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2024年6月 8日 (土)

新・私の本棚 番外 NHKスペシャル よみがえる邪馬台国 全三回 3/5 再掲

 番組放送年 1989年 NHKオンデマンドサービス(有料)で視聴可能
 私の見立て★★★★☆ 必見    2019/01/13   補充 2020/03/11 2024/06/07

*加筆再掲の弁
 最近、Amazon.com由来のロボットが大量に来訪して、当ブログの記事をランダムに読み囓っているので、旧ログの揚げ足を取られないように、折に触れ加筆再掲したことをお断りします。代わって、正体不明の進入者があり、自衛策がないので、引きつづき更新を積み重ねています。

よみがえる邪馬台国 第二回 追跡・倭国の大乱
*冗談半分
 この回は、仰々しく二千年の眠りから覚めた吉野ヶ里王国、などと、前振りをして開始します。NHKらしからぬ空騒ぎです。
 「倭」「國」「大」「亂」の屏風を背景に議論されますが、当時は慎重で、「倭人伝」に「倭國大亂」と書いてあったなどとは言いません。典拠は「中国史料」と言いよどんでいますが、「倭人伝」は、ほぼ唯一の資料としたから、よくよく聞けば、正確な発言になっています。但し、典拠が笵曄「後漢書」東夷列伝倭条と言わないのは、天下の公共放送の教養番組としては、不出来です。
 当時との見解として、鉄鏃の戦闘時の優位点は、限定的であり、とても決定的でなかったという所に落ち着いて冷静です。

◯不毛な人口論/建設的な異論~私見
 番組中で、興味深いのは、こうした「天下大乱」を左右したのは、それぞれの勢力の人口だったとする判断です。ちと、安直ではないでしょうか。
 似た発言として、最近の新聞報道で蔓延る(はびこる)、スポーツの勝負は体格、体力(フィジカル要因)で決まるとする不気味な風潮があります。体格、体力の数値は、計量可能というものの、短期間の努力で強化できるのは、筋力、そして、それを支える呼吸器、循環器なので、下馬評で叩かれてもどうしようもないのです。スポーツには、体格、筋力で勝負がつくものもあるでしょうが、それなら、身体検査でメダルを決めれば良いのです。大抵のスポーツは、技術、戦略、そして、気力まで含めて競われているのです。いや、単なる例え話ですが。

 余談はさておき、当番組は、推定した勢力範囲内の推定した「人口」を、あたかも確定したもののように図示して勝敗を決めつけていますが、余りに軽薄です。往々にして、歴史上の敗者は、自滅した例が多いのです。
 憶測でしかない、浅薄な数値データを安直に採り入れるのは、子供じみていて、感心しないのです。

*倭人伝の精確さ-精確な検証

 ちなみに、三世紀当時、「倭人」世界で、当てになりそうなのは、對海國、一大国、末盧国、伊都国の行程上の四ヵ国の「戸数」であり、他に書かれている奴国、投馬国の「戸数」は、数万戸という途方もない数字である上に、この二国は、行程外の遠隔地で事情が不明なので、当てにならないと明記されているので、全国七万「戸」は、何とも、参考にならないのです。
 その上、四ヵ国の戸数は、あくまで、各戸に所定の耕作地を割り当てるという中國土地制度のものであり、後世日本国内で施行されていた「成人男子、女子、それぞれに口分田を与える」と言う制度ではないので、これまた、参考にならないのです。

 ちなみに、帯方郡に対して「戸数」を申告するという事は、各戸から徴税して帯方郡に上納することを想定しているものであり、倭人には通貨制度がないので、それは、言わば七万戸相当の「米俵」の山を納入することを示しています。そのような大量の積み荷を、海峡を越えて、狗邪韓国の海岸に届けることなど不可能ですが、先ずは、輸送可能と言われかねない行程四ヵ国の戸数を、各国戸籍に基づいて申告し、さらに、對海國、一大国は、痩せた田地しかなく、他国の支援で餓死を免れているという泣き言で、免税を勝ちとっていたものと見えます。
 何しろ、狗邪韓国から末羅国の間は、「水行」と言っても、並行する陸路がないので、街道として無効と明記されている上に、倭地の「禽鹿径」は、荷車の通れない論外の道と明記されているので、物納不可能とだめ押ししているのです。
 ちなみに、倭人伝に虚構を求める論者は、「倭人」の総戸数を十四万戸とこじつけている論義がありますが、以上の「真意」を取りこぼしている拙攻であり、ここでは、論義しないことにしています。
 さらに重大なのは、「倭人」は、牛馬の労役がないので各戸の耕作能力が貧しいのも明記されているので、結果として、四ヵ国の「戸数」は、国力、つまり、担税力の指標として役に立たないとわかるのです。
 後の議論にも出て来るでしょうが、「魏志倭人伝」の編纂にあたって、陳寿は、「倭人」の地は、郡を去ること万二千里とか戸数七万戸とか、公孫氏が報告していても、半島南方の州島、小島であって、各国数千戸程度の國邑でしかない上に、産物に乏しい「痩せ地」であることを明示しているのであり、二千年後生の無教養な東夷は、史官の真意を汲み取った上で、字句の解釈にあたるべきなのです。

*西域大国の肖像 2024/06/16
 裴注で補追された魚豢「魏略」西戎伝に登場する万二千里の果ての大国は、六畜(牛、馬、羊、鶏、狗(食用犬)、猪(豚))全てを豊かに算出し、法田(ホータン)と違って「玉」こそ産しないものの貴石、準宝石に富み、色彩豊かな羊毛糸を多用した絨毯織が盛んで、さらには、中国産の絹織物を解(ほぐ)して、特産で在る野生繭の糸や色鮮やかな羊毛糸と織り交ぜた多彩な「水羊毳」なる特産物を「海西布」と称して商うなど、まことに、全土悉く宝の山と言うべき大国であり、国内には、金貨、銀貨が流通していて、南方海産の珊瑚、玳瑁を始め、ここには書ききれない多彩な品目を商い、しかも、広大な国土に街道を張り巡らして、文書行政が完備している法治国家であり、当然、皮革紙に横書きする文字大国であるなど、東夷と対比すれば、燦然たる記録が用意されていたのですが、陳寿は、恐らく、そのような漢代西夷事績を明示すると、曹魏明帝が誇らしく遺詔を書き残した「倭人」が色褪せるので、西域での新規蛮夷の招請という事績に厳選すると、西域における曹魏の実績は皆無に近いことを露呈しないために、空疎な「西域伝」を割愛したものと見えます。他の場所でも触れていますが、魏略「西戎伝」の佚文ならぬ善本を熟読すれば、陳寿の割愛に同意できるものと見ています。

 それにしても、奈良盆地に「倭人」政権を主張される方は、纏向遺跡に中国制の土地制度の遺跡を発掘されているのでしょうか。あるいは、中国式の戸籍簡牘を発掘しているのでしょうか。来訪、検察したはずの帯方郡士人は、七万戸、あるいは、十四万戸の大国を実見したとして、寛容極まる免税を許可しないでしょう。

*北枕の台頭

 興味深い発言は、墓制の地域ごとの違い、俗に言う地域性であり、それぞれの地域政権に地域葬制が整っていた裏付けとなります。俗に、これを地域「文化」圏と言いますが、「文化」とは文書によって継承、展開されるものであり、文字のない時代は「風俗」圏とでも呼ぶしかないところです。
 それはさておき、葬制の「枕」が、今日の近畿圏と中国地方では、北枕であり、北部九州と四国では、東西枕になっていたというのは、意義深い指摘です。結局、北枕が全国制覇したという趣旨なのでしょうか。

*纏向の飛び地
 後に発掘される纏向の大型建物は、その敷地が、東西基線で縄張りされたとされていますから、これは、東西枕風俗に属するものであり、後の飛鳥時代以降の大型建物が、南北基線で縄張りされていて北枕風俗と見えるのと、別の風俗圏に属していたことになります。

 先に挙げた遺跡地図に現れてないということは、纏向遺跡を構成した勢力は、一時的な東西風俗であり、飛び地のようなものであったかと思われます。

                              この回完

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