« 新・私の本棚 坂本 光久 「新邪馬台国の研究… 1/4 | トップページ | 新・私の本棚 NHKBS「古代史ミステリー 第2集 ヤマト王権 空白の世紀」 1/2 »

2024年4月 2日 (火)

新・私の本棚 NHKBS「古代史ミステリー 第2集 ヤマト王権 空白の世紀」 2/2

私の見方 ☆☆☆☆☆ 果てし無い浪費の泥沼 豪勢な金継ぎ骨董 2024/03/27       2024/04/02

*遺物の謎
 当番組で、盾型櫛と銅鏡は、それぞれ発掘遺物が示されたが、「詳細」で壮語された「盾形銅鏡」は、ついぞ見当たらなかった。不思議である。

*虚言連発
 それにしても、秘策」や「戦略」など、厳重に秘匿されたはずの軍事機密が、ぞろぞろ提示されるのは奇異である。誰が、なぜリークしたのだろうか。
 ちなみに、蜀漢宰相となった諸葛「臥龍」亮が、流浪の君子劉備に提示したという「天下三分の計」戦略は、陳寿が蜀志に収録したから、何れかの時点で公開されたのだろう。一方、『国内史料に見えない「倭の五王」』の「戦略」が、どのようにして制作者の知るところとなったのか不明である。

*書かれざる偉業
 それにしては、「倭の五王」南朝遣使の不朽の偉業が、国内史料に記録されてないのはなぜだろうか。無理やり「外交」したのなら文書記録が大量に残るはずである。広開土王碑をネタにした海外派兵も同様である。それほどの大事業が、国内史料に何も記録されていないのは、なぜだろうか。
 制作者は、同時代、王の高官に単数、または、複数の中国人がいて、国書起草以外にも記録文書の整備にもあたったと見ているが、なぜ、記録継承がなかったのか不思議である。「倭の五王」の墳丘墓に墓誌がなく、厳密な記録もないのは、なぜだろうか。中国人が「史官」として臨んでいれば、絶対起こりえないのである。

*「島泉丸山陵」の奇観
 ついでながら、有力天皇陵とされている「島泉丸山陵」が、「前方後円墳」で無いのは新作空撮までもなく公知である。なぜ、そのような不確かと見える比定が、NHKの教養番組に注釈無しにまかり通るのだろうか。不思議である。

*記録の不在
 国内権力にしたら、重要な史実が国内史書に記録されてないのは、権力継承がなかったからではないか。反逆者が滅ぼされれば、公文書は全て破壊されるのがならいである。暴力的な政権交代が秘されたのだろうか。

*学芸会ごっこ
 今回は、史料紹介が乏しく遺物も断片的であったためか、埋め草に、戦闘シーン、中国/高句麗/倭国王宮の寸劇など、とんだお芝居の蒸し返しが連続している。衣装、セリフ、舞台装置が、卑彌呼時代以来のベタベタの使い回しであり、まるで、学芸会寸劇で傷ましい。そう言えば、唐突な「専門家」寸劇も、名出し顔出ししているのに、棒読み風で勿体ない。「薄謝」戦術なのかな。

*不思議な胡服騎射
 画面に提示された高句麗の騎馬軍団は、弱弓「流鏑馬」で不思議である。当たれば痛いだろうが、馬上から打てる矢の数は知れている。まして、すれ違いざまとなれば、的を捕らえて打てる数は限られている。敵だって弓矢をもっているから、騎馬武者でなく、馬を狙い撃てば、まず外れっこないはずである。もちろん、「歩兵」は盾も持っているし、更に言うと、ご自慢の鉄甲槍部隊に対して効くのであろうか。「矛」と「盾」の故事もあるくらいである。

◯まとめ~金継の無理
 いや、結局、当番組は、三世紀の「倭人」が、「巨大墳丘墓」政権と「倭の五王」政権を歴て、九世紀の平城京に続いた』との主張だろうが。滑らか(Seemless)な推移でなく、経過部分が穴ぼこなので、繋げるために、新作物語の破片を埋め草としてつないで、隙間を漆金箔の金継ぎした苦心の作と見えるが、「金継ぎ」の妙技でも、わずかな破片の大胆つなぎの無理は癒やされていない。
 要するに、大騒ぎして見せても、何も立証されていない虚夢のようである。

 公共放送が、このような法螺話、与太話を、多額の制作費を投じて制作し、堂々と公開するのは、誰の「戦略」に従ったのか不明だが、後生(若者)に負の継承とならなければ幸いである。

                                以上

« 新・私の本棚 坂本 光久 「新邪馬台国の研究… 1/4 | トップページ | 新・私の本棚 NHKBS「古代史ミステリー 第2集 ヤマト王権 空白の世紀」 1/2 »

新・私の本棚」カテゴリの記事

歴博談議」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« 新・私の本棚 坂本 光久 「新邪馬台国の研究… 1/4 | トップページ | 新・私の本棚 NHKBS「古代史ミステリー 第2集 ヤマト王権 空白の世紀」 1/2 »

お気に入ったらブログランキングに投票してください


2024年9月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30          

カテゴリー

  • YouTube賞賛と批判
    いつもお世話になっているYouTubeの馬鹿馬鹿しい、間違った著作権管理に関するものです。
  • ファンタジー
    思いつきの仮説です。いかなる効用を保証するものでもありません。
  • フィクション
    思いつきの創作です。論考ではありませんが、「ウソ」ではありません。
  • 今日の躓き石
    権威あるメディアの不適切な言葉遣いを,きつくたしなめるものです。独善の「リベンジ」断固撲滅運動展開中。
  • 倭人伝の散歩道 2017
    途中経過です
  • 倭人伝の散歩道稿
    「魏志倭人伝」に関する覚え書きです。
  • 倭人伝新考察
    第二グループです
  • 倭人伝道里行程について
    「魏志倭人伝」の郡から倭までの道里と行程について考えています
  • 倭人伝随想
    倭人伝に関する随想のまとめ書きです。
  • 動画撮影記
    動画撮影の裏話です。(希少)
  • 古賀達也の洛中洛外日記
    古田史学の会事務局長古賀達也氏のブログ記事に関する寸評です
  • 名付けの話
    ネーミングに関係する話です。(希少)
  • 囲碁の世界
    囲碁の世界に関わる話題です。(希少)
  • 季刊 邪馬台国
    四十年を越えて着実に刊行を続けている「日本列島」古代史専門の史学誌です。
  • 将棋雑談
    将棋の世界に関わる話題です。
  • 後漢書批判
    不朽の名著 范曄「後漢書」の批判という無謀な試みです。
  • 新・私の本棚
    私の本棚の新展開です。主として、商用出版された『書籍』書評ですが、サイト記事の批評も登場します。
  • 歴博談議
    国立歴史民俗博物館(通称:歴博)は歴史学・考古学・民俗学研究機関ですが、「魏志倭人伝」関連広報活動(テレビ番組)に限定しています。
  • 歴史人物談義
    主として古代史談義です。
  • 毎日新聞 歴史記事批判
    毎日新聞夕刊の歴史記事の不都合を批判したものです。「歴史の鍵穴」「今どきの歴史」の連載が大半
  • 百済祢軍墓誌談義
    百済祢軍墓誌に関する記事です
  • 私の本棚
    主として古代史に関する書籍・雑誌記事・テレビ番組の個人的な読後感想です。
  • 纒向学研究センター
    纒向学研究センターを「推し」ている産経新聞報道が大半です
  • 西域伝の新展開
    正史西域伝解釈での誤解を是正するものです。恐らく、世界初の丁寧な解釈です。
  • 邪馬台国・奇跡の解法
    サイト記事 『伊作 「邪馬台国・奇跡の解法」』を紹介するものです
  • 陳寿小論 2022
  • 隋書俀国伝談義
    隋代の遣使記事について考察します
無料ブログはココログ