想敵を作り上げて攻撃しているのか、何なのか、この部分にも、背景説明が必要です。
当ブログ筆者の意見では、「倭人伝」道里記事は、書かれている道里が、一里が周代以来不変の「普通里」(450㍍程度)の一/六程度の「短い里」(75㍍程度)と見た方が筋が通るという史料考証から来ているものです。
1.よほど、個性的な解釈をしない限り、ここまでは、「倭人伝」道里記事の解釈としては、筋が通っていると見えるはずです。
筋が通っているというのは、当時の口うるさい読者が、了解したと言うことです。
2.「短里説」は、大抵の場合、当時現地で公的な制度として「短い里」が施行されていたという「作業仮説」です。
「作業仮説」は、まずは、根拠の無い「思いつき」であり、提唱者は、裏付けを求めて奮闘しなければなりません。
3.魏晋朝と時代を限った「短里説」も、根拠の無い「思いつき」ではないかと見る向きが多いのです。
「里」を大きく変更するのは、経済活動が破壊され、帝国が崩壊するので、全く記録に残らないということは、あり得ないのです。
氏が、「短里説」を撲滅しようというのであれば、「この短里説」などと、「一刀両断」の大なたを振るうのでなく、1.2.3.のどの段階を言うのか、それとも、1すら認めない0なのか、まずは、明確にする必要があると言うことです。このように、キッチリ区切って、区切りごとに是非を論じていけば、議論は、本来、次第に収束するはずです。
以上、しつこいようですが、氏が、本旨に示した見解を世に問うのであれば、不愉快であろうが、面倒であろうが、辛抱して踏まねばならない手順なのです。氏が、敵とひたすら戦うのでなく、広く賛同者を募りたいのなら、と言うことです。
因みに、当方が、各位の意見を参照するときは、記事本体に至る前に、本旨の展開の際に、論理的な資料考証がされているかどうかを見た上で、記事を眺めるものであり、氏のブログの場合は、以上の短評でおわかりのように、参考にならないとして、質問がなければ回避するものです。当ブログでしばしば顔を出す「門前払い」というものです。
以上、何かの参考になれば幸いです。
〇記事短評 ジャンク資料の山
*巻頭動画紹介(氏の批判対象であり、当方は、当動画の内容について氏を批判していません)
まず、ずっしり重い動画ですが、検証、批判可能な文字資料として提示されたのではないので史料批判に値しないジャンクであり、読者迷惑です。
当方も、影響力の大きいテレビ番組に批判を加えることがありますが、当史料は制作者自身論証努力を放棄しているから、論評すべきではありません。
文字資料は、分析を加えることによって、正確に内容を把握できますが、画像資料は、制作者の主観で加工され、演出されているので、内容の理論的な把握が不可能です。まして、「イメージ」と称する「イリュージョン」は、もっての外です。各地で講演を重ねて収入を得るのが目的であれば、派手な演出で人気を得るのが良いでしょうが、氏は、学問の道を進んで、広く理解者を広めようととしているはずですから、「悪い子」の真似はしないのが良いのです。
*航路図の道草
これは、「イリュージョン」の典型です。「倭人伝」は、「千里渡海」と見立てているので、現代地図上に根拠不明の古代航路を引いた、児戯とも見える絵かきは無意味です。論評すべきではありません。
*「海島算経」の道草
「答と解法」の提示者が「峰丈度」を里で表示していますが、山の高さは、「丈」で表示するものであって、けっして、「道里」の単位である「里」で表示されることはなく、これは、全くの門外漢の素人解釈です。論評すべきではありません。
いずれにしろ、取り扱いやすいように数値を揃えた「問題」に対する幾何学的な解法を示したものであり、国家制度を示したものではありませんから、氏の主張の裏付けとして役に立たず無意味なのです。「取り扱いやすいように数値を揃えた」とは、計算過程で分数や小数ができるだけ出てこないように「下駄」を履かせるものであり、現実の数値とは限らないのです。
時に、本項資料は、引用図、文章が錯綜としていて、誰が何と言ったのか確認困難です。「三角関数表」など、半世紀以前の遺物表現で、計算尺、関数電卓から、PCと推移して、今や、特別な装備は何も要らないのです。いや、つまらない余談でした。
*道草の回顧
氏は、このような愚論に対応したために肝心の本旨を見にくくしています。ゴミ資料は、ゴミ箱に放り込み、本体部では一切参照しないのが賢明です。読む方にとって新説であり、ずいぶん楽になります。
と言うことで、続く項目は無視しています。
漢文古典である「倭人伝」は、「倭人伝」自体の文脈、陳寿の見識/深意で理解するのが大原則であり、外部文献を導入するなら、まずは、正史、ないしは、正史同等の権威ある史料に限定して史料批判し、ゴミは断固受付拒否すべきです。当ブログで大事なのは、「倭人伝」道里記事見極めなので、圏外ゴミで道草する必要はありません。
くたびれたので、以下の論考は追跡していませんが、どう見ても、筋の通った「新説」を提示しているように見えませんし、そのような展開を予告するタイトルでもないのです。ただ単に、氏の思う妄説を否定する記事とわかれば、こんなに字数は要らないのです。
ふと周囲を見ても、冷やかし客は姿を消して、閑古鳥が啼いています。いや、閑古鳥は当ブログにも住み着いていて、人ごとではないのですがね。(苦笑)
未完
« 新・私の本棚 ブログ記事批判 刮目天一「邪馬台国問題で短里説はこじつけだ」 改改 3/5 | トップページ | 新・私の本棚 ブログ記事批判 刮目天一「邪馬台国問題で短里説はこじつけだ」 改改 1/5 »
「倭人伝随想」カテゴリの記事
- 新・私の本棚 番外 ブログ記事 sinfu「光正解釈説 総纏集」10/10(2023.02.04)
- 新・私の本棚 番外 ブログ記事 sinfu「光正解釈説 総纏集」 9/10(2023.02.04)
- 新・私の本棚 番外 ブログ記事 sinfu「光正解釈説 総纏集」 8/10(2023.02.04)
- 新・私の本棚 番外 ブログ記事 sinfu「光正解釈説 総纏集」 7/10(2023.02.04)
- 新・私の本棚 番外 ブログ記事 sinfu「光正解釈説 総纏集」 6/10(2023.02.04)
「新・私の本棚」カテゴリの記事
- 新・私の本棚 岡田 英弘 著作集3「日本とは何か」 新考(2023.02.05)
- 新・私の本棚 ブログ記事 makoto kodama「古田武彦氏の道程論は本当に成立するのか?」(2023.02.05)
- 新・私の本棚 番外 ブログ記事 sinfu「光正解釈説 総纏集」10/10(2023.02.04)
- 新・私の本棚 番外 ブログ記事 sinfu「光正解釈説 総纏集」 9/10(2023.02.04)
- 新・私の本棚 番外 ブログ記事 sinfu「光正解釈説 総纏集」 8/10(2023.02.04)
「倭人伝道里行程について」カテゴリの記事
- 新・私の本棚 岡田 英弘 著作集3「日本とは何か」 新考(2023.02.05)
- 新・私の本棚 ブログ記事 makoto kodama「古田武彦氏の道程論は本当に成立するのか?」(2023.02.05)
- 04. 始度一海 - 読み過ごされた初めての海越え 追記補追 5/5(2023.01.28)
- 04. 始度一海 - 読み過ごされた初めての海越え 追記補追 4/5(2023.01.28)
« 新・私の本棚 ブログ記事批判 刮目天一「邪馬台国問題で短里説はこじつけだ」 改改 3/5 | トップページ | 新・私の本棚 ブログ記事批判 刮目天一「邪馬台国問題で短里説はこじつけだ」 改改 1/5 »
コメント