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2024年2月26日 (月)

新・私の本棚 遠山 美都男 「卑弥呼誕生」 三訂版 1/2

 洋泉社 歴史新書Y    2011年6月発行    2020/06/09 2024/02/26, 03/11
私の見立て ☆☆☆☆☆ 零点  よいこは真似しないように (絶対に)

◯総評
 本書は、こと倭人伝解説書新書の中で、原史料たる倭人伝を改竄、造作する流れの行き着くところを示したようです。他にも同様の無意味な解説書はあるから、最悪かどうかはわかりませんが、かなりの水準をいく悪書です。
 当ブログ記事の書評として書き出したように買うべきでないものです。

*概要 史論でなく「浪漫派」の独白
 本書は、「日本古代史専攻史学博士」たる著者の専門外の中国正史の文献学考察において要求される専門知識の欠如、稚拙さが露呈していて誠に素人くさいお粗末なものです。よく見ていくと、中國古代史に関して、初歩的な知識を欠いているかと見える例があり、誠に、素人読者にとって迷惑極まりない失態の書です。

 要するに、日本古代史の国内史料の解説書に基づいて、手前味噌の古代浪漫を紡いでいるだけで、と言っても、「日本書紀」を解読したわけでもなく、まして、「倭人伝」漢文解読を放棄していては、文献学先人の(不出来な)追従しかできないのです。
 正体不明の訳文を適当に引用して、もっともらしい装いですが、素人考えを素人風に書き散らしています。

 古代史」専門家を装っているため読者が丸呑みしそうで剣呑です。著者は、中国史書については、全くの素人/門外漢/野次馬であり、これを『素人風』と書くのは当ブログ筆者の謙遜表現と輻輳して大変不愉快です。素人と言えども、学べば改善されますが、学ばなければ「付ける薬」はありません。しゃれて「浪漫派」か。

*無学不遜 不熟の大成~ムック記事批判
 氏の無学不遜、不熟不撓は、近作の歴史読本2014年7月号 特集「謎の女王 卑弥呼の正体」~「徹底検証九人の卑弥呼」の一端に書かれた『卑弥呼機関説』なる粗暴な短文の書き出しに、往く繰りもなく表れています。

 卑弥呼とは『魏志』倭人伝という外国史料にしかあらわれない存在である。したがって、その実像の解明には『魏志』倭人伝に対する徹底的な史料批判がもとめられる。そこに書いてあることをそのまま追認することが許されないことは多言を要さないであろう。

 僅かな字数に、現代日本語としても特異な用語、表現が凝縮していて、読者に出費を求める商用出版物で、このような意味・意義不明な暴言は『許されない』事は言うまでもありません。誰が「許さない」のか、誠に理解不能な暴言です。

*誤解満載 以下同様
 衆知の誤解を列記すると、「卑弥呼」は、魏志倭人伝以外に笵曄「後漢書」東夷列伝倭条に登場する人名、「固有名詞」です。光学的「実像」は倒立「イメージ」であり、所詮外観印象ですから、本来、実像は目を開けば難なく見えるのです。見ようとしないのは、当人の好き好きなどといつていられないことは、明らかです。

 「史料批判」は、新規に出現した史料テキストを理解した上で、内容を掘り下げた徹底的考察を付くすのが常識です。原文意を理解して初めて史料の適否を決めるのであり、既存の根拠不明の印象記は追認すべきでないのです。もちろん、「魏志倭人伝」は、二千年前から厳然と存在し、著者のような、二千年後生の無教養な東夷の「批判」など、無用なのです。

 冒頭のつかみが、このような乱調ですが、以下の記事も、用語、行文が揺らぎはなしで、暴走、迷走するので、善良な読者は、何を言いたいのか聞き取ろうとする気がなくなるのです。と言う事で、これ以上引用はしません。

 以上、高校生のクラブ活動報告書の下書きのように、一行ごとの用語ダメ出しが必要では、情けないものがあります。歴史読本」誌は、伝統を継承していると信じていたのですが、「ムック」では、何も編集しないのでしょうか。

*「浪漫派」の錯誤
 初心者なみの用語改善指摘では仕方ないので、重大な錯誤を指摘すると、「視点錯誤」です。
 中国古代史で「外国」は中国以外の蛮夷であり、当時、三世紀の世界では、帯方東南に在る大海中山島の東夷は、「言葉」、「文化」を解しないから、そこには「史料」はあり得ません。つまり、三世紀、文字のない「外国」に史料は一切ないのです。
 それに対して、氏は八世紀「日本」の夜郎自大視点で「外国」としていて要は、中国も、鴻廬館に寄寓する蛮客に過ぎない」という尊大な視点から、堂々と見下しているようです。ようですというのは、この暴言の根拠を示さないからです。おそらく、そのような視点の見当外れを何も自覚されていないのでしょう。

 と言う事で、はしなくも露呈しているのは、「浪漫派」共通の視点錯誤であり、後世「日本」成立以降の国家像が当然の原点となっている古代「浪漫」のようですが、同ムック主題から見ると、大きな見当違いです。

 『「徹底的な」「史料批判」』の視点がはなから的外れでは、「先生、御自分を診断したらいかがですか」と言いたいところです。

 中国では、経書、史書などの文書編纂に高度の教養を動員したから、資料原文を読解できない素人(二千年後生の無教養な東夷)は、現代風の貧弱な語彙を武器として理屈付けするのは、言うならば素手で岩壁を削るものです。
 二千年後生の無教養な東夷とは、岡田英弘氏が、世界史の権威であっても古代中国史に関しては後生であったご自身にたいする謙虚な自戒の趣旨を含めて、述べられた箴言を、若干自己流に整えたものであり、当ブログ筆者の持論と軌を一にしているものです。ちなみに、岡田氏は、陳寿「三国志」魏志倭人伝について、極めて厳正に記述/編纂された史書であると高く評価されています。

 とどめの「多言を要しない」は自身の言葉で正当化できない時の無責任な隠れ家です。「衆知」、「自明」、「自然」などの逃げよりはましに聞こえるのでしょうか。「二言、三言で済むなら、この場で言ってみたらどうですか」という事です。とにかく、何の隠れ家にもなっていないのです。
                                未完

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