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2024年4月15日 (月)

新・私の本棚 ネット記事「現代人でも至難の業! 卑弥呼の船はなぜ大陸から帰れたのか」 1/4

 「逆転の発想」から見えてくる邪馬台国  播田 安弘
日本史サイエンス〈弐〉邪馬台国、秀吉の朝鮮出兵、日本海海戦の謎を解く 講談社 ブルーバックス 2022/06/26 2024/04/15

*加筆再掲の弁
 最近、Amazon.com由来のロボットが大量に来訪して、当ブログの記事をランダムに読み囓っているので、旧ログの揚げ足を取られないように、折に触れ加筆再掲していることをお断りします。

◯はじめに 
 本稿は、ネット記事の紹介であり、このように堂々と販売促進されている以上、記事自体の批判も許されると考えて率直に批判しました。抜粋の文責はサイト編集部でしょうが、著者了解済みと見て書いています。
 因みに、「なぜ卑弥呼の船は...戻れたのか?」は、意味不明の大滑りです。

*不吉な展開~トンデモ本の系譜継承か
 なぜ卑弥呼の船は戻れたのか? 船舶設計のプロフェッショナルであり、このほど『日本史サイエンス〈弐〉』を上梓した播田安弘氏の仮説から、邪馬台国への意外なルートが見えてきました。

 ここで、著者紹介は「船舶設計のプロフェッショナル」と認定していますが、本書で問われる古代木造船設計建造に、どんな知識、経験を保有していることか、無茶苦茶な言い回しと見えます。要するに、現代の大型鉄鋼船舶は、強力な推進機関と航海情報を有していて、造船所は、巨大な鉄鋼構造物の力業で蠢いています。そのような「現代人」の古代船「初心者」の「素人考え」が無造作に開陳されていると見えます。

*不吉な課題呈示
「卑弥呼の船」を考える
 弥生時代の日本で邪馬台国が最大の国として発展したのは、女王・卑弥呼が中国大陸と活発に交流し、先進的な文化や技術を導入した……

 氏は、古代史に関して素人と見え、まことに無造作に始めますが、三世紀、「日本」は存在せず、筑紫に限定しても「最大の国」など時代錯誤です。『女王が「中国大陸」と交流』とは、大変お粗末で、そもそも、いつの時代であろうと、「活発」であろうとなかろうと、人が「大陸」とは交流できません。魏が中原を確保しても、南に漢帝国の継承者と自認の漢(蜀漢)が健在で子供だましです。

 魏志倭人伝を基点とすると、「倭」から「大陸」に至るには、半島上陸後、街道で帯方郡に至り、郡官吏の同伴で山東半島から洛陽に赴きます。当時、遼東は関係ありません。
 洛陽に到着すると、まず、鴻臚の典客担当は、蕃人を「客」と煽(おだて)てつつ、人前に出られるよう行儀を躾けます。最後、手土産、印綬を与えて、送り返すのですが、辺境で厄介事を起こされて始末するよりは、随分安上がりなのです。
 こうして見ると、「大陸と交流」は安易な思い過ごしと見え、まことに不勉強です。

 「先進」文化を採り入れようにも、まずは、漢字習得と言っても、万に及ぶ文字の発音と字義の記憶で、文字文書がうっすら理解できるというだけでなく、中国文明の根幹である、四書五経の暗唱、解釈を身につけることが「文化」の大前提であり、また、幾何(算術計算)習熟も必須です。「技術」は、言葉が通じるのが必須条件であり、それでこそ、実務/徒弟修行を通じて、伝授/習得/技術移管できるものであり、手軽に「導入」などできません。
 また、女王が如何に意欲を持っていても、当時の情勢を眺めると、文化/技術指導者が、先進国での栄達を捨てて、生存も覚束ない「倭」に移住し、途方も無い労苦を厭わずに指導にあたったとは思えません。
 古代に何か想定しても、時代考証を重ねないと、単なる夢想に終わります。

*関係不明な遺跡紹介
 以下の遺跡に、参考になる出土品が4例あります。(略)
 卑弥呼の時代の船は、基本的には木をくり抜いた丸木舟の両側や前後を覆っただけの構造で、帆はなく、櫂やオールを漕いで進んでいました。海に出るにはかなりの危険をともないましたが、それでも船首と船尾を高くするなどの工夫をして、大陸へと漕ぎ出していったのです。

 「卑弥呼の時代」と出土物の時代比定は、大変不確実/無根拠と見えます。全て、後世の閑人の妄想の産物でしょう。
 埴輪の土器造形と線刻画は、制作者の主観、再現精度が不明で、担当研究者の推定の確かさも不明です。無根拠に等しい憶測です。
 現代の工業化社会で確定している「機械製図」の規則に従っている「図面」以外の図形情報「イメージ」は芸術的表現であって、一切、工学的な史料と解釈してはならないというのが、「サイエンス」の大原則と思いますが、考古學のHistorical Scienceは、図形の見かけの印象を絶対視するらしく、困ったものです。まして、孤証を孤証として限定的に評価することもないのです。まことに非科学的です。

                               未完

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コメント

2022-06-29 私の本棚 投稿
はじめまして!
田舎暮らしの同世代になります、74歳。
歴史オタクではありません、趣味は釣り、和竿製作(現在は中断)実力は?、
東京に在住は【現在、閉店、銀座東作という和竿の老舗】、二代目東春という竿師に手ほどきを20年あまり、受け、自身の技量を確認する意味で【ヤフオク出品】ソコソコ高額で落札されました、数量は200竿。
【歴史についてのプロフィール】
2019年、和竿を制作しながら、【YouTube】を視聴というよりは、ラジオ的に聞いていたというのが正しいと思います。
歴史関連をランダムに視聴していたら、【因幡の白兎】を解説していました。
白兎と鰐?、白兎と鮫?、当方の精査した結論は【菟道稚郎子VS和珥氏・和邇氏】
の政争かな?
その後、歴史正史、史記漢字は誤訳ではないかと疑問を抱き、探求の日々を過ごしております。
【歴史学者、国文学者、歴史愛好家】は不思議で閉鎖的で異論、反論は拒否、異論を受け付けると自己破綻、矛盾論を恐れているからなのか?
無知蒙昧の歴史学者、国文学者さまへ、漢字の根本的な考え方が間違っている。
【卑彌呼の船はなぜ大陸から帰れたのか。】
【寧波船】⇒解読⇒漢字⇒説文解字⇒假借⇒偏旁、字根⇒周礼五経基軸文法の解読。
【科学的根拠】⇔対馬海流の流速⇔地球公転に伴う春分時に渡海。
陳寿は五経基軸文法を駆使して編纂しています、敵国【匈奴】に解読されないように、
最高機密なので周礼五経基軸文法のセキュリテ構成で編纂され【千餘里⇔目くらまし】
【実里⇔公比積算数⇒実測里⇔0.43km】【百里】【百里】【五百里】⇔【露田】⇔国税調査。
其南有狗奴國 男子為王 其官有狗古智卑狗 不屬女王 自郡至女王國 萬二千餘里
【自郡至女王國 萬二千餘里】⇒自郡至女王國の領土面積。
無知蒙昧の歴史学者、国文学者等と、異なる漢字一字一句解読になっています。

ご興味がありましたら閲覧ください、有難うございました。

https://aledspot.hatenablog.com/

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