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2023年7月 7日 (金)

新・私の本棚 1 茂在 寅男 季刊 「邪馬台国」 第35号 「里程の謎」1/2 三掲

1 実地踏査に基づく「倭人伝」の里程   茂在寅男
        2019/01/28 追記 2020/10/07 補充 2021/12/09、12/11 2023/07/07 2024/07/05

*加筆再掲の弁
 最近、Amazon.com由来のロボットが大量に来訪して、当ブログの記事をランダムに読み囓っているので、旧ログの揚げ足を取られないように、折に触れ加筆再掲したことをお断りします。代わって、正体不明の進入者があり、自衛策がないので、引きつづき更新を積み重ねています。

*前置き
 はなからケチを付けるようですが、タイトルで謳われた「実地」とは、倭人伝時代の「実地」ではなく、論者が実際の土地と想定した土地を、二千年近い後世に歩いたという事です。近辺に足を踏み入れたことのない当方には、机上批判しかできませんが、行き届かないのは自覚しているのでご了解いただきたいのです。以下各論も同様です。

 論者たる茂在(もざい)氏は海洋学の泰斗で「九州説」に立っています。また、倭人伝」に誇張や修辞の間違いが(多々)あるとの俗説は採用していません。敬服する次第です。

*冷静明快な里程論
 「二.「一里」は何メートル」では、「郡より倭に至るには、海岸にしたがいて水行し、韓国をへて、あるいは南しあるいは東し、その北岸の狗邪韓国に到る、七千余里」の書き出しの後に「初歩的算数問題」と評し「問題は着実に解明される」としていて、およそ陳寿の提示した「問題」は、必ず「解明」できるという冷静で知的な立場に関しては同感します。

 また、氏の理解では、郡と狗邪韓国の間、「郡狗間」は、出発・到達点が明記され、その間の行程は「航路も正確に示された航程」と談じて、海図上で大体六百五十㌔㍍と論理を重ねた上で、これが七千里と書かれているから、そこで言う一里とは大体九十三㍍であることは明白ではないか、と見事に論じています。

*渡海論復唱
 続く、三度の「渡海」、私見では、「水行三千里」について、論者は、海図から航路長を推定し、対馬まで約百㌔㍍ 、対馬から壱岐まで同じく約百㌔㍍ と、いずれも、一千里に妥当し、壱岐から到着する末羅国も、同様の航程長と推定し、ここまで、郡から一万里としています。
 いずれにしろ、ここまでの区間は一里九十三㍍で一貫と検証しています。多分、九十㍍とした方が、読者に誤解を押しつけない時代相場の概数であり、適確でしょう。

*批判

 当方が、氏の論調に賛同した上で、あえて、異を唱えているのは、まずは、以上の行程を全て「航程」、「航路」と見ている点であり、三世紀当時、そのような「航路」は言葉として存在していない、つまり、対象となる実体がない、と言うことです。概念の時代錯誤です
 参照された海図は、現代のものであり、当時、そのような行程/航程を辿ることはできなかったと感じます。現に、「魏志倭人伝」には、地図、海図の類いは添付されていません。つまり、当時、史官と読者は、文字だけで論義していたのです。遺憾ながら重ねて時代錯誤に陥っています。

 但し、現代的な「航程」で、総じて六百五十㌔㍍ なら、当時も大差ない行程長とみて、参考にして良いように思います。あくまで、海図もコンパスもパイロット(水先案内)も無しに、想定通りの航行ができたらの話であり、氏の論法に同意しているのではないのです。

 繰り返し力説しますが、この間の行程長の評価で、現代海図を採用しているのは、どうしても同意できません。当時海図も航路もなかったので、渡海船が何里移動したか、自身で知るすべはなかったのですから、この三回の渡海は、移動里数を想定できたにしても、全て、漠然たる推定、目算であって、「正確」とか「完全に一致」とか言うのは、見当違いと考えます。

 と言うものの、論拠明快であるから、同意するにしろ、異を唱えるにしろ話が早いのです。

                                未完

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