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2024年5月28日 (火)

新・私の本棚 石井 謙治 「古代の船と航海の歴史」 再掲 1/2

石井 謙治 「古代の船と航海の歴史」 歴史読本臨時増刊 「渡来人は何をもたらしたか」新人物往来社 1994年9月刊
私の見立て ★★★★★ 当記事に限定 瑕瑾ある卓見 2020/11/12 2024/05/28

*加筆再掲の弁
 最近、Amazon.com由来のロボットが大量に来訪して、当ブログの記事をランダムに読み囓っているので、旧ログの揚げ足を取られないように、折に触れ加筆再掲したことをお断りします。代わって、正体不明の進入者があり、自衛策がないので、引きつづき更新を積み重ねています。

▢はじめに
 本書は、新人物往来社が、斯界先賢の寄稿、ないしは、刊行物引用によって、特集テーマに関する総合的な定説構築を図ったものと見えます。「臨時増刊」特集各号は、古代史関係で多数の好著を輩出し貴重な情報源となっています。この点、星五つ、本特集も同様、賛嘆置く能わざる、と言う感じです。

◯石井 謙治 「古代の船と航海の歴史」
 当稿は、目下審議中の「倭人伝」行程道里論、特に、『半島陸行に対する「和船史研究家」石井謙治氏の否定見解』に対して、石井氏が、ご自身の豊富な学識に背くように専攻分野中心の偏見で史料解釈しているのを捉えて異論を呈するものです。
 「魏志倭人伝」記事考証で「日本列島と大陸間」と述べていて、素人目には、地理概念の調整が必要と見えます。九州北部から半島内陸の帯方郡への経路が問われる/問われているのであり、殊更、雑然と視野を広げて、説きようのない難題を拵(こしら)えて、手近な解決を水平線に押しやって、解決を困難にするべきではないと思われるのです。

*技術考証
 当時の船体の技術解明において、六世紀前後と見られる大型「複材剥舟」遺物は、所詮、倭人伝の三世紀後であり時代考証不適当と見えます。
 同誌には、三世紀から五、六世紀にかけて造船技術の進歩がなく、むしろ後退したとの憶測が説かれていますが、その間「大陸」交流が断絶したわけではないので、長期の技術停滞/後退は信じがたいのです。造船技術は、大規模な事業からの注文を必要とするので、理由もなく衰退することは考えられないのです。定期的な造船が行われていれば、技術は世代を越えて継承されるのであり、その間、近場の小振りの船の造船も続くはずであり、衰亡と減退とは相容れないでしょう。
 素人が納得できるように、根拠を示していただけると幸いです。

 その後、準構造船考察と国内史料依拠の七、八世紀軍事作戦の裏付けを進め、筆に勢いがありますが、三世紀の渡海船構造談義と大きく隔絶しているのです。

*大軍派遣の「考証」
 例えば、斉明四~五年(658~9)の軍船180隻(艘)蝦夷出兵、天智元年(662)の軍船170艘百済派遣、天平宝字五年(761)の新羅侵攻作戦用394艘造船」と巨大な数字が連発されますが、架空のホラ話の感が否めないのです。どのように派兵計画を構想し、関連工事を推進し、兵員を呼集し、派兵を実現したとして、以後船体はどう活用されたのか、「画餅」でなければ、首尾一貫して記録するものではないでしょうか。
 誰かが基本構想を立て、誰が、全体図から明細図を書いて各担当部隊に配布し、そのような広大で込み入った造船計画を統御したのか、人材育成、技術移管の面だけ見ても、大変疑問が残ります。
 ということで、以上は、書紀編者が筆を嘗めた虚構と見えます。これだけの字数を書き立てるのに、別に、汗一つ書かなかったでしょう。
 八世紀末の平安京遷都後には、要地の造船所に所定の技術者が配置されたでしょうが、「ローマは一日にして成らず」の成語通り、所望の予算を継続して費消しても、体制作りには、五十、百年を要すると見えます。

*時代背景考証の試み~素人の素人考え
 そもそも、7世紀中葉とされている、北関東から発して直近とみえる「蝦夷」征夷に多数の軍船を催すのは、小振りの沿海船行なら、「画餅」と言っても「一口小餅の盛り合わせ」の類いとみえ、見かけ倒しとみえます。相手とみえる「蝦夷」は、当然、多数の軍船をもっているわけではないと見えるので、船戰(ふないくさ)はないから、兵員の陸上移動が困難な事情があったのでしょうか。何とも、趣旨不明、不可解です。どの道、現地で軍務を行うには、大量の食糧補給が必要であり、やたらに/やみくもに兵員を送り込んでも、何の戦にならないと思われます。

 これに並行したとみえる7世紀中葉の百濟への軍船派遣は、元来、筑紫の専任とみえますから、北関東方面と別ですから、好きなだけ盛ることが出来たとしても、せいぜい、一船辺り乗員、兵員合わせて数十人止まりとみえ、麻布、麻縄を大量に造作したとして、何をしに/何を得ようとして百濟に出向いたのか、誠に奇異です。
 百濟は、黄海を隔てて先進の中國造船業を利用可能であり、大型の帆船を調達することが出来たので、なぜ、交通不自由な南「馬韓」を越え、さらに、未通の海峡越えで、わざわざ小振りの倭船を求めたか不思議です。加えて、高句麗、新羅が敵であれば、陸戦勝負が大勢とみえるので、ひ弱な倭船は、ますます出番がありません。
 新羅とは、三世紀辰韓斯羅国時代以来交流があったため弱小な蕃国と見下していたとしても、侵攻談議の出ている時代は、嶺東統一後の新羅であり地域最強とも言える軍事大国であり、黄海岸では南北大国を押しのけて楔を打ち込むように海港を確保していたのであり、もはや、気軽に征伐できる相手ではなくなっていたのです。
 して見ると、百濟派遣から百年を経た今更、わざわざひ弱な軍船を造成して侵攻するなど、無謀とみえるのです。計画倒れで、造船、徴兵を中止したのは、天の恵みとみえます。
 以上は、当ブログ筆者にとって、圏外の時代なので、素人くさい思いつきを連ねているのではないかと恐縮ですが、氏は、和船専門史家の務めとして、同時代の時代考証を行い、大計画群が砂上の楼閣か、実質の裏付けがあるか、論考の必要があると見受けます。

◯倭人伝行程道里考察~誤解釈の確認
 氏は、中国史書である「倭人伝」の読解に於いて、ご自身の専門分野の領域拡大のために勝手読み(誤解釈)していると見えます。

 後世の遣唐使船が、ある時期から東シナ海越えの冒険航海になったのを見て、『それだけの造船技術があったのなら、「北路」は半島西岸沖合航路であった』と決めつけて、ついには、『堅実確実な半島内陸行程と目前の山東半島への軽微な渡船とみえる「新羅道」』まで遡って、同様の冒険航海と決め付けるのは、時代錯誤の牽強付会(誤解釈)です。

                                未完

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