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2023年1月13日 (金)

私の本棚 9 追補 鳥越 憲三郎 「中国正史 倭人・倭国伝全釈」2/2

 中央公論新社  2004年6月
私の見立て ★★★☆☆ 労作 必読 批判部分 ★☆☆☆☆ 2023/01/13

・奴婢 男のしもべと女のしもべ。秦漢以降、貧民の子を売買する奴隷市場が解放された。
コメント
*誤解。「奴」も「婢」も、単に雇用されている者の意味である。
 「倭人伝」に「奴国」があるが、別に、『奴隷』の国ではない。
 「秦漢以降…」が、どの時代か不明である。

  • 中国文明では、非自由民の『奴隷』身分は、後世に至るまで、身分制度の下層に長く存在した。ただし、級外なので、明示されていないように見える。
  • 『奴隷』市場の『解放』は、時の皇帝が「公認」したとの意かと見える。意味不明瞭である。後漢光武帝の布令などに基づく意見であろうか。文書の深意が特定できない断片的史料から、数世紀に亘る古代世相の全てを「するり」と達観するのは無謀である。
  • 中国には、太古以来、『奴隷』市場が存在したが、それは、市場(いちば)の常に従い、『奴隷』の処遇/相場を公知とし、平準化するために存在したのである。
  • 洋の東西を問わず、資産を持たない『貧民』を放置せず『奴隷』として雇い入れて寝食と「お仕着せ」を与えたのは、『貧民』救済であって強制労働ではない。『貧民』は、耕作地を割り当てられていない者という事だろうが、要するに、『下戸』の下で、『戸』がなくなった状態であるから、『奴隷』で上等なのである。
  • 西の「ローマ」では、『貧民』、つまり、無産階級で市民資格を有さない者の子弟の『奴隷』に市民子息と同列の教育の機会を与えて、護衛と学友をかねた守り役とし、無事成人の暁には登用したと見える。逆に、「ローマ」では、無産階級の者は兵役を免れていたのである。一方、中国では『貧民』は、軍務に逃れるのである。
  • 中国では、家庭内『奴隷』に対して、遵守すべき「任務」を明示して「契約」したと見えている。単なる強制労働ではないし「人身売買」でもない。「年季奉公」に近いかも知れない。
  • 「倭人伝」に「以婢千人自侍」とあるが、「國邑」の「戸数」が千戸代と見える城郭内に、強制労働身分と見える『奴隷』が、これほど多く存在していては、地域社会は、不平分子の反抗や勤労意欲の低下で破綻するか、停滞するか、いずれかで、誠に不合理である。
  • 因みに、中国史書で見かける「官奴」は、いわば級外公務員であり、自由に離脱できないが、老齢になっても「終身雇用」したとされている。
  • こうした事情は、中国古代史の常識である。
  • 鳥越氏は、『奴隷』をはじめ、もっともらしい現代語を古代史論に起用されるのを好まれるようだが、古代以来の中国史料で『奴隷』なる二字熟語は、まず見当たらない。
    ここまでの論義では、明快/手短で納得してもらえる反論ができなかったので、鳥越氏の言い立てる意味に合わせたが、率直なところ、古代史論議で用語が時代錯誤では、意思疎通できない「意味不明」状態になる可能性がある。そもそも、現代語で思考していて、古代史史料が適格に解釈できるとは思えない。不思議な、神がかりの読解力である。
  • もちろん、このような時代錯誤/思い違いは、国内史料を起点としている論者に相当多く、鳥越氏個人の「誤謬」ではないのだが、仕方ないので、ここで荒立てているのである。わかる人にしかわからないので、小声で呟いているのである。
  • 因みに、『奴隷』を振り回しての諸兄姉の主張は、大抵の場合、時代錯誤用語乱用の場合が多いので、趣旨を理解するためには、古代史用語への多重飜訳が必要になる。

・誅殺(ちゅうさつ) 罪をせめて殺す
コメント
*意味不明。説明不足だが、「罪」は、君主に背く大逆であり、「責める」のは、君主の行いである。

・宗女 同族の女。主に本家筋の女
コメント
*意味不明 まずは、「(君)主に本家」の意味が不明。卑弥呼は、王家の本家ではないとの主張か。「筋」の通らない戯文と見える。

・檄(げき) ふれ。さとしぶみ
コメント
*説明不足だが、君主が臣下に下すものである。

・告諭(こくゆ) つげさとす。
コメント
*説明不足だが、君主が臣下に下すものである。

◯まとめ
 此の後に、鳥越氏の段落解題が書かれていて、基礎となる(中国古代史)史料解釈が、知識不足のために乱調となっていると見えるが、当ブログの別項で批判している内容に重複するので、ここでは触れない。率直なところ、異郷の異邦人に関する知識/先入観/思い込みで「倭人伝」の解釈を強行するのが、どうにも無理であることが露呈していると見えるが、本稿の圏外に近いので、深入りしない。

 何にしろ、「倭人伝」の深意を解釈するのに不可欠な「常識」に欠けていると見える鳥越氏の提言「だけ」に「倭人伝」観の形成を依存することは誠に危うい。それは、同時代の現地情勢を把握できていない事を痛感している鳥越氏の本意ではないだろう。

 最後に念押しすると、以上の批判は、別人のブログに引用されている「抜粋」に対するもので、文書資料原文の全体(著書一冊)を熟読すれば、合理的な解釈が可能かも知れないが、文脈から切り離された引用による誤解は、どちらに責任があるかと言えば、引用者の反則行為であり、鳥越氏の知的財産権の侵害と見えるが、世上、浸透していない概念と見えるので、当記事読者に無理強いはしない。

                                 完

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