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2023年10月13日 (金)

新・私の本棚 番外 ブログ 刮目天一 「権力者の歴史書は政治文書だよ!(^_-)-☆」 1/2

~刮目天(かつもくてん)の古代史だ! 2023/10/12 
権力者の歴史書は政治文書だよ!(^_-)-☆                         当記事公開2023/10/13

◯はじめに
 以下に参照しているのは、かねて私淑の刮目天一氏のブログであり、国内古代史関係を主体に広範、詳細な古代史論を展開されている一連の記事の最新の「コメント」です。氏の「倭人伝」観は諸記事に散在し的を絞った批判が困難でしたが、今回凝縮して頂いたのを幸便として、一生懸命に批判を加えたものです。なお、氏の見聞された動画には、ここで言及しません。

 「権力者が作った歴史書とは、権力の根源が正統であることを示す政治文書だという理解をすれば、西晋の史官陳寿が編纂した三国志、そして三世紀の倭のことが書かれた魏志倭人伝の内容を正確に解釈できます。」

*コメント

 文章の前提は「権力者が作った歴史書とは、権力の根源が正統であることを示す政治文書だ」と提示されますが、陳寿「三国志」魏志には不正確です。中国古代の公式史書は、時の「権力者」が作ったものでないのは衆知です。
 一転、「魏志倭人伝」を「西晋の史官陳寿が編纂した」と判定されますが、直前の前提と用語が整合せず筋が通らないのです。氏は「魏志倭人伝」の局地を説き、冒頭の前提は空を切って見えますが、以下、ご高説を拝聴します。

 「この観点から、魏志倭人伝の版本に倭大夫難升米が帯方郡に行ったのは景初二年(238年)六月とありますが、景初三年の誤写であることは明らかですよ。難升米が面会した太守は劉夏だと明記されており、先に明帝が送った太守とは異なる人物なのです。」

*コメント
 古代史学者の難詰で「魏志倭人伝」は独立史書ではないので「版本」など実在しません。丁寧に、陳寿「三国志」南宋刊本紹熙本の魏書第三十巻「倭人伝」部分と示せば、紹熙本に、「倭人伝」と小見出しがあるので明快です。
 何しろ、具体的に何の話かキッチリ説明しないと通じないのです。
 氏の持論で、「景初二年」は三年の誤写が明らかと断定されますが、素人目に「明らか」/「確実」なのは、南宋刊本に書かれている文字だけです。

 「魏志倭人伝には卑弥呼の朝貢を絶賛する詔書がほぼ全文掲載されており、司馬懿が尚書省を把握したので司馬懿が書かせたものですから、陳寿は司馬懿の功績を当時の西晋の朝廷の人々に明示するために書いたのです。(2023.10.12 赤字修正)」

*コメント
 倭人伝が引用するのは、蕃王への通達であり「絶賛」は時代錯誤です。
 「賛」とは、文字の含まれない、教養の示されていない職人芸「絵画」に、意義を認める文章/詩文を添えるのであり、「絵画」は、「賛」を得て始めて「文」芸と認められるのです。中国古代史で注意の必要な「単語」の一つです。

 「倭が朝貢したのは明帝の功績ではなく西晋の宣帝と諡された司馬懿の功績だと晋書にもあります。西晋が魏から帝位を禅譲されたので、三国志では魏を正統な王朝とし、西晋の朝廷の人々に対して司馬懿の功績を称揚するために書いたのだと分かります。」

*コメント
 「晋書」は、三国鼎立時代以来数世紀の乱世を統一し、中華世界を復元した唐代に、乱世の元凶「晋朝」事績を史書としたものです。三国鼎立を統一した中原天子ながら、王族が「大乱」を起こして北方民族に滅ぼされた「司馬晋」の罪科露呈に編纂されたので、「晋書」深意が司馬懿の罪科でなく「功績」は、勘違いでしょう。

 氏ご自身の言葉を借りるなら、「晋書」を「作った」のは、唐帝であり、それを承知した上で解釈する必要があるのです。

                                未完

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