« 今日の躓き石 毎日新聞スポーツ面の「リベンジ」再来 順当な番狂わせか | トップページ | 資料紹介「唐會要」 其の1 概論 再掲 »

2024年6月 5日 (水)

資料紹介「唐會要」其の2 短評と記事紹介 再掲

 2014/01/29  再掲 2024/06/05

*加筆再掲の弁
 最近、Amazon.com由来のロボットが大量に来訪して、当ブログの記事をランダムに読み囓っているので、旧ログの揚げ足を取られないように、折に触れ加筆再掲したことをお断りします。代わって、正体不明の進入者があり、自衛策がないので、引きつづき更新を積み重ねています。

*史料短評
 「唐會要」記事については、以下の短評を記すのににとどめます。
 「倭國」は、冒頭に、「在新羅東南」と書かれているので、九州に存在していたことが明記されているものと考えます。笵曄「後漢書」同様の筆致であり、同書の地理志記事から判断して九州北部が有力となります。
 「日本國」は、冒頭に「倭國」の別種と書かれているので、少なくとも、二つの政権が区別されて書かれていることは明らかです。
 いずれの記事も、飛ばし読みの時に、最低限目にとまって欲しいことが頭書されているので、「と書いたが、実は..」というどんでん返しはないものです。
 「日本國」記事では、引き続いて国名由来と移行経緯について、解釈が併記されています。つまり、遅くとも両国記事編纂時点では、「倭國」が消滅して「日本國」が存在していることが示されています。

 さて、第一の解釈では、先記されている倭國に対して、東の方角、日の出る方向にあるので「日本」と名乗ったと書かれています。この解釈で云えば、九州北部地域の東方に当たる中国から近畿の地域が最有力となります。
 付け足しの解釈では、「倭國」が、『自國名の字面が悪いので「日本」と改名したと表明した』と書かれています。あるいは、『「日本」は小国であったものが、倭國を併呑したと表明した』と書かれています。
 このように色々書かれているのは、編纂者は、「倭國」がどうして「日本國」になったか、筋の通った説明を聞けなかった/見いだせなかったので、元々あった記録をそのまま採用するようにしたものと思われます。蕃夷と対応した鴻臚のものは、蛮夷の言い分をそのまま紹介するよう命じられているので取り次いだのであり、「唐会要」の編者も、何も見解を示していないものです。
 とはいうものの、結論無しの紹介記事なので、最初に紹介された解釈が有力であり、また、後に紹介された解釈と共存できるので、そのまま書かれているものと考えます。
 推測ですが、中国側が「自然」な解釈を示したのに対して、日本使節が頑として同意しなかったので併記されたものと見たいところです。
 一部論者は、「唐會要」の両国記事は、「倭國」と「日本國」が、同一政権ないしは政権系列の時系列上の改名したとの記事であるとの見解を公開していますが、どうも、早計であり、実際は、錯綜の観を避けることなく併記されたままであり、当記事の論旨をそのように明解に解釈するのは無理なように思います。
 また、政書の性格上、正史の記事を校勘する際に厳密な史料として利用できないのと相まって、早合点することなく慎重に取り扱うことが必要です。

*和紙の起源
 因みに、「倭國」記事の建中元年項の蠒(メイ)は、銘仙のようなきめ細かい絹布のようです。倭国使節は、中国人が見たこともないような滑らかな紙に書翰/覚書を記していたと云うことです。
 おそらく、これは、「倭国」が、山野の植物を利用して、純白で滑らかな「和紙」を実用化していたものであり、中国で古来王侯の使用していた帛書と呼ばれる書記用絹布を再現していたのでしょう。紙の実用化以来一千年近くたって、高貴な帛書は、使用する習慣もなく、帛書の実物も地上から消滅して久しいので、王溥のような教養豊かな、宰相職の高官にも、見当が付かなくなっていたのでしょう。
 なにしろ、中国の製紙法は、蔡侯紙というものであり、衣類のぼろなどから採取した繊維を漉き上げていたので、「純白で滑らかな」「和紙」とは、別物だったのでしょう。

*資料編
 以下は、添付した影印本の記事を文字起こししたものです。
 その際、最善の注意と努力をはらいましたが、脱落、誤字等が存在しないことを保証するものではないので、添付した影印版を確認の上、ご利用いただきたいのです。
 倭國 (第九十九巻)
 古倭奴國也。在新羅東南。居大海之中。
 世與中國通。其王姓阿每氏。設官十二等。俗有文字。敬佛法。
 椎髻無冠帶。隋煬帝賜衣冠。令以錦綵為冠飾。衣服之制頗類新羅。腰佩金花長八寸。左右各數枚。以明貴賤等級。
 貞觀十五年十一月使至。太宗矜其路遠。遣高表仁持節撫之。
 表仁浮海。數月方至。(注 自雲路經地獄之門。親見其上氣色蓊鬱。又聞呼叫鎚鍛之聲。甚可畏懼也)
 表仁無綏遠之才。與王爭禮、不宣朝命而還。由是復絕。
 永徽五年十二月。遣使獻琥珀瑪瑙。琥珀大如斗。瑪瑙大如五升器。
 高宗降書慰撫之。仍云。王國與新羅接近。新羅數為高麗百濟所侵。若有危急。王宜遣兵救之。
 倭國東海嶼中野人有。耶古。波耶。多尼三國。皆附庸於倭。北限大海。西北接百濟。正北抵新羅。南與越州相接。
 亦頗有絲綿。出瑪瑙。有黃白二色。其琥珀好者云海中湧出。
 咸享元年三月。遣使賀平高麗。爾後繼來朝貢。
 則天時、自言其國近日所出。故號日本國。
 蓋惡其名不雅而改之。
 大歷十二年。遣大使朝楫寧、副使總達來朝貢。
 建中元年。又遣大使真人興能判官調楫志自明州路。奉表獻方物。真人興能盡其官名也。風調甚高善。書翰其本國紙似蠒緊滑、人莫能名。
 貞元十五年。其国有二百人浮海至揚州市易還。
 永貞元年十二月。遣使真人遠誠等來朝貢。
 開成四年正月。遣使薛原朝常嗣等來朝貢。
Toukaiyou_wakoku_1
Toukaiyou_wakoku_2
 日本國 (第百巻)
 倭國之別種。
 以其國在日邊、故以日本國為名。
 或以倭國自惡其名不雅、改為日本。
 或云日本舊小國、吞併倭國之地。
 其人入朝者、多自矜大、不以實對。故中國疑焉。
 長安三年。遣其大臣朝臣真人來朝、貢方物。
 朝臣真人者、猶中國戶部尚書。冠進德冠。其頂為花、分而四散。身服紫袍。以帛為腰帶。
 好讀經史、解屬文。容止温雅。則天宴之、授司善卿而還。
 開元初。又遣使來朝。因請士授經。
 詔四門助教趙元默、就鴻臚教之。乃遺元默濶幅布。以為束脩之禮。題云白龜元年調布。
 人亦疑其偽為題。所得賜賚。盡市史籍。泛海而還。
 其偏使朝臣仲滿、慕中國之風、因留不去。改姓名為朝衡。歷仕左補闕、終右常侍安南都護。
Toukaiyou_nihonkoku
この項 終り

« 今日の躓き石 毎日新聞スポーツ面の「リベンジ」再来 順当な番狂わせか | トップページ | 資料紹介「唐會要」 其の1 概論 再掲 »

歴史人物談義」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 資料紹介「唐會要」其の2 短評と記事紹介 再掲:

« 今日の躓き石 毎日新聞スポーツ面の「リベンジ」再来 順当な番狂わせか | トップページ | 資料紹介「唐會要」 其の1 概論 再掲 »

お気に入ったらブログランキングに投票してください


2024年7月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31      

カテゴリー

  • YouTube賞賛と批判
    いつもお世話になっているYouTubeの馬鹿馬鹿しい、間違った著作権管理に関するものです。
  • ファンタジー
    思いつきの仮説です。いかなる効用を保証するものでもありません。
  • フィクション
    思いつきの創作です。論考ではありませんが、「ウソ」ではありません。
  • 今日の躓き石
    権威あるメディアの不適切な言葉遣いを,きつくたしなめるものです。独善の「リベンジ」断固撲滅運動展開中。
  • 倭人伝の散歩道 2017
    途中経過です
  • 倭人伝の散歩道稿
    「魏志倭人伝」に関する覚え書きです。
  • 倭人伝新考察
    第二グループです
  • 倭人伝道里行程について
    「魏志倭人伝」の郡から倭までの道里と行程について考えています
  • 倭人伝随想
    倭人伝に関する随想のまとめ書きです。
  • 動画撮影記
    動画撮影の裏話です。(希少)
  • 古賀達也の洛中洛外日記
    古田史学の会事務局長古賀達也氏のブログ記事に関する寸評です
  • 名付けの話
    ネーミングに関係する話です。(希少)
  • 囲碁の世界
    囲碁の世界に関わる話題です。(希少)
  • 季刊 邪馬台国
    四十年を越えて着実に刊行を続けている「日本列島」古代史専門の史学誌です。
  • 将棋雑談
    将棋の世界に関わる話題です。
  • 後漢書批判
    不朽の名著 范曄「後漢書」の批判という無謀な試みです。
  • 新・私の本棚
    私の本棚の新展開です。主として、商用出版された『書籍』書評ですが、サイト記事の批評も登場します。
  • 歴博談議
    国立歴史民俗博物館(通称:歴博)は歴史学・考古学・民俗学研究機関ですが、「魏志倭人伝」関連広報活動(テレビ番組)に限定しています。
  • 歴史人物談義
    主として古代史談義です。
  • 毎日新聞 歴史記事批判
    毎日新聞夕刊の歴史記事の不都合を批判したものです。「歴史の鍵穴」「今どきの歴史」の連載が大半
  • 百済祢軍墓誌談義
    百済祢軍墓誌に関する記事です
  • 私の本棚
    主として古代史に関する書籍・雑誌記事・テレビ番組の個人的な読後感想です。
  • 纒向学研究センター
    纒向学研究センターを「推し」ている産経新聞報道が大半です
  • 西域伝の新展開
    正史西域伝解釈での誤解を是正するものです。恐らく、世界初の丁寧な解釈です。
  • 邪馬台国・奇跡の解法
    サイト記事 『伊作 「邪馬台国・奇跡の解法」』を紹介するものです
  • 陳寿小論 2022
  • 隋書俀国伝談義
    隋代の遣使記事について考察します
無料ブログはココログ