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2024年4月22日 (月)

私の本棚 51 水野 祐「評釈 魏志倭人伝」 3/10 補充 改頁

 雄山閣 新装版 2004年11月 (初版 1987年3月)
私の見立て★★★★☆ 『「倭人伝」は「唯一無二の史料』 2016/06/18 追記 2020/06/07 2021/07/17 2024/04/21

*加筆再掲の弁
 最近、Amazon.com由来のロボットが大量に来訪して、当ブログの記事をランダムに読み囓っているので、旧ログの揚げ足を取られないように、折に触れ加筆再掲していることをお断りします。

*「三国時代史概観」
 本書は、倭人傳本文の評釈に先立ち、第二章 魏を中心とする三国時代史概観、と題して、後漢朝衰亡期に始まる、一世紀あまりの乱世に堕ちていく政治、社会動向が描かれている。この期間に含まれる、倭人傳に所縁のある後漢桓帝、霊帝治世時の深刻な内紛も描かれている。

*「桓帝霊帝時」談義~余談
 以下、余談に近い、私見であり、氏の見解を云々するものではない。
 「倭人伝」に見られる後漢桓帝霊帝時の時代は、後漢の内征崩壊が露呈した時期であり、東夷管理が、漢武帝創設の楽浪郡による秩序が、同地域の支配体系として新興の遼東郡の管理に堕したことも容易に想到できる。それまで定期報告で現地事情を悉に把握し、頻りに訓令した雒陽の主管部局の東夷管理が遼東郡の管理に委ねられ、放任時代になっていたのである。

*参考書紹介
 因みに、当ブログ筆者の同時代参考書は、主として、陳舜臣「中国の歴史」、宮城谷昌光「三國志」、それに、岡崎文夫「魏晋南北朝通史」(国会図書館の近代デジタルライブラリー所蔵は、内外両編揃い)であるが、あくまで時代背景を知る読書であり、厳密に参照しているわけではない。
 世上、「史料批判」の何たるかを知らず、また、先人によって、適確な「史料批判」が、既に徹底的に為されていることも知らず、ひたすら、「倭人伝」の史料価値の欺騙を叫ぶ無知、無教養な素人論者が見られるが、陳寿が編纂にあたって確保していた教養から見ると、「二千年後生の無教養な東夷」の独善と見るものであり、まずは、ご自身の無知/無教養を癒やすべきと思う。
 無知は、致命的であるが、「やまい」ではないから治療のしようがないが、ご当人が気づいて、自覚是正すれば救われるのである。さしあたっては、本書が、妙薬となる可能性があるが、まさか、味見も咀嚼もせずに「鵜呑み」はしないだろうと思うのである。

*「概説」の偉業
 と言う事で、本書の冒頭では、「概説」篇として、陳寿「三国志」とそれに先行する史料である「三史」(司馬遷「史記」、班固「漢書」、笵曄「後漢書」)、さらには、隣接する魚豢「魏略」について、適切な概評が加えられている。
 時代、地理背景として、(後漢末期)遼東郡が半島中部に設けた帯方郡から海峡向こうの東夷に管轄を及ぼすに至った経緯とその滅亡が説かれている。
 薄手の新書版は本書の真似はできないが、その際は、本書の該当部分を参照する「注記」として一々再現する必要はない。適確な参照は短縮紹介に遙かに勝る。言うまでもないが、当節の軽薄新書「倭人伝」談義は、思いつき、思い込みを怒鳴り立てず、本書などの先賢諸兄姉の著作を踏まえて、それを克服した上で、ご自身の意見を述べるべきである。いや、言うまでもなく、これは、氏の教戒を承けた自戒でもある。

                                未完

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