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2024年5月28日 (火)

新・私の本棚 古田史学論集 24 正木裕 改めて確認された「博多湾岸邪馬壹国」補充 3/3

古代に真実を求めて 俾弥呼と邪馬壹国 明石書店        2021/03/30 
私の見立て ★★★☆☆ 堅実な論議が学界ぐるみの時代錯誤の側杖(そばづえ)を食っている。 2022/05/16, 11/10 2024/05/28

*加筆再掲の弁
 最近、Amazon.com由来のロボットが大量に来訪して、当ブログの記事をランダムに読み囓っているので、旧ログの揚げ足を取られないように、折に触れ加筆再掲したことをお断りします。代わって、正体不明の進入者があり、自衛策がないので、引きつづき更新を積み重ねています。

*関連資料評
Ⅱ 唐長安城および洛陽城と東アジアの都城 王仲殊 中国社会科学院考古研究所
 掲載誌 東アジアの都市形態と文明史 巻21 ページ411-420   2004-01-30
 中国古代の長安や洛陽などの都は「都城」と称されるが、1960-70年代に日本の研究者は改めて「宮都」という用語を作り出し、これを以て日本の藤原京・平城京・長岡京・平安京を呼ぶ。80年代以降、一部の研究者は、日本の都が一貫して羅城をめぐらせないので、「都城」という用語をそれらに使えないと主張し、専ら「宮都」の用語で藤原京・平城京・長岡京・平安京を呼ばなければならないと強調している。
 ところが、『日本書紀』の記載によれば、天武天皇十二年(683年)十一月に「凡そ都城・宮室は一処に非らず、必ず両参を造らむ」という詔がある。又『続日本紀』桓武天皇延暦三年(784年)六月の条に「都城を経始し、宮殿を営作せしむ」という記事もある。つまり当時の日本の朝廷の規定により、藤原京・平城京・長岡京・平安京などの都がすべて「都城」と呼ばれるのは疑いもない事実である。それゆえ、「宮都」という新しい用語に慣れない私はやはり、中国の長安・洛陽などの都城と同様に、日本の藤源京・平城京・長岡京・平安京をそのまま「都城」と呼ぶことにする。

*コメント
 時制が不確かであるが、要は、王仲珠氏見解は、国内史家の言う「宮都」は古代史用語として「不適切」ということである。言い回しは柔らかであるが、其の実は、決然たる否定と見える。

 因みに、「羅城」を巡らしていなければ「都城」と言えないというのは、恐らく、「国内」基準であり、素人目には、根拠不明の強弁と見える。中国基準では、「國邑」は、城壁で囲まれていなければならない、つまり、そうでなければ、侵入者を排除できないので、生存できないというのが当然であるが、「倭人伝」は、倭人の國邑は、必ずしも城壁で囲まれていないと認めているから、上記は必須ではないのは明らかである。

 その点を、王仲珠氏は(日本)国内史料を参照しつつ指摘しているのだが、国内史学界は、頑冥で耳を貸さないようである。

◯本件総評
 正木氏が、本稿で提示された「卑弥呼の宮都」は、率直に言って、国内史学界に巻き込まれて迷走しているようである。
 まず、本件は三世紀記事で在るから、時代相応に、つまり、中国史学用語で解釈すべきである。
 世上、「倭人伝」で、「女王之所都」は「女王の都とする所」と解されているが、正史「倭人伝」で東夷蕃王「都」は場違いであり、「女王之所」が妥当である。「宮都」自体、二十世紀に発明された六世紀対象の造語で在るから、当然、三世紀に波及できない。また、卑弥呼居処は「都城」であったと証されていない。

 種々考察したが、卑弥呼「宮都」は、二重の錯誤である。と言うことで、正木氏が採用した「卑弥呼の宮都」と言う言葉は、重ね重ね不合理であり、総じて撤回された方が良いと思うものである。理由は、以上で説明を尽くしたものと思う。

*用例批判
 参考までに、「中国哲学書電子化計劃」検索で、「宮都」らしき用例は、二例である。
 用例があるではなないか」と声がありそうだが、古典書以来僅か二例で、しかも、正史でなく権威の乏しい文献であるから、三世紀時点には、典拠として起用されていなかった証左である。

 一例目は、とかく疎漏の目立つ「御覧」所引であり出典正史に見当たらない。出典があれば用例となるから、出典不明なのは「御覧」でしばしば見られる空引用の証左である。
《太平御覽》 《咎徵部三》 《風》
《陳書》曰:陳文帝天嘉三年…[改行]又曰:天嘉六年…[改行]又曰:后主至德年…明年,陳亡[改行]又曰:隋文帝開皇中,宮都大風,發屋拔木
 「御覧」所収「陳書」に、後世の隋文帝記事があるのは、ここでは批判しない。隋文帝都城大興城(長安)全体で、建屋が飛んだとか、木が根こそぎとか、大災害で、「文帝獨孤皇后干預政事,后宮多有濫死,又楊素邪佞」と不穏な政情を招いただろう。いずれにしろ、これら記事が陳書のどこにあるのか、見つからなかった。
 いずれにしろ、「御覧」は、全体として分量、紙数を積み重ねることを至上命令としていたと見え、取材で得られた史料を嚴に批判して「ジャンク」や「フェイクニュース」を峻別するのを怠っているから、正史などの精選史料と同列に論ずるのは、大変な間違いなのである。

 二例目は、下記を「三十六宮都是春」と解すのは不適当で、「三十六宮、都(すべて)是春」が妥当である。
 《朱子語類》 [金] 1270年 《程子之書一》 『天根月窟閑來往,三十六宮都是春』
 先の「女王之所都水行...」を、「女王之所」、「都(すべて)水行...」と解すのと同様の文型と見える。
 「宮都」なる成語が当たらない以上、それが順当な解釈であろう。

 当史料も、権威を備えているかどうか、慎重な検証が必要であるが、文意を解する限り、天の「三十六宮」』は、天が順次運行して健(すこ)やかに春を迎える(天行健なり)の趣旨と見える。つまり、ここに述べた解釈で意を尽くしていると見える。

 して見ると、「宮都」なる漢語は存在しないから、第一例も、「宮すべて」の意味で書かれているのかも知れない。
 要するに、「宮都」は幻影である。

 用語検索は、的が外れて転んでも、ただでは起きないのである。
                               以上

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