新・私の本棚 関川 尚功「考古学から見た邪馬台国大和説」 3/3 再掲
「畿内ではありえぬ邪馬台国」 梓書房 2020年9月刊
私の見立て ★★★★☆ 自明事項の再確認 2021/10/06 補充 2022/03/13 2024/04/15
*加筆再掲の弁
最近、Amazon.com由来のロボットが大量に来訪して、当ブログの記事をランダムに読み囓っているので、旧ログの揚げ足を取られないように、折に触れ加筆再掲していることをお断りします。
*試行錯誤の伝説
一体に、「考古学」の諸兄姉は、どこかで技術革新が発生したら、たちまち「全国」に模倣追随が広がると決め込んでいますが、そのような安直な発想は、時代錯誤と言うより事実誤認です。
土器内面を削る庄内土器の斬新な技法と雖も、完成までに失敗例が山積した過程があり、厖大な失敗から学んだ技術者が、土器技法を完成したはずです。後世、失敗を乗り越えた成功技法を「ノウハウ」と珍重しましたが、要は、試行錯誤を無用なものとするから「ノウハウ」伝授は貴重なのです。そのような「ノウハウ」は五年や十年では習得できず、長期の徒弟修行を経て習得するから、分家して別天地で開業するには、随分随分、年月を要するのです。
と言うことで、革新的な新技術が広がるには、とても大変な時間がかかるのです。橿考研が空論を広げているのは、実務寄りの考察を進める人材に欠けるためだと見て苦言するのです。
*文書考証の欠落
続いて、国内古代史「考古学」の分野で軽んじられている中国史料の考証です。氏の専門分野外なのか、「倭人伝」解釈が風説引用に陥っているのは残念です。特に、無理やりのこじつけが目立つのに、疑問を呈していないのは、残念です。
いわゆる「史料批判」なる手順は、中国史料自体の信頼性や具体的な記事の信頼性を問う手法ですが、国内では、関川氏もとらわれている「誤解」「思い込み」が出回っていて、本書でも、肝心の考察をはなから取り崩しているのです。
「史料批判」の前提としては、検証済みの基本資料、いわば、測定原器があって、当該史料の内容をこれに当てて審議していくはずなのですが、橿考研が一翼を担っている国内史学界の「定説」、「通説」論義では、そのような前提は一切確立されていないと見えるのです。つまり、その場その場の場当たりの「感想」で、言ったもん勝ちの議論を推し進めていると見えるのです。
*文献否定の不調~晩節の課題
本題に入ると、氏を含む先賢諸兄姉は、「魏志倭人伝」(倭人伝)なる中国史料に、学問的な意義のない、単に、無節操な「批判のための批判」を浴びせます。大抵は、先人の「一刀両断」の蛮勇に無批判で追従しているのですから、何も新たな知見が付け加えられているものでなく、素人目にも、「倭人伝」は当時唯一無二の史料として尊重すべきであるにも拘わらず、素人考え並みに、明確な根拠無しに否定論を述べ立てる発言者に対しては、信頼を置かないのです。
端から行くと、一級史料たる「倭人伝」に「邪馬壹国」と明記されているにも拘わらず、根拠不十分な異論を言い立てて「邪馬臺国」と無法にも改竄しています。根拠なき改竄は学会ぐるみの悪習であり、史料偽造に等しい暴挙であり、氏は、かかる非学問的な学会風俗に同調しています。
従って、「倭人伝」不信論調に従い、原文改竄、後代創作している第Ⅷ章には、信を置けません。
氏は、文献史料に基づく「考古」をどう捉えているのか、大変歯切れが悪いのですが、「邪馬壹国」否定論は、厳しい反論を避けて通れないと思います。見てみないふりの「逃げるが勝ち」は、論争敗者の最後の隠れ家であって、現場から逃れてもしっぽが見えています。いや、以上は、関川氏の職歴上、不可侵なのでしょうが、そのために氏の考古学「晩節」は、浄められていないのです。
*史学における本末転倒
纏向論者は、纏向論者向け特製「倭人伝」を用い、他人事ならず、心地良いほど纏向論に合っているとご自慢と見えます。所詮、「倭人伝」は、纏向論にしては、枝葉末節史料であり、その程度の自己完結で結構として、本当にそれでいいのでしょうか。
古来、名刀は、鎚に打たれ、火と水の試錬を経て、名刀になるのであり、小手先でこね上げて温存される安直な造形物ではありません。
氏が、田中琢氏の本末転倒『「倭人伝」全否定論』に毒されてなければ幸いです。
*まとめ
以上、氏の著書の書評はことの切り口であって、氏が、専門外の文書考証で、杜撰な先賢諸兄姉に無批判に追随したことは、ここでは、主たる批判対象ではありません。ご自身が気づいて、ご自身が姿勢を正すべきなのです。
以上
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