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2022年12月22日 (木)

私の本棚 8 都出 比呂志 「古代国家はいつ成立したか」 改補 2/5

 岩波新書 2011年8月   2014/05/23 分割再掲 2020/06/17 2022/12/22
 私の見立て★☆☆☆☆ 文献史学部分 氏にとって鬼門か それ以外は好著 ★★★★☆

*記事批判 承前
 42ページ 「卑弥呼が亡くなり葬られた前方後円墳」と突然言い放っていますが、魏志「倭人伝」には、卑弥呼がそのような形式の墳墓に葬られたという記事はないのです。何か根拠はあるのでしょうか。

 前後しますが、
 66ページ 「卑弥呼の墓が前方後円墳になるのは当然の成り行き」と前提なしに無理な仮説が打ち出されている関連記事であり、このようなけったいな、つまり、文献史料に根拠の無い意見を、どんな顔で言うものなのかと、著者のお顔を拝見したくなりますが、もちろん、テレビ電話など頂きたいのではありません。

 62ページ 「大和は三世紀前半から政治の中心であったのは確か」と書かれていますが、このような根拠不明、趣旨不明確な(問題)発言をぽんと投げ出すのは、作者の癖(ダイハード)と見えます。関西の子供風に「どこがどう確かやねん。何もめーへんで」と言うところです。
「政治」は、後世の用語ですから、魏志「倭人伝」にある言葉で、一般読者にも納得できる言葉で語って頂きたいものです。

 案ずるに「大和」は(大和の、あるいは畿内の)政治の中心だった、と言う意味でしょうか。「畿内」の定義を辿ると、政権の中心を取り巻く地域を畿内と呼ぶのであり、「畿内」の定義が堂々巡りしている感があります。ともあれ、「世界」の中心と言っても、狭い「世界」であれば、中心も辺境もないと見えるのです。 好意的に「大和とそれに服従する地方権力の政治の中心」と読み解くとしたら自明の言い分でしかないので、この発言が何を物語っているのか、何を言いたいのか、依然として、皆目わかりません。
 論旨が不明で主張の声音の甲高さが耳に付くのは作者の特徴なのでしょう。

*やまと幻想の由来
 いや、三世紀の「大和」がどの程度の広がりを持ち、どこに存在していたかについて語らないのは、読者が勝手に、現在の地図上に広がる奈良県を想起することを期待しているのでしょうか。
 ちなみに、奈良県は南半分が山地であり、とても、三世紀時点、何かの政治の中心とは言えないのです。 率直なところ、当時の「大和」政権は、実態としては、奈良盆地南端の大和三山付近の交通不便な山間僻地(まほろば)で、山並みに外敵から守られて、ひっそりと隠遁していたように思えるのです。現代で言う「中和」界隈です。
 その姿を「臥竜」と見る人もいるようですが、多分に結果論の産物でしょう。雲を呼んで天に昇るまでは、蛇/朽ち縄の類いに過ぎないのです。目覚めるまでに数世紀にわたる長い「午睡」とも見えます。

 これもまた、現代の世相を、無造作に、誇大に、古代に投影して読者に勝手な心証を形成させる時間錯誤戦略の一例と言えます。

*里程素人への苦言
 以下、冒頭の古代ロマンから、突如、魏志「倭人傳」の里程表記の解釈談義にそれてしまいますが、言いかけた大理論を放棄して、里程を論ずる意義が不明です。まして、「倭人伝」の里程記事解釈は、文献解釈の嵐渦巻く渦中にあって、世上に表明されて居るだけでも、百人百様で、所説混沌の闇鍋状態であり、考古学者の素人思案の介入すべき分野ではないと見ます。

 ともあれ、同時代唯一の文字資料「倭人伝」の順当な解釈によれば、「大和」は出る幕が無いというのが、学問としての大勢なのですが、盆地という外界と隔離された世界で、三世紀前半と明記された時点で、「大和」が世界の中心だったという同時代史料は、本当にあるのでしょうか。
                                未完

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