資料紹介「唐會要」 其の1 概論 再掲
2014/01/29 再掲 2024/06/05
*加筆再掲の弁
最近、Amazon.com由来のロボットが大量に来訪して、当ブログの記事をランダムに読み囓っているので、旧ログの揚げ足を取られないように、折に触れ加筆再掲したことをお断りします。代わって、正体不明の進入者があり、自衛策がないので、引きつづき更新を積み重ねています。
◯旧ログ再掲のお断り
当記事は、なにしろ十年前の拙作ですので、再掲する気はなかった、と言うか、完全に忘れていたのですが、旧ログを総浚えしている動きがあるので、念のため、点検して、再掲しているのです。
*はじめに
*はじめに
まずなにより、唐會要は、史書として書かれたものではないので、史実に関する厳密さに欠けることは心得ておくべきでしょう。
中国の分類によれば、「政書」と呼ばれる資料群に属するものであり、「政書」は、その編纂形態により、各王朝ごとに分割記述された「斷代會要體」と通史として記述する「通代會要體」とに大別されます。
言うまでもなく、「唐會要」は、唐王朝について記述された「斷代會要體」です。一方、「通典」、「通志」は、政書の中で、「通代會要體」に分類されます。
つまり、「唐會要」は、「通典」、「通志」と同様の性質を持った資料です。
「唐會要」は、今日伝えられている形としては、清朝時に編纂された「四庫全書」収録のものが規範となると思われます。
続いて、其の「倭国」、「日本國」記事ですが、「旧唐書」と比較して、人名の書き誤りを含めて、誤伝の多いものになっています。
元々の資料に誤りが多かったのか、継承転記の際の誤りかはわかりませんが、記事の信頼性は大きく損なわれていると考えます。
従って、全書百巻に及ぶ其の全貌が、宋時代の編纂時から、四庫全書収録まで、遺漏無く伝えられたものではないと思われます。
*編者紹介
ここで、維基百科に基づき編者王溥の履歴を確認します。
王溥(922-982年)、字齊物、諡文獻は、五代後漢乾祐元年(948)科挙状元(進士第一位)となり秘書郎に任官し、五代後周太祖、世宗、恭帝の三代の宰相を勤め、北宋太祖が幼帝恭帝から禅譲を受けて宋朝を創立するのを支持したため、太祖の下で宰相を勤めた。
ただし、北宋太祖趙匡胤は、皇帝として親政し、宰相の実権を奪ったので、王溥は、自宅に所蔵した万巻の蔵書を元に、専ら史書の編纂に当たったと云うことである。
乾德二年(964年)宰相を辞し、太平興国七年(982年)死亡。
以上の経歴から見て、秘書郎として任官した上に、長く宰相の職責にあったので、唐代以来の実録、起居注などの公式資料の写本を入手して、自宅に所蔵することも可能であり、著作に大いに活用したものと思われます。
又、それら資料は、王溥の死後は、王溥の著作と共に継承され、それら資料が旧唐書などの史書編纂に利用されたものと思われます。
以上、「唐會要」の記述が、「旧唐書」に幅広く利用されていると共に、王溥が典拠として参照した資料を「旧唐書」編者が参照利用したと思われます。このため、類似した記述が散見されるのでしょう。
なお、「唐會要」は、テキスト全文が維基文庫に収録されていますが、清朝四庫全書収録の「唐會要」の影印版と比較すると、文字の異同だけでなく、「倭國」記事の建中元年、貞元十五年、永貞元年の三項が脱落しているのは、テキストとして利用する際には注意が必要です。
維基文庫は、ボランティアの絶大な努力によって、膨大な原典がテキスト入力されているものです。なにぶん、活字印刷物の読み取りと異なって、OCRの助けの殆ど得られない手仕事であるので、万全でないことは仕方ないことですが、一方、そのような限界を承知の上で維基文庫のテキストに依存して論考することも、また、ある程度仕方ないことなのでしょう。
以下、短評に続く
一部修正 (2014/1/29、6/30)
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