04. 始度一海 - 読み過ごされた初めての海越え 追記補追 3/5
倭人伝再訪 4 2014-04-24 追記:2020/03/25 2022/10/17 2023/01/28
*對海國の恵み
自明事項ついでに続けると、「人は食べなければ生存できない」ので、穀類不足は、海や山の幸で補い、さらには、特産物で補い、代わりに穀類を手に入れて飢餓を免れたのが、南北交易の実態であったと思われます。
對海國が、長く健全に維持されたと言うことから、大半は、對海國の市で、あるいは、海港で、着々と行われたはずです。別に、船に乗って出かけなくても客はやってくるのです。
本当に、飢餓状態なら、島民は、半島か一大國に逃げ出すはずですが、そのようなことの明記も示唆もない以上、島内で必要な食料は得られていたのでしょう。
余談ですが、地産特産として有力な海産物の干物づくりには、一旦茹でてから天日干しする必要がありますが、その燃料は、最寄りの山林から得ていたのでしょうし、必要な食塩も、海水から採れたはずです。ただし、対馬で貝塚が出土したかどうか定かではないので干物交易は、仮説に過ぎないのですが。
*道里/方位談義
ちなみに、さすがの魏使も、海上航路を精度高く測量することはできないし、また、航海の距離を報告しても、道里としての実際的な意味が乏しいので、方向と距離は、大雑把なものにとどまっているのです。目前の海島に到る渡船には、方位の精密さは不要なのです。
*時代相応の「国境」談義
更に言うと、とかく誤
解されている「国境」は、ちゃんと時代感覚を補正しないと、検討ちがいのものになります。倭人伝では、對海國は「国」であり、「對海国の国境」は、北は、狗邪韓国の港の對海國「商館」、南は、一大国の港の對海國「商館」となります。また、「倭人」の北の国境は、狗邪韓国の港の對海國「商館」、この場合は「倭館」となります。
これは、経済的な視点、つまり、貿易の実務からくるものであり、そのようにしないと、倭の所有する貨物を、韓に引き渡すまでの所有権が保護できないので、言わば、「治外法権」としただけであり、仮に、区域内に武力を保持したとしても、別に、倭が狗邪韓國全体を領有していたというものではありません。
何しろ、交易相手は「お客様」であり、そのまた向こうの「お客様」とうまく商売しているから、多大な利益が得られるのであり、言わば、「金の卵を産むニワトリ」ですから、決して、「お客様」を侵略して、奪い取るものではないのです。あるいは、蜂蜜を求めて、ミツバチの巣を壊して根こそぎするのと同じで、そのあとは、枯渇なのです。
追記:2020/03/25
現時点で、訂正を要するというほどではないのですが、思いが至らなかった点を補充します。
まず、「一海」を渡るとしていて、以下でも、「また」と言う言い方をしていますが、これは、山国蜀の出身である史官陳寿が、帯方郡から報告された行程を、海を知らない中原、洛陽の読者に理解しやすいように、半島南岸の狗邪韓国から対馬への移動を、中原にもある大河の渡河、渡し舟になぞらえたもののように見えます。いや、史官として、原史料に手を加えることは厳に戒めていたものの、補足無しで誤解される部分に、加筆したと見えます。
未
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