新・私の本棚 長野 正孝 古代史の謎は「海路」で解ける 6/9 四訂
『卑弥呼や「倭の五王」の海に漕ぎ出す』 PHP新書 2015/01/16
私の見立て★☆☆☆☆ 根拠なき推定の沼 2017/12/12 再掲 2020/07/08 2021/07/20 2022/06/21 2023/04/19 2024/04/17
*加筆再掲の弁
最近、Amazon.com由来のロボットが大量に来訪して、当ブログの記事をランダムに読み囓っているので、旧ログの揚げ足を取られないように、折に触れ加筆再掲していることをお断りします。
*「無かった」海の道
飛ばした部分から見ると、著者は、日本海沿岸の「海の道」という概念に惚れこんでいるようです。ここで示された現地確認の努力が、大和川水運説に対して堅実に費やされていたら、ここまで素人に突っ込まれることはなかったはずです。
つまり、途方もないホラ話に続く展開なので、随分損しているのです。
著者は、「大船団長距離航海」というロマン/虚構に浸っていますが、まさか、山中から切り出した丸太舟ではないでしょうから、どんな材木をどんな大工道具で製材加工して、航海に耐える船体に仕上げたか、帆船にするとして、帆布はどうやって調達したのか、船員をどうやって集めたのか。白日夢はいい加減にして欲しいものです。「イメージ」の壮麗さに、自分だけ酔っていては、書き割り以外のものにはできないのです。
実務としては、道中の食料と水の補給をどうしたのでしょうか。各寄港地に、所定の人員を配置していたのでしょうか。ここまでに説明はないのです。
「海路」と言えるためには、確実に到着できる保証が必要なのです。倭国使節が魏都洛陽まで航行と陶酔していますが、確たる根拠があるのでしょうか。
朝鮮半島の産鉄に誤解があるようです。鉄鋌が「銭」として使われたというのは、機能をいい、大小などを言うのではないのです。忽ち錆びて朽ちる鉄銭は、古来希です。
*「無かった」「コンビナート」
第四章も、冒頭に時代錯誤のロマンが提示されておおぼらです。英語やロシア語由来カタカナ語を連発しないと著者ロマンは書けないとしたら、古代に、そうした概念はないので、ほら話としか言いようがないのです。
例えば、「コンビナート」(ロシア語:комбинат,ラテン文字転写:kombinat)を「工場群」と言い放っていますが、古代に「工場」などなかったのです。
「コンビナート」は、本来、ソ連のシベリア開発で、離れた鉄鉱山と石炭鉱山を鉄道で連結し、行きは、石炭を乗せ、帰りは、鉄鉱石を乗せて貨車往復輸送によって、資源産地双方に工業化の道を開いたことを言います。つまり、単に複数分野の工場が連携したものを言うのでは無いのです。
無人の荒野に産業拠点を新設するソ連シベリア開発に独特な課題に併せた革新的な解決策を造語したのであり、同様の課題が存在しないところに同様の解決策は無いから、他国に本来の「コンビナート」は、ほとんど存在しないと思います。心ある著者なら、誤用されたカタカナ語は避けるべきです。
この「コンビ」(ComBi 二つの物の結合)は、その名の通り、遠隔地の二業種限定の「コンビ」を言うのですが、氏は、例によって、現実離れした幻想を書き殴ります。いや、この機微を承知で、だらだらと言い崩しているのでしょうか。
現実の丹後半島地域も、町おこしどころか、著者のおおぼらの「サカナ」にされて、世間の嘲笑を浴びては不本意でしょう。
立て続けに、とんでもない前置きでは、以下を読み通すのは、途方もない苦痛です。当方の忍耐の限界が来てしまいました。
*荷物の山越え~できる方法
氏のほれ込んでいる白日夢、荷物山越えを考察します。まず、海船の河川遡上は無謀なので、海港で、小振りで底が浅い河川航行用の船に積み替えます。
遡行につれ、川幅が狭まって通行不能になれば、さらに小振りの船に積み替えます。それでも通行不能になれば、船荷を降ろして、背負子に載せ替えます。もちろん、船体ごと担いで山越えするような、無謀なことはしないのです。それぞれの船腹は、帰り船にするか、始発港に戻って次便に備えて温存待機です。
人海戦術ですから、峠を越えたら、小舟の船着き場まで下り、以下、順次積み替えていくのです。局面、局面に適した手段で荷送りすれば、無理なく山越えできるのです。
「荷船」の山越えは、船体が途方もない重荷の上に、引きずり移動で船体の痛みが激しく、長続きしないのです。そもそも、山向こうには山向こうの手立てがあるので、無理して船体を運ぶ必要など、全くないのです。
この理屈は、穀物輸送が多かったと超える大和川の山越えでも同様です。
奈良盆地に、小船の荷船が運用されていたら、下流から川船を持ち越す必要は、全く無いのです。そして、奈良盆地に、荷船が、一切運用できていなかったら、川船を持ち越しても、何の意味も無いのです。
古代人が、無駄な労苦に取り組んでいたと考えるのは、余りにも、古代人を見損なっていることになります。
未完
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