毎日新聞 歴史の鍵穴 「伊勢・出雲ライン」の妄想
伊勢・出雲ラインの意味 神話を演じる祭祀空間か
=専門編集委員・佐々木泰造 私の見立て☆☆☆☆☆ 2016/09/21 補充 2023/05/21
*お断り 2023/05/21
当記事は、コラムとしては、終了して久しいものであり、誠に旧聞であるが、爾来毎日新聞紙上で是正されていないと見え、一方、一部で、当方の記事を参照していると見えるので、自衛のために、補充、再掲載したものである。近来の補充/再掲載は、概して、同様の理由に基づくものであり、弱者の自衛策として、看過頂ければ幸いである。
なお、上記リンクは、公開期限切れで解消しているようである。
◯始めに
今回の題材は、毎日新聞夕刊の月一コラム「歴史の鍵穴」の今月(2016年9月)分の批評であるが、またもや、「地図幻想」を蒸し返しているので、当ブログとして、誠意を持って対応している証拠として、蒸し返しに近い指摘を繰り返さねばならないのである。
*総論
素人が、無報酬で頑張るのは、不似合いであり割に合わないと思うのだが、本件のように、途方も無い暴論に対して、世上、当然と思われる批判が見られないので、柄杓一杯の冷水を、燃えさかる野火に注ぐものである。とても、火消しにはならないが、柄杓一杯分の消火活動に務めているのである。
*主題
今日の技術でも、各地の三角点やそれらを利用して作成した地図、或いはGPSと言った技術が無ければ、見通しの利かない地点間を直線で結ぶことは不可能であり、従って、8世紀当時も不可能であったと断じざるを得ない。いくらなんでも、高校生レベルで納得できる話と思うのだが、どうも、高貴な身分の方は、耳を貸さないようである。イソップ物語に擬えるのは控えるが、佐々木氏が、毎日新聞の専門編集委員なる格別の権威にふさわしい知性を示していないので、何かや輸したくなるのである。
このような批判に対して、確たる証拠を持って反論するのが、全国紙に堂々掲載されたこの記事の筆者の責任だと思うのである。
*引用資料の内容確認
2009年の「国立歴史民俗博物館研究報告」第152集掲載という論文を引き合いにしているが、字数多くして一向に要領を得ないので、別ページで原資料の書評を掲示している。
私の本棚 水林 彪 古代天皇制における出雲関連諸儀式と出雲神話
抄録:本稿は,『続日本紀』の記事に散見され,『貞観儀式』や『延喜式』にも見えるところの,出雲国造が天皇に対して賀詞などを奉上する儀式の意義について考察したものである。
(以下略)
結論を言うと、当記事で紹介されている部分、つまり、「地図幻想」は、水林氏が本来の論説を展開したあとで、自身の「私見」を補強するために同僚の私見の教示を仰ぎ、論証無しの「憶測」であることを理解せずに、自説として取り込んだ部分であり、当記事で、付け足しのように長々と引用されているのが、水林氏が、いわば心血を注いだ本論なので、紹介の軽重・順序が倒錯しているのである。
それにしても、厳しい言い方をすると、「伊勢・出雲ライン」幻想は、水林氏自身が論説の冒頭で提示した学問上の信念に反して、現代的な思考を、論証無しに古代の考証に持ち込んだ「無効」な議論なので、その点を理解した上で慎重に引用すべきなのである。
毎日新聞の専門編集委員が、正確さに疑問のある、未検証の理論を孫引きにも拘わらず、「通説」として引用するのは、不見識この上ないのではないかとの批判を免れないのである。
言うまでもないが、このようないい加減な「トンデモ科学」めいた思いつきを安易に受け売りすると、論説全体の信頼性を害するものであり、即ち、毎日新聞の権威に重大な疑念を投げかけるのである。
*締めくくり
と言うことで、今回も、ため息をついて、当記事は非科学的なものであり、ダメだと言わざるを得ないのである。特に、今回は、水林氏の卓見の論証の欠けた蛇足の部分が冒頭に引用され、論説本体が巻き込まれて批判されるのは、困ったものである。
一素人がちょっと調べて、論証の(象の隊列がすらすらと歩き抜けられるような)「アナ」をぞろぞろと指摘できるような粗雑な論説の付け足しを、本来必要もないのに、なぜ紹介するのか、理解に苦しむのである。
ご自身が、しきりに押しつけている「地図幻想」も、受け売りと言って、別人に責任転嫁するつもりなのだろうか。
以上
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