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2023年9月 2日 (土)

新・私の本棚 渡邊 徹 「邪馬台国への道 ~熊本・宮地台地…」 13/14 再掲

邪馬台国への道 ~熊本・宮地台地に眠る失われた弥生の都~  Kindle書籍 (Wiz Publishing. Kindle版)(アマゾン)
私の見立て ★★★★☆ 力作 ただし勉強不足歴然 2019/03/30 追記 2020/05/19,2021/03/27,2022/01/17,2023/09/02

*魏使のおもてなし 承前
 続けて、離船上陸時に、「貴人」を歩かせたと決め込んでいますが、乗り物、車にも輿にも駕籠にも橇にも乗せず、膝栗毛させたと断定する根拠が不明です。中国で、貴人は自分の脚を地面に下ろさないのが当然としたら、倭地でも同様だったから何も書いていないと見るべきでしょう。

 中国には、太古殷代から戦車があり、周代には公道を走る四頭立て馬車があったのに、倭人に車がなかったと決めつけるのは理解できません。「牛馬なし」と言っても、一切飼育されていなかったと断言すべきものではなく、大人が馬車を活用しなかったとは早計のようです。
 例えば、魏使到着に合わせて、半島から馬車を送り込むことも可能だった筈です。超超重要人物なら、その程度の「最大限のおもてなし」も「おかしくない」はずです。いや、別に大受けして笑えと言っているのではないのですが。

これはもう魏という国に対する屈辱ととられても仕方がない行為です。
 重大発言ですが、賓客を歩かせても「屈辱」などではなく、馬代わりに踏みつけられた時にでも「屈辱」を感じたら良いのです。
 古代士人にとって、恥辱は命を顧みずに晴らすべきものでしたから、その時は、殿中で勅使に切りつけるのか、接待指南役に切りつけるのか、いずれにしても、逆上して仕損じず「必殺」してほしいものです。
 もっとも、魏の側では、現地で死ぬことまで想定して、帯方郡官人を魏使として送り込んでいるのです。漢代以来、西域に送り込まれた、各百人規模の使節団ですが、派遣先で、いきなり使節の首を斬った国もあるのです。それも、一度に限らずです。その地では、敵対の可能性のある使節は、まず、使節を斬首するものだったようです。そのような惨事を起こさないために、軍を通じて身元調査し、伊都国に精鋭の先遣隊を送って魏使の安全を確保したでしょうが、それにしても、数万戸の戸数がある、つまり、数万人の動員力の有る蕃夷ですから、百人を送り込んでも、安全の保証にならないのです。

対馬國や一大國でも同様なことは行われていました。(中略)そんないつ沈んでもおかしくないものに生活を依存するのは間違いなく危険でした。
 船がいつ沈んでもおかしくないと杞憂に耽ると、海峡渡海も南北市糴も成り立たず、半島沿岸長途航行は論の外の極みです。何かの「間違い」でしょう。
 因みに、運搬や移動に船を利用できないとしたら、島人は皆餓死してしまうのです。無責任な放言です。多少、分別を働かせていただきたいものです。例えば、年間、多数の死傷者が出ている「自動車」ですが、「いつ死者が出るか知れない」としても、万人の生活はそのような移動手段に依存しているのです。ものごとは、白黒両断でなく、価値評価して採否を決めるべきです。


 それにしても、「半島沿岸長途航行」を絶対否定するのにここまで待っていたとすると、氏は、中々食わせ物ということになります。

*独り合点の記
すなわち一律数値誇張仮説が正しければ、邪馬壹國は熊本市南部地域であるということが事実をもって示されたのです。
ところが実際には一〇倍といういかにも不自然な倍率のときにかぎり、たった一つだけ矛盾のない経路が存在していたのです。

 仮定は仮定、結果は結果、どこに論理がつながるのか示すべきです。
 「実際」「事実」は、氏の意見であり、史書に一切示されていない
ので、何が自然で何が「不自然」か、読者には理解できません。
 善良な読者には、矛も盾も見えていません。多分、氏の脳内世界の備品なのでしょう。
 
別に述べたように、当時の算数能力では、十倍以外のかけ算は大変むつかしく、十以外の割り算はとてつもなくむつかしいのです。十だけは、単位の付け替えだけで計算が要らないので「自然」なのです。

もし(中略)サイコロを振って(中略)たまたま上手くいく場合があったにしても、それがこんなにぴったりした倍率になるなど確率的にあり得ません。
すなわち―――魏志倭人伝の距離が一〇倍に誇張されていたというのはほぼ一〇〇パーセント確実なのです。

 結果論に負けは無いとしても、「倭人伝の行程道里が間違っている」という論証はされず、また、史官が信条を放棄し、同僚も併せて家族共々刑死する危険を冒して万事を増倍し、史書稿を改竄した動機は、示されていないのです。まして、史官が史書をサイコロ博打で決めていたとも思えないのです。それを言うなら、筮竹、おみくじの「神頼み」とでも言うのでしょうか。

 原則として、事は、論理で決するべきでは無いでしょうか。

*縁起担ぎ
 松本清張氏を初め、倭人伝に登場する数字が、奇数の大変多い偏ったものになっていることを重大視して、縁起担ぎで、奇数が多い、作った数字に書いたと断じている例がありますが、それは考えが浅いというものです。

 蛮夷の地の道里や戸数のように、憶測でしかない概数を扱う時は、ずらりと敷き詰めた数字を使うのでなく、切り良くするために、一,三,五,七,十、十二と言った具合に、階段のように飛び飛びにして、概数の目を、事態相応に粗くするのも、史料に憶測の介入を防ぐ、大切な行き方なのです。
 史書の僅かな記事から、このような現象を見出す眼力は尊敬にあたいしますが、僅かな資料から、飛び飛びの数字の背景まで見通せなかったとしても、それは仕方ないことです。

*陳寿擁護
 陳寿は史官であり理知の人ですから、公式史書に、何の方針もなしに実態と関係ない「虚構」を書いたとは思えません。
 書いたとすれば、緻密な「増倍」戦略によって十倍としたはず
で、確率論は意味ないのです。どんな方針があっても、勅命があっても、虚構のための虚構は書かないと信じますが、それはそれとして、無意味な虚構を書くと思えないのです。
 史官の使命感は、後世人の遊び半分の数字遊びには関係ないのです。
 「燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや」、重責にある者の倫理観を後世の安穏な者が安易に語るべきではないのです。

 しかして、論理にも何にもなっていない、空虚な行が続いています。
                                未完

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