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2024年2月27日 (火)

今日の躓き石 毎日新聞 将棋観戦記の盗用事故「王座戦」ネット中継の「不法利用」 追記

                2023/11/22 追記 2023/11/24 2024/02/27

 今回の題材は、毎日新聞2023年11月22日大阪朝刊12版のオピニオン面に掲載された「第82期名人戦 A級順位戦」 観戦記 第21局の2である。
 正直なところ、将棋棋戦(タイトル戦)の報道は、それぞれの主催メディア(時に、複数メディア共催)が、最優先権を持っていて、第三者の報道には「当然」制約があるのだが、今回は、毎日新聞社の記事に『「王座戦第4局」のネット中継を見ての報道』が、堂々と掲載されていて、不審に思ったのである。

 まず、問題なのは、同棋戦の主催紙、ネット中継者について、報道年月日を含めて書かれていないことである。第三者著作物の引用に不可欠な事項が欠落している。

 次に、ネット中継の画面を見た感想のはずが、観戦記者自身の報道のように書かれていることである。「取り返しのつかないミス」などと、許しがたい論評を付し競合誌の紙面で、主催紙の独占的な権利を大いに侵害している。言うならば、自身の観察ではないのに、臨場感を催していたのである。報道偽造である

 ということで、明らかに、知的財産権の重大な侵害がなされているのである。観戦記者は、王座戦第5局の観戦記を担当する予定だったと言うが、それは、第5局の観戦記を主催紙の承認のもとに主催紙に掲載する権利であり、第三者である毎日新聞に掲載することは認めていないはずである。まして、今回の記事は、観戦記依頼など受けていない第4局であり、これを高言するのは、論外の暴というしかない。いわば、職業上の秘密事項を不当に漏らしたものとも見える。念のため言い置くと、ネット中継は、中継者の著作物であり、それを、自身の見聞のように書くのは、中継者の著作権の侵害であると指摘しているのである。

 続いて、同局敗者の談話らしきものが、堂々と引用されているが、毎日新聞社が、自社の名人戦A級順位戦の観戦記で、自社主催棋戦を高め、他社主催棋戦を貶めるために、敗者談話を掲載するのは、報道倫理に悖(もと)るのではないだろうか。

 常識的に考えて、主催紙がそのような談話の取材を許しているのは、当日の観戦者、報道者であり、時点不明の後日の談話については、「勘弁してくれよ」と思っているはずであるが、談話には話者の記名はないし、談話の語られた日が、当然、タイトル失陥の後日であるとしても、いつのことか明記されていない。
 「王座戦」の価値を毀損することを恐れているはずの主催紙が、前王座が「ミス」を犯したと自認した談話が競合紙に正式掲載されることを許可したものかどうかは、不明である。

 正直言って、棋界、つまり、「世界一の順位戦A級」を占めている「棋界最高位の九段」にしてタイトル保持経歴のあるトップクラスの有力棋士が、「メンタルは他人より強いと自覚してい」たなどと、子供じみた言い方をするものではないと思うのである。「mental」(メンタル)は、体育会系のアスリートの好む恥知らずな言い回しであるが、所詮、名詞でなく形容詞であるし、形の無いものであるから、「強い」、「弱い」は、誰にも知ることができないのは、当然である。
 伝統的な評言としては、「体力」、「筋力」でなく、「知力」が高く評価されるものであり、『「鈍感さ」を誇っている』と聞こえては、甚だ不本意では無いかと思うのである。
 このあたり、他紙の観戦記で持ち出され、主催紙に不利益をもたらすと了解した上なのか、という点も、大変疑問なのである。
 問題の談話が、どのような前提で成されたものであり、どのような質問に対する回答なのか「隠されている」から、当の棋士に対して不当に厳しいかもしれないが、もし承知の上での発言、引用許諾であれば、プロ棋士としての職業倫理の根幹に関わると思えるのである。

 ついでに確認すると、「自覚」とは、何かの資質が劣っていると自認する場合の卑下した言葉遣いであり、あいまって、知性に富んだ一流棋士の口にすべき言葉遣いでないのであり、それでは、観戦記者が棋士の知性を毀損しているのでは無いかと思われる。
 当観戦記は、毎日新聞の看板のもとに、世間に、有力棋士の失言をさらすべきものでないと信じるものであり、この場合、毎日新聞社としては、教育的指導すべきと見るのである。共同主催紙の朝日新聞社は、同一の談話を引用した、同一趣旨の観戦記を載せていないと思うので、困るのである。
 それとも、この程度の「行き過ぎ」は、業界相場で許容されているというのだろうか。日本経済新聞社のご意見を聞きたいものだが、この場は、毎日新聞社の責めを問うものなので、そちらはそちらで確認して欲しいものである。

 以上のように厳密に論じたのは、本日の観戦記の相当部分が、実際の観戦記でない「第三者著作物の不法利用」に占められているからである。毎日新聞編集部は、このような問題を露呈した記事を当然と見ているのだろうか。
 少なくとも、毎日新聞の一読者として、大変疑問に思うものであり、率直、かつ丁寧に「批判を加えた」のである。

以上

追記: 2024/02/27
 当ブログ記事を閲読したと報せがあったので、思いきって、続報めいたものを書くことにした。
 別の対局者の対戦の観戦記であるが、第一譜がとんでもないものになっていたのである。全面的に一方対局者の談話らしきものになっていて、観戦記者は、署名しているものの、記事内容としては、同談話を引用符で囲んでいるだけなのである。報道の原則として、引用符で囲んだ部分は、発言内容の忠実なベタ引用であるので、文責は、全面的に発言者にかかるのである。観戦記者は、「無責任」なのである。
 まず第一に、このように一方対局者の談話をベタで掲載するのは、観戦記として当然のことなのだろうか。通常、読者に対して断りがあるはずなのだが、なにもない。つまり、同対局者が「手づから」執筆したことになっている。つまり、この回の観戦記の著作権は、当然同対局者に帰属するはずである。そのような「観戦記」に対して、掲載紙は、普通に原稿料を支払ったのであろうか。同対局者には、「観戦記執筆」に対する謝礼を支払ったのだろうか。

 つぎに問題になるのは、同対局者は、そもそも、このような形式での談話掲載について了解しているのだろうかという疑問である。談話に署名がないから、無断掲載「とか」も思われるのである。談話内容は、素人目にもかなりの不振と見える当期順位戦の成績について後悔とか泣き言を言っているのではないと思うが、それにしても、道半ばで、言い訳めいたものと取られかねない談話を公開するのが、本意とは見えないのである。

 いや、観戦記者が、目下の星の具合や席上発言について「勝手な」解説を述べるのは、ある程度「飯のタネ」で仕方ないのだろうが、それとこれとは、別義である。それにしても、相手方対局者の談話は、なぜ掲載されなかったのだろうか。何とも、面妖な観戦記である。
 同観戦記は、朝刊に掲載され、毎日新聞社ネット記事でも公開されていたから、当方の指摘が、的外れであったら、反駁いただいて結構である。

 この場で観戦記者名など書かないのは、武士の情けである。当方は、一介の読者であるので、断罪などできないのである。

 いや、同観戦記者は、以前にも、その時点の名人を差し置いて、「目前のA級順位戦勝者が、棋界の最高峰である」という様な書き方で、当ブログの批判を浴びているのである。目立った失態として、すくなくとも三度目であるから、ぼちぼち、ご勇退頂いた方が良いのではないかと思量する次第である。

以上

 

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