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2024年2月21日 (水)

新・私の本棚 村山 智浩 「コペテン! 邪馬台国 論理と常識の果てに」 総評

               文芸社 二〇一八年一〇月刊    
私の見立て ★★★★☆ 力作 ほぼ必読 但し冗長 記 2019/07/12 2023/06/12 2024/02/21

□まずは総評
 全体として肯定的読後感ですが、賛成できない部分がとても多く、大波小波の不安定さが心配です。力説部は、言い方が感情的で論旨がぶれています。
 目次で見るに、章節の階層構造が崩れて錯綜としています。編集部が学術書のイロハを教えてないからであり、読者に徒労・消耗感が横溢しました。
 総じて、ご自身でのダメ出しが不足で、玉石混淆、土砂降り時々晴れ間の不穏な天候になっているのでしょうか。次作に期待するところです。

*目につく帯の乱調
 でかでかと侏儒国記事を摘発していますが、「倭人伝」二千文字(約を略す)解釈のなかで、「一説」の欠点で説全体を指弾するのは学術的ではありません。どんな説にも欠点はあり、欠点を幾つあげても「一説」の評価に影響しないのです。
 題名の奇天烈さと共に、心ある読者の手が伸びない原因と見ます。もっとも、近年の「倭人伝」論は、大抵こうした行き方なので、特に非難すべきではないのでしょう。但し、読者に誤解されて損して、勿体ないですね、と言う事です。

*短里否定の重畳現象
 著者の論は、倭人伝里程で有力視されている「短里」に連動して常用尺の六分の一の「短尺」が通用していたはず、とする提案であり、言い換えると、確たる論証が点在していながら、論証の間に不確かな飛躍をしているので、不確かと見ざるを得ないのです。

*魏晋朝短里制ばなし
 中国史上の里制に関し、最も信頼すべき晋書「地理志」は、秦始皇帝が、周里(普通里)を全国に徹底し、それ以降の漢魏晋も、同一里制を施行したとしています。なぜ、同一かというと『里制変更記事が、晋書 「地理志」にない』からです。
 周制の一里三百歩は、耕作地の「畝」も巻き込んでいるので、「畝」を変えずに里を六分の一にする曲芸は不可能です。まして、そのような曲芸が実施されたのなら、晋書「地理志」が制度変更を記録しないわけがないのです。

 「魏晋朝短里説」は、魏朝で里制の中の「里」だけ短縮されたとのあり得ない説と断じられます。あったというなら、明確な証拠が必要です。

*地域里制の可能性
 普通里に関する周制が朝鮮半島に及んだ記録はないし、秦始皇帝の周制布告が「全国」くまなく徹底され、後に、漢武帝が、朝鮮半島全体に、四郡を設けて、未開の地にまで漢制として徹底したのです。つまり、辺境である朝鮮半島まで徹底した記録はないで、地域里は否定できないのです。
 「普通里」でない「地域里」が、記録にないままこの辺境で維持されていたとして、こちらは大太古以来ほぼ不変の常用尺度である「尺」とどう関係したかの記録もないのですが、計算の便で一尺二十五㌢(一㍍の四半分)、一里七十五㍍と仮定すると、七十五×四なので一里三百尺となるだけ明解です。要するに、一歩(ぶ)が一尺と等しいことになるだけです。憶測を論証してもしょうがない気もしますが、以上考えると、倭人伝が地域里を使用して書かれたとしても、「尺」は二十五㌢程度で代わらず、侏儒国民の身長も変わらないのです。
 朝鮮半島の土地が、どんな「歩」、「畝」で測られていたかは、記録がないので不明ですが、帯方郡が、後漢/魏の制度と異なる里制を敷いたという記録が無い以上、「普通里」が施行されていたことに、まず間違いはないでしょう。

*当面の結論 本文は、別途審議します
 憶測は一段でも覚束ないのに、二段重ねると転けて当然でしょう。再版の機会があれば、帯は外した方がよいのです。

                                完

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