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2024年8月17日 (土)

私の本棚 図説検証 原像日本 2 大地に根づく日々 水野 正好 更新 1/2

 古代人と神々 水野 正好 (第5段に相当 表記なし) 旺文社 1988年
 私の見立て★☆☆☆☆ 神がかりの荒技 2017/02/10 補充再掲 2020/06/27 教育的指導追加 2024/08/17

*加筆再掲の弁
 最近、Amazon.com由来のロボットが大量に来訪して、当ブログの記事をランダムに読み囓っているので、旧ログの揚げ足を取られないように、折に触れ加筆再掲したことをお断りします。代わって、正体不明の進入者があり、自衛策がないので、引きつづき更新を積み重ねています。

◯はじめに
 「図説検証原像日本」シリーズは、編集委員として、陳舜臣、門脇禎二、佐原眞と大物を据えた意欲的な取り組みであり、豊富な図版と多くの筆者の論考をを大型本五冊に収容した大著です。
 今回、古書店から購入したとは言え、図版資料としての重要性は絶大です。
 但し、記事部分は担当者の見識で書かれているので、しばしば躓かされます。今回は、丁寧に考え違いを教え諭しているので、

*「倭人伝」談義に重大な異議あり
 ということで、目下関心を持って読み進んでいるのは、古代記事なのですが、当段筆者の古代世界観の一端が、次の段落に明示されています。

 政治を反映する青銅器
 翻って『三国志』の魏志東夷伝倭人条によれば、日本は倭国(わ)、王都は邪馬台国(やまと)とされる。そして、九州の対馬(つしま)・一支(いき)・末廬(まつら)・伊都(いと)・奴(な)・不弥(ふみ)の諸国を統轄し、魏使等と倭国王、王都間の連繋をとる機構として「大率」が置かれている。言うまでもなく邪馬台国は大和であり、大は後世の太宰府に相当する機構である。こうした倭国の機構に対応する形で、青銅器の世界が展開している。倭国中枢の邪馬台国が直接統轄する範囲に銅鐸が分布し、大率なり率に統轄を委ねている範囲に銅矛が分布するのである。

 つまり、著者は、文献資料である「魏志倭人伝」の自分流の解釈、言い方によれば、手前勝手なこね回し、に合わせて、青銅器の分布を解釈するという態度をとっていますが、要するに、自分流の青銅器分布解釈に合わせて、文書資料を読みこなしているのですから、これは、遺物考古学者の論考の進め方として「本末転倒」でしょう。
 按ずるに、所属組織の機関決定をなぞっているのでしょうが、それは、ご自身とご家族の平安のために余儀なく辿っている天下御免の「禽鹿径」(裏道)としても、学門の本道を大きく逸脱しているのではないかと、懸念するものです。

*教育的指導
 2024/08/18
 僅かな行数字数に、重大な文献史料誤解の連発であり、どこのどなたの創作なのか、念の入った「落第答案」がさらし者になっているのは、創刊というか悲惨というか、何とも、言いつくろいに苦労するのです。せめて、原文を提示して、そこに解釈を自己責任で塗りつけたという形式にすれば、「思いつき」の素朴な発露と見てあげることが出来るのですが、改竄文書を立て付けの悪い素人普請で投げ出されては、是正のすべがありません。
 冒頭の一文を例にすると、中国で三世紀に書かれた陳寿「三国志」「魏志」東夷伝には、「倭人伝」と明記された一伝がありますから、これを「倭人条」と呼ぶのは、一種の仮説に過ぎません。魏志倭人伝によれば、三世紀に「日本」は存在しない、東夷倭人に「王都」は存在しない、まして、「邪馬臺国」、ならぬ「邪馬台国」は、一切存在しないのは、天下周知の事実ですから、ここに書かれているのは、二千年後生の無教養な東夷に二次創作と見るものではないでしょうか。
 以下、勢いに任せて難詰します。
 勝手に「大率」なる官人を創造して、それは、後世の太宰府に相当すると、気軽に断定していますが、太宰府は、数世紀後世に設けられた地方組織・機構であり、その時点で、成文法が成立、公布されていたものであり、文書送達の街道が完成していたとみなされます。して見ると、そのような体制整備が影も形もない時代に、近隣諸国に対して運用されていた官である、「倭人伝」に書かれている「一大率」なる官名とは不釣り合いです。勿論、「倭人伝」の編者は、太宰府など知ったことではないので、つじつまが合わないのは、不勉強で取りこぼしたのか、承知の上で道を外したのか、とにかく後世東夷の責任です。
 転じて、「言うまでもなく」と同族でだけ通じるお呪いをして、「邪馬台国」が倭であると、大胆な神懸かっている創作を進めていますが、当時の氏神に帰依していない部外者にも理解できる論証を必要としています。これでは、「カルト」教義のようだと書きかけたら、陰の声でもないのですが、「敬意」を示せと空耳がしたので、ちゃんと、「お」を付けて、『お「カルト」』のようだと言い直したいところです。

*遠隔統治の夢物語 2024/08/18
 北九州視点から蜃気楼の彼方の位置不詳の『「邪馬台国」は「倭人伝」に登場しないが、日本列島西部を包括支配していた』との言いのがれは絶妙好辞ですが、現代風に言うと、遠隔の地に在って、外交、軍事、租税、祭事の大権を保持している機構は、主権国家であり、文書行政の整った「太宰府」体制とは、全く異なった独立国と見るものでしょう。
 ちなみに、班固「漢書」西域伝に依れば、漢武帝代に派遣された百人の漢使節は、カスピ海東岸の「安息国」居城で、長老と折衝したところ、長老は、二万の常設軍を供えた要塞で、東方の大月氏の侵掠に備えているが、漢との「外交」については、西方数千里の国都の指示を仰ぐ必要があるとの回答を得て待機し、國王の親書を受けた長老が、漢使、つまり、漢帝の代理人である西域都督の使者と締盟したと明記されているのです。
 安息国は、法制と文書使制度が完備していて、東方辺境の軍事都督は、外交権限はもっていなかったが、文書で「王都」の勅許を求め、国王代理として締盟できたわけです。(漢書西域伝で、安息国は、唯一、漢に匹敵する文明国と認められていて、「王都」の呼称を与えられているのです)
 魏志倭人傳を編纂した陳寿は、当然、班固「漢書」西域伝安息条を知悉していたわけですから、伊都国王が、遠隔の「倭王」から委任された西方都督であったのなら、そのように、権限委任の手続きを明記した上で、従って、伊都国王に信書を提示した上で、代理人と締盟したと書くものです。そのような記事は一切ありませんから、伊都国王は、帯方郡から見て、所定の権力を保持している統治者であり、外交代権を行使する際に必要とされている女王の信任は、対面、面談で確認していたと明記されているのに等しいのです。

 素直に考えればわかるはずですが、班固「漢書」に示された安息国のように、成文法に基づく文書行政が確立されていれば、一片の書面で、遠隔地の代表者に指令を送り、必要があれば、馘首することが出来ますが、全て対面、口頭の世界で、そんなことはできるはずがないのです。せめて、中国太古のように、金石文として盟約を交わすことが出来れば、印綬の公布で、身分証明ができれば、全権を委任した使者の派遣で、強権を振るうことができるでしょうが、ないないづくしの三世紀に、どのような神業で広域支配できたか、論証は、至難ではないでしょうか。

 古来曰わく、言うのはタダ、言ったもん勝ちと言うことでしょうか。まるで、無学な野次馬の放言と誤解されかねない不用意な書きぶりであり、であり、「夜郎自大」でもないでしょうが、痛々しいものがあります。
 
*閑話休題
 それにしても、著者の脳裏に反映されている「政治」は、どの時代のどの国の言葉なのでしょうか。ちと、時代錯誤丸出しの粗雑な言い回しです。

 以前、自身が盆栽と化した著者が、資料を丹精して盆栽を仕立てていると揶揄しましたが、本記事もその一例です。「自縄自縛」と言いかけるのですが、少しは、趣(おもむき)のある言い回しを採ったものです。

 倭人伝を持ち出す以上、勝手な解釈を展開すべきではありません。まずは、独善を押しつける「日本」表記です。三世紀当時どころか、はるか後世の八世紀冒頭まで、「日本」は存在しなかったのです。また、当時蛮夷の王は、「王都」と称することを許されてなかったのです。勿論、地理概念の大和も存在せず、青銅器世界の展開も、手前味噌の概念なのです。

*文献史料の操作
 もし、ご自身の学究の手順として、文献を優先・先行させるのなら、各地で出土した青銅器を、先入観のない客観的な目でつぶさに観察、計測、分析したのと同じ客観的な目で文献を読み、科学的な目で史料批判すべきです。

*独自解釈の押しつけ
 古田武彦氏の古典的指摘を確認するまでもなく、「倭人伝」の倭王の居処は邪馬壹国であり、邪馬台国は後漢書由来です。その国が、僻遠のヤマトという説も有力ですが、九州北部にあったとする有力な学説が存在しています。
 文献解釈が分かれている中、一方にのみ依拠して自分流の解釈に固執し、文献に書かれている文字を自身解釈で書き換え、それに基づいて青銅器に反映されているとする「政治」を説くのは、科学的な態度といえないのです。

 つまり、ここに書かれた自己流倭国構造は一つの仮説であり、不確かな世界観に基づく文献解釈、不安定な仮説に基づいて、青銅器の意義づけを解釈するのは、仮説の正否以前の問題として学問の正しい手順を外れています。
 そのような不適切な論法を、原文献を参照できない一般読者に押しつけるべきではないと思うのです。

*Mythの剽窃
 よく見かける悪弊なので、個人的な意見ではないのでしょうが、中国で書かれた資料を、二千年後世の無教養な東夷の見当違いの解釈にこじつけて書き換えて、それを、もっともらしく著作にするのは、同時代人、後世人に対して、重大な悪弊を残しているものと見えます。考古学者として、恥じることのない、適確な著作を期待したいのです。
 既に、いずれかの組織の決定事項になっているので、異議を挟むことが許されていないのでしょうか。それなら、せめて、このような「Myth」(一神教信者が、異教の教義に対して投げつける蔑称)を誰が提唱したのか、功績を明らかにすべきでしょうか。「剽窃」は、創唱者の知的財産権を侵害する重罪だと思うのです。

                              未完

 古田武彦氏の指摘を確認するまでもなく、倭人伝に書かれている倭国王都は、邪馬壹国であり、邪馬台国と書いているのは、後漢書である。

 

 その国が、僻遠の果てのヤマトにあったという説も有力であるが、一方には、九州北部にあったとする有力な学説が存在している。

 

 そのように文献解釈が分かれている中、一方の解釈にのみ依拠して自分流の解釈に固執し、さらに、明確に文献に書かれている文字を自身の解釈に書き換えて読み取り、それに基づいて青銅器に反映されているとする「政治」を説くのは、考古学者としての科学的な態度といえない

 

 つまり、ここに書かれているような自己流の倭国構造は、あくまで一つの仮説であり、そのような不安定な仮説に基づいて、青銅器の意義づけを解釈するのは、仮説の正否以前の問題として、学問の正しい手順を外れている。まして、そのような不適切な論法を、原文献を参照できない一般読者に押しつけるべきではないと思うのである。

 

未完

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