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2024年4月22日 (月)

私の本棚 51 水野 祐「評釈 魏志倭人伝」 4/10 補充 改頁

 雄山閣 新装版 2004年11月 (初版 1987年3月)
私の見立て★★★★☆ 『「倭人伝」は「唯一無二の史料』 2016/06/18 追記 2020/06/07 2021/07/17 2024/04/21

*加筆再掲の弁
 最近、Amazon.com由来のロボットが大量に来訪して、当ブログの記事をランダムに読み囓っているので、旧ログの揚げ足を取られないように、折に触れ加筆再掲していることをお断りします。

〇「鵜呑み」論 まくらに代えて
 本書は、何しろ大部の書籍であるから、手の届くところから、何とか咀嚼して、味わって飲み込み、消化するものである。
 鵜は、鳥類であって歯も舌もなく、川魚を囓りも味わいもせず丸呑みできるが、人は、歯で噛みしめ、噛み砕き、舌で味わい、匂いまで照顧して食するのである。その前に、ウロコや骨も内臓を取り除き、大抵の場合は、生食せずに、煮たり焼いたり調理、調味するのである。人間相手に、「鵜呑み」を言うのは、自身が「鵜呑み」の常習者だと物語っているのである。
 人は、決して、鵜の真似はしない。低級な比喩は早く撲滅したい。

-第二部 評釈篇 第一段 総序
*「倭人伝」事始め 「倭人在帶方東南」
 前置きに小見出し「倭人伝」の話をしたが、この小見出しが、陳寿の原本に、すでに書き込まれていたかどうかは、わからない。
 知る限り、「紹興本」に先行する旧版「紹興本」に小見出しは存在しない。
 念のため確認すると、「紹熙本」は、「紹興本」と共通した北宋刊本「咸平本」の良質写本に依拠している。「倭人伝」なる小見出しが、北宋刊本に存在していて、「紹興本」が取りこぼしたのを「紹凞本」が是正したのか、「紹興本」が正確に継承したのに対して、「紹凞本」が付け足したのかは、にわかに決めかねるところである。
*「紹凞本」所見 「坊刻の創成」~余談
 本「所見」は、「紹凞本」の由来を推測/確認するものであり、一部説かれている「坊刻」、つまり、官業でなく、民間事業に托したことを殊更批判していることに対する反論である。書誌学的事項に興味なければ、「紹熙本」の史料価値に影響を与えないとの趣旨を理解いただければ、深入りは不要である。
 南宋創業時に、北宋亡国時の「国難」を逃れて河南に逃亡し、再集結した天下一の英才が結集し、国富を傾けた経書、史書の「国家刊刻事業」の一環で、国史「三国志」として「紹興本」が刊行された。その際、南宋は、領内を広く捜索し、北宋「咸平本」の写本を呼集して、諸写本の異同を校勘し、最善の「咸平本」復元史料として「紹興本」を確立し、刊刻したのである。
*北宋咸平本の意義
 丁寧に言うと、北宋「咸平本」は、木版印刷により所定の部数が刊行されたが、皇帝以下、皇族、及び高官有司の蔵書として配布したのであるが、配付された刊刻本は、夫々の場で写本原本として起用され、言わば、それまでに発生していた異同を駆逐して、定本として統一を図ったものである。
 ただし、写本工程の宿命で、刊刻本から起こされた写本は、字数を重ねる毎に、次第に誤写が発生した。また、帝国中心部を離れた地域では、写本工の技術、教養が調わないために、高度な写本行程が確立できず、誤写が発生しやすかったとも思われる。刊刻本配付により、北宋が統一した天下に、それまでにない高精度の写本が普及したことは、北宋の重大な功績である。

                                未完

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