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2023年3月11日 (土)

私の本棚 番外 「邪馬台国論争」『一局面 暗号「山上憶良」』安本美典批判 更新 4/6

                         2016/02/08 補充 2022/12/14 2023/03/11
 安本氏の「数理歴史学」の誤り

承前
 さて、「嘆息」の無様さの非難に続いて、論者が展開する下記「安本氏の四つの過誤」(繰り返すが、これは当ブログ筆者の造語である)論の第一項が展開される。
 (イ)奈良7代70年と吹聴する誤り
 (ロ)天皇1代の平均在位年数が約10年とする誤り
 (ハ)天照大神を用明天皇より35代前とする誤り
 (ニ)35代前が推測できるとする誤り

「(イ) 奈良7代70年と吹聴する誤り」
 と、なぜかひねくった言い方である。これでは、安本氏がえらそうに吹聴するのが悪い、という不作法の指摘となってしまう。この項のどこが、批判対象である安本氏の持論であるか、不明確なのである。なぜ、真っ直ぐに論理の不備を指摘しないのか、不可解である。当ブログ筆者は、安本氏と面談した経験はないが、氏は、それほど不作法なのだろうか。
 ちなみに、論者は、項目で「誤り」と糾弾していながら、本文では、「よくない」といやに軟弱になっている。怒鳴った後、猫なで声というのは、うさんくさいものがある。

 また、論者が、重大な論拠として参照するのは、誰が見ても場違いな中国諸王朝の歴代皇帝の在位年数であり、これは、いったい何だと言いたいところである。

 更に続けて、4王朝通じて、38代395年が平均10年になっているとした後、個々の王朝を見ると、平均10年になっていないと指摘をしている。それがどうしたと言いたいところである。

 更に更に続けて、従って、奈良7代70年というのは、たまたまであって、その点を「吹聴」するのは、一種「ペテン」であると非難している。
 「たまたま」であろうとなかろうと、歴史的時事であり考察の材料となるデータである。
 こうした一連の駆け足の論理が、「安本氏の提唱が誤っている」ことの論証になっていないのは明白である。

 まして、「吹聴」という、いわば当然の行為を誤りと主張したり、果ては、一種の「ペテン」である、つまり、安本氏はペテン師(嘘つき)である、と非難しても、何ら、科学的な議論に寄与しないことは明白である。

「(ロ) 天皇1代の平均在位年数が約10年とする誤り」
 今度は、比較的真っ直ぐに、安本氏の論理の誤りを問うものになっている。
 と言うものの、安本氏が「必然性」を主張したと糺しているのは、見当違いというものである。「と仮定すると」と明言されていても、引き続いて、一々の断り無しに書き連ねていると、結論が「一致している」と断定しているようにみえるものの、仮定を承けているので、実際は、「ように見えます」と付け足して読むのが、解読の常道のように思う。

 ということで、安本氏の主張は、全て、統計学的なものであり、ぼんやり読むと断定しているように見えても、すべて「確かさ」(不確かさ、すなわち誤差)の込められたものであって、「必然」を主張しているものでないのは明らかである。
 特に、統計学は、知的な裏付けのある「臆測」の学問であり、「断定」「独善」でないのは、常識ではないかと思われる。

 同時代の日本人の著述を、適格に読解できないとしたら、古代史史料の読解など覚束ないと見るのである。つまり、論者は、自分で自分の品格を落としているのである。くれぐれも、ご自愛頂きたいものである。

 論者は、ここで、知る人ぞ知る半島古代史史料「三国史記」を援用して、三国の王の平均在位年数が、「奈良時代の平均10年」を大きく超えているから、「安本氏の推計」(断定と言っていない以上、安本氏の言い分は読めているように思うのだが)が無意味であることは、議論の余地がない、と言い切っている
 しかし、大事な論証で、そんなに性急に断定して、糾弾に走るべきすべきではなく、何事も、まずは、当人と議論すべきだと考える。

 この項目について言えば、双方が依拠している史料は、それぞれ「ある程度」の信頼に耐える程度のものであり、それぞれの推論の立て方に客観的に異論がある以上、議論は必須と考える。
 「三国史記」が信頼に耐えるかどうかは、史料批判への疑問であり、それは、「日本書紀」等への史料批判を問うから、実に多大な論義が派生して収拾が付かないので、ここでは言及しない。

未完

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