« 新・私の本棚 番外 「今どきの歴史」 2019/07 不思議な視点と視覚 2/3 | トップページ | 新・私の本棚 番外 NHK「誕生 ヤマト王権~いま前方後円墳が語り出す」4/4 三訂 »

2024年5月31日 (金)

新・私の本棚 番外 「今どきの歴史」 2019/07 不思議な視点と視覚 1/3

私の見立て★★★★☆ 但し、ホラ話は除く          2019/07/24 補追 2024/05/31
百舌鳥・古市古墳群(大阪府) 「最辺境」社会の合理性

*加筆再掲の弁
 最近、Amazon.com由来のロボットが大量に来訪して、当ブログの記事をランダムに読み囓っているので、旧ログの揚げ足を取られないように、折に触れ加筆再掲したことをお断りします。代わって、正体不明の進入者があり、自衛策がないので、引きつづき更新を積み重ねています。

□総評
 今回の題材は、国立歴史民俗博物館松木武彦教授(日本考古学)(以下、歴博、論者との略称ご免)のご高説の紹介らしいのですが、記者の史観が混じり込んでいるか不明なので、見当違いな批判があればお詫びする次第です。

*全知全能幻想か
 論者の専門は国内考古学で、普通、(日本)列島内遺跡、遺物に関するご高説と思いましたが、堂々と「世界史的激動」であり、圏外かと危惧します。

 記者の言葉ですが、「当時、寒冷化で地球環境が悪化し、世界的にも大転換期だった」と時代錯誤の神がかりが述べられ、失礼ながら、「当時」の列島内遺跡、遺物にどう露呈しているか不思議です。論者の提言かどうかは別としても、とんでもない空想がかたられているという印象を禁じ得ません。
 素人目には、法螺はほどほどにしないと信用をなくすと言いたいのです。

□誤解招く「世界」通観の書き出し
 そのあと、豪快に世界史通観ですが、首を傾げっぱなしです。論者が博識を披瀝しても、説明は概してずさんで、日本考古学には的外れでしょう。世界」的と大風呂敷を広げたものの、南北アメリカ、アフリカ、そして、インド亜大陸、南極大陸、オーストラリア大陸、等々には何も触れていません。言わずもがなで不可解です。

 そのあと、「東夷が漢墓制を真似た」と急に重箱隅になり不首尾です。「漢」でも大規模墳墓に豪華副葬品を収めた皇帝もあれば、文帝のように薄葬を命じた皇帝もいます。漢を中原政権と捉えるなら、魏創業者曹操が後漢皇帝墓の盗掘を目撃(実施)したことから、薄葬を遺命による国是とし、墓所は秘匿されたので、東夷が真似ようにも真似られなかったのです。

 いやはや、杜撰のてんこ盛りです。言わない方が良い余談です。

*世界崩壊の津波の余波
 「秩序が崩れて集団間の競争が激化しました」と無責任に言い放つのですが、どの世界、いつの話で、それは、どのような遺跡、遺物で立証されるのでしょうか。それとも、ただのほら話、「冗談」なのでしょうか。

 論者は、神がかりの筆致で、当時、つまり、紀元四世紀あたりの「世界」を描写し、それが、列島に影響を及ぼしたと言いますが、列島の地域支配者が、ヨーロッパ等の状勢は論外として、中原墓制の変化を知り得たか不思議です。
 まして、列島に及んだ余波の結果、銅鐸が廃棄されたというのも、意味不明です。何か、廃棄儀式の能書きでも発掘されたのでしょうか。

*破格の論議
 『「劇的」な変化が連続しておこった』とは、世にも不思議な言い回しで、「大状況」も、「状況」の意義を錯誤の上に、何を「大」と言うのか不可解です。

*ご冗談でしょう
 全体として、「ご冗談でしょう」です。脈絡のないほら話は、逆効果です。記者は納得したのでしょうが、歴博の日本考古学とは、根拠も何もないまま、素手でこのような夢想を紡ぎ上げるのが専門なのかと言いたいところです。

■解答なき問題
 ここで、読者に問題が投げつけられ、意味不明で解答がないのです。
 「世界」が、現代語の全地球、全宇宙なのか、戦国時代の「天下」なのか、盆地世界に閉じ込められた井蛙の井戸なのか、意味が不明では、凡人には応答できません。

                                未完

« 新・私の本棚 番外 「今どきの歴史」 2019/07 不思議な視点と視覚 2/3 | トップページ | 新・私の本棚 番外 NHK「誕生 ヤマト王権~いま前方後円墳が語り出す」4/4 三訂 »

毎日新聞 歴史記事批判」カテゴリの記事

新・私の本棚」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« 新・私の本棚 番外 「今どきの歴史」 2019/07 不思議な視点と視覚 2/3 | トップページ | 新・私の本棚 番外 NHK「誕生 ヤマト王権~いま前方後円墳が語り出す」4/4 三訂 »

お気に入ったらブログランキングに投票してください


2025年3月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31          

カテゴリー

  • YouTube賞賛と批判
    いつもお世話になっているYouTubeの馬鹿馬鹿しい、間違った著作権管理に関するものです。
  • ファンタジー
    思いつきの仮説です。いかなる効用を保証するものでもありません。
  • フィクション
    思いつきの創作です。論考ではありませんが、「ウソ」ではありません。
  • 今日の躓き石
    権威あるメディアの不適切な言葉遣いを,きつくたしなめるものです。独善の「リベンジ」断固撲滅運動展開中。
  • 倭人伝の散歩道稿
    「魏志倭人伝」に関する覚え書きです。
  • 倭人伝道里行程について
    「魏志倭人伝」の郡から倭までの道里と行程について考えています
  • 倭人伝随想
    倭人伝に関する随想のまとめ書きです。
  • 動画撮影記
    動画撮影の裏話です。(希少)
  • 古賀達也の洛中洛外日記
    古田史学の会事務局長古賀達也氏のブログ記事に関する寸評です
  • 名付けの話
    ネーミングに関係する話です。(希少)
  • 囲碁の世界
    囲碁の世界に関わる話題です。(希少)
  • 季刊 邪馬台国
    四十年を越えて着実に刊行を続けている「日本列島」古代史専門の史学誌です。
  • 将棋雑談
    将棋の世界に関わる話題です。
  • 後漢書批判
    不朽の名著 范曄「後漢書」の批判という無謀な試みです。
  • 新・私の本棚
    私の本棚の新展開です。主として、商用出版された『書籍』書評ですが、サイト記事の批評も登場します。
  • 歴博談議
    国立歴史民俗博物館(通称:歴博)は、広大な歴史学・考古学・民俗学研究機関です。「魏志倭人伝」および関連資料限定です。
  • 歴史人物談義
    主として古代史談義です。
  • 毎日新聞 歴史記事批判
    毎日新聞夕刊の歴史記事の不都合を批判したものです。「歴史の鍵穴」「今どきの歴史」の連載が大半
  • 百済祢軍墓誌談義
    百済祢軍墓誌に関する記事です
  • 私の本棚
    主として古代史に関する書籍・雑誌記事・テレビ番組の個人的な読後感想です。
  • 纒向学研究センター
    纒向学研究センターを「推し」ている産経新聞報道が大半です
  • 西域伝の新展開
    正史西域伝解釈での誤解を是正するものです。恐らく、世界初の丁寧な解釈です。
  • 資料倉庫
    主として、古代史関係資料の書庫です。
  • 邪馬台国・奇跡の解法
    サイト記事 『伊作 「邪馬台国・奇跡の解法」』を紹介するものです
  • 隋書俀国伝談義
    隋代の遣使記事について考察します
  • NHK歴史番組批判
    近年、偏向が目だつ「公共放送」古代史番組の論理的な批判です。
無料ブログはココログ