今日の躓き石 NHK「サイエンスゼロ」の非科学的提言紹介 「曇天革命の奇蹟」待望か
2023/04/03
本日躓いたのは、なぜ、NHKが公共放送の科学番組で、これほどあからさまに「でたらめ」なお話を広げるのかということである。いや、躓いたなどというものでなく、ごついレンガの壁であった。
賑々しく提示された「課題」は、「太陽電池の変換効率が曇天時に低下する」欠点を解決し、これにより、利用できる電力量を拡大するというものである。
しかし、これは、問題点を見損なっている。まず、太陽電池が、太陽エネルギーを電気エネルギーに変換する効率は、せいぜい十㌫程度であり、残りは、電池パネルを加熱しているのであるから、もともと、大して効率的なエネルギー源では無いのである。
そして、曇天時には、降り注ぐ太陽エネルギーの量が、がた落ちであるから、自然、ほとんど役に立たないのであるが、それは、太陽電池の変換効率を上げてもどうにもならないのである。
そもそも、「現存の太陽電池」の変換効率を、例えば、最高50㌫に改善できれば、つまり、五倍、十倍にすることができれば、曇天、雨天、降雪など、気にしなくてもいいのであるが、そんなことができないのは、周知の事実のように思える。出演者は、現在のシリコン太陽電池の変換効率は、100年近くかかっても、ほとんど改善されていないが、新素材は、急速に効率が上昇しているので将来性が期待できるなどとホラ話を捏ねているが、それは、非科学的な夢物語であり、所詮、成長が速ければ、短期間で天井にぶつかるだけである。
そうした事情は、長年、何の変化もないことだから、大抵の関連技術者、科学者の知り尽くしていることなのだが、それを正直に言うと、政府からの支援(要するに税金からの支出)がなくなるので、今回の番組にあるような「呪文」を唱えて、視聴者を煙に巻いているのである。
まして、新素材が低価格であろうと、太陽電池パネルの構造は頑丈でなければならないし、付随して、大容量の電力変換/蓄電設備/機構が必要であり、送電電線として、現在と同様の大量の銅やアルミを使用することに変わりは無いし、加えて、これまでに設置した太陽電池パネルの性能は、一向に改善されないのである。曇天時に変換効率が高い太陽電池が登場しても、何も改善効果はないのであり、何も改善効果が無い「新素材」の開発に「巨額」の費用/税金を投じても、それは、無駄遣いと言うべきであると考える。
そのような「ごまかし」論法に、公共放送が加担するのはどうしたことか。巨額の財政赤字を抱えている国庫から、さらに、無駄遣いをさせるのは、NHKの姿勢として問題である。
当方は、一介のやじうまであるから、公開されている気象データや表明されているであろう機器データを組み合わせて、年間の改善効果を算出して、経済的に評価することはできないが、これほど明らかな、暗算や筆算すら必要の無いような、明々白々な不合理を、科学的な追跡で批判しないのは、まずは、番組担当者の怠慢と思われる。
以上、NHKには、もっと真剣に、最重要課題に取り組んでもらいたいのである。
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