« 新・私の本棚 榊原 英夫「邪馬台国への径」 補 序論 | トップページ | 新・私の本棚 藤田 三郎 季刊「邪馬台国」第138号 唐古・鍵遺跡から見た邪馬台国 2/3 再掲 »

2024年4月 9日 (火)

新・私の本棚 藤田 三郎 季刊「邪馬台国」第138号 唐古・鍵遺跡から見た邪馬台国 3/3 再掲

 吉野ヶ里遺跡指定30周年記念シンポジウム 梓書院 2020年7月刊
 私の見立て ★★★★☆ 良心的で開明的 考古学の王道を示すもの  2020/11/07記 2024/04/09

*加筆再掲の弁
 最近、Amazon.com由来のロボットが大量に来訪して、当ブログの記事をランダムに読み囓っているので、旧ログの揚げ足を取られないように、折に触れ加筆再掲していることをお断りします。

*ゆるやかな共存と発展
 最近しみじみ思いますが、それぞれの地域社会は、自身が「世界」であり、『手足の伸びる範囲が「天下」』の時代が長かったはずです。ここで言う、「北和」、「南和」、「葛城」は、それぞれ、「なら盆地壺中天」から外界/下界につながる際に、別々の経路を持ち、異なる産物を採り入れ、それぞれの得失有無を、それぞれの市での売買、等価交換などを通じて補い合っていたはずです。

 互いのつながりが維持されれば、殺し合い奪い合う「乱」は起こりません。「乱」は、外敵の仕業でしょう。西方の山並は、長年に亘り「まほろばの里」を守る青垣であり、大和川水運や峠越えの不便は言えなかったはずです。

〇精神文化の謎
 文字のない時代の遺跡、遺物ですから、文字情報は残されていないので「文化」は存在しないはずです。まして、「精神文化」など、記録も何もない、後世人の夢想であり、考古学の埒外の呪文は控えた方が良いと思います。
 因みに、世界唯一の「文化」が実在したのが中国ですが、理解するには、中国語読み書きに通暁し、四書五経を諳んじることが要求されたので、文字の無い蛮人に伝わることはなかったのです。この点を理解しないと、古代史で意味のある論考はできません

*貧弱な言語思想
 それにしても、「日本ライズ」、「倭化」とは、口頭で伝えられたら、一向に理解できず、紙上で文字を見ても、何のことか理解の限界を超えています。まことにもったいないことです。
 まずは、当時、「日本」は、影も形もなかったことを肝に命じていただきたいものです。それとも、考古学では、日本列島上は、時代に関係無く「日本」と称するのでしょうか。「業界符牒」という事でしょうか。となると、素人は、口を挟めないということでしょうか。
 「日本ライズ」とは、「日が昇る(サンライズ)」という趣旨でしょうか。ちなみに、「英語で」Japan化することは、時として、乱暴にJapanizeというのですが、だからといって、この時代を日本ナイズというのは、愚の骨頂です。
 また、当時、漢字がなかったから「倭」と書いても発音できないのです。講演者として不用意です。原稿チェックは、しなかったのでしょうか。
 ふりがなも何も付されていないので、当日、どのように発音したのかわかりませんが、「わか」なら、聴衆は「若」と解するはずです。また、「倭」なる文字自体なかったのから、講師が「わ」なり「ちくし」なり「やまと」なり発音するのは、愚の骨頂です。

 以上、氏ほどの碩学が、うろ覚えの言葉で、子供の寝言みたいに「つたない」、聴衆に意味の伝わらない言い回しを、熱心な古代史研究聴衆の前で披露するのは、一種自業自得とは言え、いい笑いものです。ここに誌上掲載されたのは、本紙編集部が居眠りでもしていたのではないかと懸念されます。
 愚行は広まらないうちに是正すべきものです。氏の名声を穢さないように、率直な苦言を呈するものです。

◯まとめ
 講義自体を言うと、他で得られない大量の知識をいただいたので(用語の瑕瑾を除けば)絶賛するのです。
 特に、マスコミを掻き立てて世上を騒がしている、言うならば「纏向天動説」が、奈良盆地のごく一部の現象に過ぎないことがわかって、久しく伝統されている学会の王道に気づき、感動しました。それにしても、「唐古・鍵遺跡から」邪馬台国は見えないとは、痛快でした。

 差し挟んだ考察は、氏の講義で触発された夢想です。考証などできないから単なる思い付きです。

                                以上

« 新・私の本棚 榊原 英夫「邪馬台国への径」 補 序論 | トップページ | 新・私の本棚 藤田 三郎 季刊「邪馬台国」第138号 唐古・鍵遺跡から見た邪馬台国 2/3 再掲 »

倭人伝随想」カテゴリの記事

季刊 邪馬台国」カテゴリの記事

新・私の本棚」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« 新・私の本棚 榊原 英夫「邪馬台国への径」 補 序論 | トップページ | 新・私の本棚 藤田 三郎 季刊「邪馬台国」第138号 唐古・鍵遺跡から見た邪馬台国 2/3 再掲 »

お気に入ったらブログランキングに投票してください


2024年10月
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31    

カテゴリー

  • YouTube賞賛と批判
    いつもお世話になっているYouTubeの馬鹿馬鹿しい、間違った著作権管理に関するものです。
  • ファンタジー
    思いつきの仮説です。いかなる効用を保証するものでもありません。
  • フィクション
    思いつきの創作です。論考ではありませんが、「ウソ」ではありません。
  • 今日の躓き石
    権威あるメディアの不適切な言葉遣いを,きつくたしなめるものです。独善の「リベンジ」断固撲滅運動展開中。
  • 倭人伝の散歩道 2017
    途中経過です
  • 倭人伝の散歩道稿
    「魏志倭人伝」に関する覚え書きです。
  • 倭人伝新考察
    第二グループです
  • 倭人伝道里行程について
    「魏志倭人伝」の郡から倭までの道里と行程について考えています
  • 倭人伝随想
    倭人伝に関する随想のまとめ書きです。
  • 動画撮影記
    動画撮影の裏話です。(希少)
  • 古賀達也の洛中洛外日記
    古田史学の会事務局長古賀達也氏のブログ記事に関する寸評です
  • 名付けの話
    ネーミングに関係する話です。(希少)
  • 囲碁の世界
    囲碁の世界に関わる話題です。(希少)
  • 季刊 邪馬台国
    四十年を越えて着実に刊行を続けている「日本列島」古代史専門の史学誌です。
  • 将棋雑談
    将棋の世界に関わる話題です。
  • 後漢書批判
    不朽の名著 范曄「後漢書」の批判という無謀な試みです。
  • 新・私の本棚
    私の本棚の新展開です。主として、商用出版された『書籍』書評ですが、サイト記事の批評も登場します。
  • 歴博談議
    国立歴史民俗博物館(通称:歴博)は歴史学・考古学・民俗学研究機関ですが、「魏志倭人伝」関連広報活動(テレビ番組)に限定しています。
  • 歴史人物談義
    主として古代史談義です。
  • 毎日新聞 歴史記事批判
    毎日新聞夕刊の歴史記事の不都合を批判したものです。「歴史の鍵穴」「今どきの歴史」の連載が大半
  • 百済祢軍墓誌談義
    百済祢軍墓誌に関する記事です
  • 私の本棚
    主として古代史に関する書籍・雑誌記事・テレビ番組の個人的な読後感想です。
  • 纒向学研究センター
    纒向学研究センターを「推し」ている産経新聞報道が大半です
  • 西域伝の新展開
    正史西域伝解釈での誤解を是正するものです。恐らく、世界初の丁寧な解釈です。
  • 邪馬台国・奇跡の解法
    サイト記事 『伊作 「邪馬台国・奇跡の解法」』を紹介するものです
  • 陳寿小論 2022
  • 隋書俀国伝談義
    隋代の遣使記事について考察します
無料ブログはココログ