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2023年4月19日 (水)

新・私の本棚 長野 正孝 古代史の謎は「海路」で解ける 3/9 三訂

「卑弥呼や「倭の五王」の海に漕ぎ出す」 PHP新書 2015/1/16
私の見立て★☆☆☆☆ 根拠なき推定の沼  2017/12/12 補充再掲 2020/07/08 2021/07/20 2022/06/21 2023/04/19

*廊下トンビの批評
 と言うことで、末尾に飛んで批判を再開します。

*白日夢の展開
一.四 近畿纏向国から難波の海に下る
 言うまでも無いのですが、三世紀時点で「近畿」は無く、時代を問わず、「纏向国」は無いのです。無いものの議論は妄言で無意味です。
 時に纏向幕府」と揶揄される畿内説推進陣営の要人は、まさか、このような追従に悦に入っていることはないとは思うのですが、どうでしょうか。それとも、こう書けば、ご褒美がいただけるのでしょうか。

 以下、動機不明の引用紹介が受け売りで続いています。「なぜ古都・平城京が舟運の便が悪い内陸にあったのか?」と物ものしく切り出しています。
 これが無法な問いかけなのは、氏の冒頭抱負から明らかです。ここまで、専ら、三世紀辺りの考察に耽ったのに、急遽、数百年跳んでCE701に開闢した平城京談義ですが、時代が四世紀以上ずれては、有効な推定ができないのです。まして、舟運の便が悪い とは、とんでもないほら吹きです。現代に至るまで、平城京に船便などないし、ついでに言うと、「纏向」にも、舟運の便が悪いなどでなく、船便などなかったと見るのが、普通の理解でしょう。
 まして、ここで問われているのは、「古都」などと「レジェンド」、博物館遺物の扱いをされている現在ではなく、当時、現役バリバリの「平城京」に船便はなかったのはなぜか、との設問なので、無神経な問いかけが空をきっています。著者は、日本語の読解力が足りないのでしょうか。

*纏向幻想に加担
 纏向遺跡を「大規模集落」(どの程度を大規模というか、何を集落というか不明)としても、三世紀中頃の仮定では、せいぜい千人規模で、自給自足を旨とすれば、細々とした供給手段でも、存に要する食料補給はできるでしょう。要するに、当時として、ありきたりの「国」だったのです。
 いや、誰だって飢え死にしたくはないから、何とかして自分の食い扶持は稼ぎ出すでしょう。身の回りの土地で食っていけなければ、さっさと逃げ出すだけです。

*時代錯誤
 ところが、平城京は、万を遙かに超えるであろう非生産人員が寄り集う「都市」(現代語では「大きなまち」)であり、周囲からの持ち寄りでは物資の供給が不足するのです。戸籍があるから逃亡すると重罪となり、餓死しかねないことになります。時代の相違です。

 もっとも、遠国から物資貢納の仕組み、律令制度があったから、餓死はしなかったようですが、持って来いと命令される遠国はたまった物ではなかったろうと推察します。何しろ、帰途の食料など配慮していないのです。

 ここでは、平城京を考察するはずなのですが、提示されるのは三世紀辺りの状勢です。言葉を連ね、河内平野開発も水運も、妄想に近い推定であり、著者が「イメージ」とする絵は、何の根拠も無い単なる画餅ですから、平城京について何も論じていないのです。古代史談義で、中身のない時代錯誤のポンチ絵を振り回される善良な一般読者は、たまったものではないと思うのです。
 冒頭で課題を提示して、一切、その解明に当たらないというのは詐欺です。

*イメージ談義
 因みに、現代において「イメージ」は、食品の、調理仕上がり、盛り付け図であって、そのように出来上がる保証はなく、時に、購入者自身で調達する食材まで含まれています。ある意味、無責任な「絵」ですから、本書のような論考書めいた物には、まことに不似合い、それとも、お似合いです。
 因みに、このカタカナ語の由来とも見える「image」も漠然たる(キリスト教で言えば、主の)「姿形」を指すことが多く、概念図、模式図は、「ピクチャー」と呼び分けています。安直なカタカナ語乱用は、固く戒めたいものです。

 そうでなくても、「イメージ」は、見る人次第で印象も解釈が大きく異なるので、論考は、極力、文字で綴る言葉で進めるべきです。何しろ、古代の史官は、現代人の好むインチキな「イメージ」など知らず、ひたすら、文字概念で論じていたのです。場違い、見当違いのこじつけは、別に珍しくないとしても、不出来なものです。

 「これは、古代の現実の姿を推定したものでなく、著者の考える夢を描いたものである」と責任を持つべきです。無責任を明言するのも、責任の取り方の一つです。

                               未完

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