私の本棚 年表日本歴史 1 筑摩書房 7/7
1 原始▶飛鳥・奈良 ( ー783)1980年5月刊 編集 井上光貞 児玉幸多 林屋辰三郎 編集執筆 黛弘道
私の見立て 全体★★★☆☆ 本冊 ★☆☆☆☆ 「歴史的」誤記事 2017/01/16 補追 2024/07/16
*加筆再掲の弁
最近、Amazon.com由来のロボットが大量に来訪して、当ブログの記事をランダムに読み囓っているので、旧ログの揚げ足を取られないように、折に触れ加筆再掲したことをお断りします。代わって、正体不明の進入者があり、自衛策がないので、引きつづき更新を積み重ねています。
*「倭人伝」読み替え解釈の不都合
元々、「倭人伝」が、原資料を精査して編者陳寿の責任で景初二年と書いているものを、「年表」の編者は、勝手に景初三年と読み替える以上、陳寿同様に精査して、皇帝は新帝曹芳と正解すべきだが、自身の(不)見識に基づいているから、端的に言うと、誤解に基づく誤記事になってしまっている。
*誤伝の継承
「年表」のこのような創作は、具体的な指摘は避けるが、後世の書籍に問題を及ぼしている。
一般読者だけでなく、古代史学者でも、国内考古学寄りの専門家で、中国文献に自信の無い向きは、この記事を受け売りして、解説記事を執筆することがあるようある。もちろん、上に名をあげた執筆陣は、当然のごとく、この内容に基づいて執筆するものである。
今日に影響を及ぼした「歴史的」誤記事と言える。
*編集出版の不手際
当記事を年表に書くときに「倭人伝」に「欠けている」細部を埋めるのは、それ自体悪くはないが、その際に、原資料を確認せず、自身の憶測に基づいて書き込むのは、どんなものだろうか。
「倭人伝」は、魏朝公式記録を二千字程度で書き記しているから、当時周知、自明であった事項は書いていないから、「欠けている」と見ることもある。しかし、二千年後生の無教養な東夷である現代の日本人が、知識不足で憶測すると、見当違いな誤解になるのは、避けられないものである。
余程自信があったのだろうが、中国文献の解釈は、専門家の確認を仰ぐべきではなかったかと愚考する。
古代史学界では、先賢の玉稿を校閲することを忌避するのだろうか。先賢とて、時には、勘違いするのは避けられないと思うのだが、その勘違いがそのまま世に出るようでは、学界全体が、世間の信用をなくすのではないかと憂慮される。
そして、「年表」の編者も含めて、錚錚たる顔ぶれの古代史学界のお歴々が、誰もこの点を指摘しなかったと見えるのは、どういうことなのだろうか。誤字の類いでないだけに、深刻なのである。
以上
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