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2023年1月16日 (月)

新・私の本棚 番外 NHK BSP「邪馬台国サミット2021」新総集・再 1/3

[BSプレミアム]2021年1月1日 午後7:00, 【再放送】 5月30日 午後0:00,12月27日 午前9:14
 私の見立て ★★★☆☆ 諸行無常~百年河清を待つ      2021/05/24 補充 2021/12/27 2023/01/16

*NHK番組紹介引用 2021/12/27現在
番組内容 日本史最大の謎のひとつ邪馬台国。どこにあったのか?卑弥呼とは何者か?第一線で活躍する研究者が一堂に会し、最新の証拠や資料をもとに自説をぶつけ合う歴史激論バトル。
出演者ほか 【司会】爆笑問題,【解説】本郷和人,【出演】石野博信,上野祥史,片岡宏二,倉本一宏,佐古和枝,高島忠平,寺沢薫,福永伸哉,柳田康雄,渡邉義浩
「NHKオンデマンドで配信中」

*追記:
 当番組は、2021年12月27日に再放送されたので、再確認の上で、「異論」編を補充とし、「新総集」として公開しました。

*はじめに~重複御免
 NHKの古代史(三世紀)番組の前作は、司会者が揃って素人風で、加えて素人論者の乱暴なコメント連発で幻滅したのです。その後、民間放送の番組が、広く取材した司会者のコメントに感心したものです。一方、NHKの当番組は、年々歳々の使い回しでげんなりしていましたが、このたび、ようやく新作にお目にかかりました。

 今回の番組も、毎度ながら、背景に倭人伝刊本を見せつつ「邪馬壹国」、「壹与」を「邪馬台国」、「台与」と、ほぼ無断で決め付ける陳腐な手口に幻滅します。また、魏使来訪が海上大迂回で、時代考証は大丈夫かと思うのです。
 基礎固めが、毎度疎かで、出だしから脚もと乱雑では、前途多難です。

 番組は、こうした不吉な序奏から意外に冷静な論議となり順当な展開でした。前作は、纏向広報担当風で、当ブログの批判がきつくなっていたのです。と言いつつ、以下書き連ねていったところが、別稿の速報記事とかなり重複してしまったのは、反省していますが、今となっては、改善しようがないので記事重複は、ご勘弁ください。

*総評
 纏向論への異論の大方は、誇大で独善的な纏向論がそう言わせるのです。
 論者の意見が順次提示されましたが、九州説は、ゆったり無理なく紹介されていて、堅実な考察と思わせ、ことさら批判するに及ばないと思ったのです。
 これに対して、纏向論者は、前作を越えた強引な論法で、そんなに無理するなよと言う感じでした。

 論者の提言に噛みついて、(私見に過ぎない)卑弥呼」、「箸墓」、「台与」の年代比定は既に確立されているとの高言(虚言)は、むしろ滑稽でした。そもそも、一応、倭人伝記事から、ある程度の期間内に推測/憶測できる「卑弥呼」はともかくとして、「箸墓」は「倭人伝」に於いて、何ら特定されていない「亡霊」であり、「台与」は、「邪馬臺国」にこじつけて、勝手に改竄した人名でしかありません。
 纏向説論者は、そのように、手前勝手に書き換えた「倭人伝」を奉じているから、そう言い切れるのでしょうが、それは、史学の道を外れています。

 それにしても、纏向論が学術的に確立/尊敬されていたら、この場で今さら高言する必要はないのです。議論で声を荒げるのは、大抵「窮鼠猫を噛む」局面なので、ここでもあからさまに自滅しているのです。

 考古学の財産は、遺物、遺跡の考証に基づく堅実な考察であり、遺跡、遺物に文字記録を伴わないから、時代比定は、大変不確実であり、不用意に文書資料を取り込むと学術考証に歪みが生じる」というのが、先賢の戒めと思うのですが、ここは、自説絶対で、外野の干渉は許さない」という唯我独尊では、論争にならず、子供の口喧嘩のようなバトルです。何しろ、同時代唯一の文書記録「倭人伝」を、纏向説に合うように、自在に書き換えているのですから、天下無敵の確信でもって、強弁できると過信しているのでしょう。

 素人目には、「我田引水」の「倭人伝」解釈に引き摺られて考古学の考察を撓めている感じが拭えません。『纏向風「倭人伝」』は、かつては、古代史学界の先哲の築いた基礎に選りすぐりの英傑が築き上げた楼閣/結構だったのですが、今や、転進を許されない不退転/頑迷な道標と化しているようです。

*高価なイリュージョン展開
 今回、NHKご自慢の子供だましの「ビジュアル」は控え目で、填め込まれた纏向遺跡の「再現」動画を見ましたが、伝統的画餅「イリュージョン」(詐話)蒸し返しと見えます。自説の図式を押し通すに急で、背景考証なしに眩術を駆使するのに、健全な納税者/視聴者としては賛成できないのです。そんな費用があったら、高給取りの関係者に引退いただいて、其の分、地道な時代考証に努めてほしいものです。

*運河曳き船の戯画
 例えば、堂々たる運河で両岸から荷船を曳く図は、実質のない画餅です。海岸からここまでの長い道中、船体もろとも、大量の船荷をどうやって運び上げたのか、どのように船荷を捌いたのか、帰り船には何を積んだのか、実質を語る丁寧な考察の裏付けが無ければ、結局、児戯、画餅です。多額の国費を費やして虚構を捏造して、誰に何を訴えたいのでしょうか。大して国家財政に貢献できていない少額納税者ですが、この有り様を見ると、勿体ない出費と歎くのです。

 丁寧に言うと、河内湾岸から纏向まで、描かれたような荷船を乗り入れる術は、一切なかったと思われます。特に、大和川の蛇行した急流を、どんな手立てで漕ぎ上がったのか、実質のある動画で拝見したいものです。河内湾岸に、どこから、どんな手段で、大量の船荷が届いたのかも不審です。当時、瀬戸内海航路は、至る所難所だらけで、大型の帆船で往来するなど到底できなかったと見るものです。
 最後に、どうにも説明のつかない難点で止めを刺すと、奈良盆地内の傾斜地に堂々たる「運河」を引いて、降水量の乏しい地で、荷船をたたえるだけの水流を確保しつつ、特に何のしかけもなく川船が上下するのも、極めて高度な土木技術の産物と見えるのですが、何も表現されていなくて、これらの詰めがされていないままに、ポンチ「絵」を公開するのは、見当違いの技術投資でしょう。
 念のため言うと、「運河」は、高低差のない地点を、僅かな傾斜を維持した水路で結ぶものであり、高低差のある地点間を結ぶものではないのです。当然、水路の掘削にあたっては、精密な水準器を用意して、所定の傾斜を維持する必要があるのです。
 灌漑用水路と兼用するなら、分水の仕掛けが必要ですが、それは、運河用水の保水目的に反するのです。そんな、高度の水路設計、施工が、どうして、奈良盆地に一時的に実現したのか、不可解です。
 運河は、実験航海しなくても、無理とわかる不可能使命なので、誰も止めなかったのが不思議です。

*「都会」幻想
 言い方を少し変えると、文書行政が確立され、街道網が構築された、七,八世紀の「古代国家」ならともかく、三世紀当時、市糴、交易で物資を移動していたとすると、どんな仕掛けで海港から山中まで運ばせたのでしょうか。
 古代とは言え、「経済的」に、物流、交通の要(かなめ)で無ければ、国の市は繁栄しないのです。
 中国でも、繁栄した市(都会)は、河川、海岸沿いか、陸上交通の要路か、さらには、両者の得失を兼ね備えた土地です。
 漢書で言う「一都会」は、一つに「都」(すべて)「会」するとの趣旨ですが、山間の壺中天であった纏向は、交通の要路ではないので、「一都会 」として栄えたと聞いたことはありません。

 大量の物資が集散したのなら、大量の遺物が残っているはずであり、そもそも、そのような運河まで敷いた「一都會」を棄てて、船便の成立していない飛鳥や平城宮に、王の居所が移動するはずがないのです。
 

                                未完

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