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2024年4月28日 (日)

新・私の本棚 古代史検証4 飛鳥の覇者 推古朝と斉明朝の時代 三掲 2/2

監修 上田正昭 著者 千田 稔 文英堂 2011/4 第一刷
私の見立て ★★★★☆ 考察が潤沢な好著。ただし、図解は「無残な」でたらめ。 
 2022/04/09,04/11,2023/01/01,05/03, 2024/04/28

*加筆再掲の弁
 最近、Amazon.com由来のロボットが大量に来訪して、当ブログの記事をランダムに読み囓っているので、旧ログの揚げ足を取られないように、折に触れ加筆再掲していることをお断りします。

*「画餅」~根拠なき「夢想」疑惑
 重複気味に念押しすると、河水河口部は、毎年春先の凍結解消による氾濫で、茫々たる泥濘で、東夷海船の河水乗り入れは無謀である。河口部を大きく避けて上陸したとしても、以後、現地川船で河水に乗り入れと見るにしても、なぜ、京師である長安/大興でなく、東都/洛陽に入ったのか。一部に新説が流布しているようだが、一般読者に対して説明不足である。

 因みに、洛陽は、河水の支流である洛水の上流であるが、海船で乗り入れることが許されたかどうか不明である。長安に入るには、河水をはるばる撞関まで遡った後、支流である渭水に乗り入れる必要があり、海船で乗り入れることが許されたかどうか、さらに不明である。いずれにしろ、密入国に近い状態でどこまで辿り着いたのか、不審である。

 蛮夷は、少なくとも、いずれかの海津(しん)で、隋官人に来訪を申告し、入国許可と国内通行許可を得るのであり、河水河口部の無人の境地から不法侵入するものではない。蛮夷のものは、鴻臚寺と交信の上、事前に入国強化を得ているものであり、いきなり飛び込んでいくものではない。中国は、法と秩序の国家であるから、このような不法侵入が承認されることはない。

*合理的な推定~国使の行くべき「道」
 以上の難点を見た上で、九州北岸からを旅路を見なおすと、倭人伝以来周知の壱岐、対馬経由の半島への渡海/水行は、便船豊富で「銭」で雇えるし、上陸後は、古来内陸街道が常道、既知であったので、ここも何の迷いもない。
 方や、壱岐から転じて南岸西岸沖合航路は、以上説いたように、にわか作りに違いない倭船にとって、不案内で、とても行き着けるものではない。
 どちらを行くべきか、明白ではないだろうか。特に、出発点が、本当に内陸の飛鳥であれば、海の長旅には、恐怖しか感じなかったと思うのである。

*「新羅道」提言~安全、確実、迅速、低廉な経路
 復唱すると、新羅街道「新羅道」は、古来整備されていた官道であり、半島の嶺東を北上して竹嶺で小白山地を越え、下山して西に向かい、西岸海港に出て、以下、渡船で登州に至る長丁場だが、新羅にお任せである。
 山島半島の海津、登州上陸以降、内陸街道は、人馬を要する移動も宿泊も「銭」で賄える。安全、確実、迅速、低廉な経路であるから、挙って、蹈襲したと見るものではないか。
 倭と統一新羅の関係が険悪になれば、倭遣隋使の新羅国内街道通行が許されなくなる。もちろん、後年の遣唐使の大使節団も、同様に通行できないと思われる。それにしても、なぜ、後世の遣唐使が、寧波あたりを目指して東シナ海を遮那に無二横断したのか、誠に不合理で、不可解であるが、不可解な事項を論議するのは時間の無駄なので、ここで筆を置く。

 以上が、本図航路に対する異議であり、反論があればお受けする。

*隋書無視に疑問~台所事情の苦渋か
 氏の論議は、信頼すべき隋書を無視しているが、国書交換など、世上の遣隋使論に整合しない「隋書」俀国伝を無視したと思われる。「『日本書紀』の記事が事実とすれば」と書く氏の苦渋を察して、これ以上は深入りしない。
 舊唐書、新唐書どころか、古田武彦氏著作も参照していないが、以下同文。

                                以上

  追記:「隋王朝(7世紀)」の無残 (2022/04/11)
 ついつい、地図の疎漏の指摘で、精力と注意を削がれて、肝心なことを取りこぼし、書き漏らしたので、仕方なくここに追記するが、実は、一番無残なのは、この表現である。

_n_20220411203901 

 重要なので復習すると、隋は、一般に581~618年の期間存続したとされていて、別に、七世紀べったりではない。むしろ、七世紀の主要部は、唐にとって代わられているので、正直に書くなら、七世紀初頭と言うべきだろう。
 それにしても、隋代、グレゴリオ暦による世紀の数え方が、隋に届いていたと思えないので、「七世紀」の当否を煬帝の霊魂に問い質そうにも、飜訳/通訳の仕様がないのである。
 史学会には、当時の教養人に理解できない言葉や概念は避けよ、と言う箴言があると聞いている。それにしても、この失態は、一言で言えば、杜撰を越えて無残な誤記である。

 さらに言うなら、世紀の半ば過ぎの六百六十年代には、唐の征討軍により百済、高句麗が、相次いで撲滅され、この図は、全く無意味になっている。氏が、どういうつもりで本図を掲載したのかというと、単に、裴世清来訪時の諸国形勢を書きたかっただけではないのだろうか。と言わないと、何も言い訳ができないことになる。不確かな推定を、立派な地図にしてしまったために、アラが目立つのである。

 ついでに付記すると、「日本」国号が創唱されたのは、8世紀冒頭であり、7世紀を想定した地図に「日本」を表記するのは、非科学的な時代錯誤である。この点で更に減点したいが、最早本図に対する評価点は底をついているので、減点しようが無いのは残念である。

 と言うことで、氏は、同時代の国内古代史について、満腔の造詣を有していると想われるが、同時代の中国、朝鮮方面については、全く素人だと露呈しているそれにしても、氏の周囲に、誰も「助言と支持」を与える知恵袋はいなかったのだろうか。出版社の編集担当からの助言もなかったのだろうか。いかに「細瑾」とは言え、重大な「躓き石」があからさまで、勿体ないことである。

この項完

追記 2024/04/28
 近来、岡田英弘氏の至言に追従すると、中国正史は、中国の最高の教養人が、その時点の最高の読書人を読者として、厖大な知識、語彙を背景に、精魂こめて編纂したものであり、同時代の記事を適確に解釈するためには、同時代の読書人に近い知性と教養を要求されるのである。にも拘わらず、現代人、つまり、千年、千五百年、二千年後生の無教養な東夷が、限られた教養で解釈するのは、無法なのである。

以上

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