新・私の本棚 西本 昌弘 邪馬台国論争 (日本歴史第700号) 補追 1/3
日本歴史 2006年9月号 吉川弘文館 2019/02/20 補充 2021/08/21 2024/04/16
私の見立て ★★★☆☆ 多大な労力に敬意 孤高の徒労か
*加筆再掲の弁
最近、Amazon.com由来のロボットが大量に来訪して、当ブログの記事をランダムに読み囓っているので、旧ログの揚げ足を取られないように、折に触れ加筆再掲していることをお断りします。
◯総論
本記事は、記念論文の使命で、論争史を回顧し今後の展開を想定するのでしょうが、所詮、当論争は、「九州説」「畿内説」に二分され、異なった使命感で熱烈に説かれていて、不倶戴天、何れかの陣営に属すると相手の論理が見えないのです。
西本氏は、畿内派視点で論じていて、以下示すように、筋立てが無理で。裏付けが追いつかず、ちょっと(つまり、めちゃめちゃの意です)お粗末です。
ただし、本誌の編集方針で、論拠のあやふやな記事は採用しないので、偏見、曲解の根拠を読み取れるようになっています。
*内藤・白鳥回帰の是非
ここで、氏は、古典的な内藤湖南、白鳥庫吉両氏(両先達)の論争を回顧し、倭人伝記事の理解を図るという生き方ですが、偉大な先人といえども、前提となる倭人伝記事への先入観が災いして、いきなり、引き返しようのない論説を立ててしまったため、後生に大きな軛(くびき)を遺したように見受けます。(国内史学界は、先達の後追いの隊列を構成しているので、そうなるのです)
当方は、両氏の深い学識と堂々たる知性を尊敬していますが、前提となる資料把握が整っていなかったという限界は如何ともし難く、今日、倭人伝理解の出発点とすることはできないと考えます。つまり、誌面の無駄なのです。
*方位 苦慮の辻褄合わせ~博物館の名物に
方位論は、所詮、想定里数で想定比定地に届かせるこじつけであり、いわば、辻褄合わせの屁理屈でしかないのです。もはや、博物館入りの骨董品であり、きれいに言うなら「レジェンド」(歴史遺物)です。
*道里 数字に弱い畿内派~補習必須
まず、「倭人伝」里程は、地域ごとにバラバラであり、「郡から狗邪韓国までは数倍の誇張、渡海旅程はかなりの誇張なのに、九州上陸後は実里程に近い」とする見方が提示されていますが、随分筋の通らない話です。
帯方郡近くで、「洛陽から指示があれば実測検証すべき旅程を六倍に誇張し、海の果てで、検証困難な旅程を実里数にする」とは理解に苦しみます。そもそも、当時実測困難だった海の果ての「実里数」は、誰がどうやって測ったのでしょう。(丁寧に言い直すと、古来「困難」とは、「事実上不可能」という意味です。念のため)
なぜ、当時としては、大変計算が困難な六倍なのでしょうか。「十倍」なら単位を「百里」から「千里」にするだけで、再計算不要。現代風なら、小数点を移動するのですが、倭人伝の一桁概数表示では、「百」から「千」へ「千」から「万」への単位の書き換えで良いのです。
五倍なら、単位の書き換えで「十倍」しておいて、数字部分を二で割るだけなので楽勝なのに、なぜ、わざわざ六倍なのか。もちろん、6.5倍は、当時不可能な計算になります。
数字に弱い人が、どうして無理な作り話に凝るのか。誰の知恵を借りたのかも不審です。大の大人が、受け売りは、情けないように思うのです。
*無理なこじつけ
実際の距離と言うなら、郡から狗邪韓国までの七千里と書かれている道里と、末羅国辺りから纏向までの地図上の距離は大差ないのですから、これを、ほぼ五分の一の千三百里と見るのは、どう考えても無理です(つまり、不可能です)。
その間は、当時、どう考えても、道路や港湾の整備がなく、牛馬がいないので騎馬移動ができないのを考えると、所要期間は、何倍にもなりそうです。
氏は、淀川水系運航は提案しても、そこまでの行程は示さないのですが、いくら魏使が「鈍感」でも、長期間の移動の方位や所要日数を体感できたはずで、終生、誤解し続けとは信じがたいのです(嘘だろうという趣旨です) 。
ついでに言うなら、帰国後の報告で、当然、日誌の提出を求められたはずですから、途中経過が知られなかったとは信じられないのです。
未完
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