私の本棚 図説検証 原像日本 2 大地に根づく日々 水野 正好 更新 2/2
古代人と神々 水野 正好 (第5段に相当 表記なし) 旺文社 1988年
私の見立て★☆☆☆☆ 2017/02/10 補充再掲 2020/06/27 2024/08/17
*加筆再掲の弁
最近、Amazon.com由来のロボットが大量に来訪して、当ブログの記事をランダムに読み囓っているので、旧ログの揚げ足を取られないように、折に触れ加筆再掲したことをお断りします。代わって、正体不明の進入者があり、自衛策がないので、引きつづき更新を積み重ねています。
*戦国難民考
ちなみに、水野氏は、中国の戦国時代のおそらく末期、秦による全国統一の際、中国北部の燕から、亡国から逃れた多数の人々が朝鮮半島を南下し、大海の彼方の日本列島に渡来したとみています。不明瞭なので、個人責任で明確化しています。
燕が滅んだのは、BCE222年ですが、すでに他の諸国は、悉く秦に侵略されているので、燕の王族や貴族が逃げるなら、選択肢は、いずれも夷蕃で、北方の匈奴の世界でなく、温和な朝鮮半島を選んでも不思議はないのです。それにしても、家族一同移住できたのは貴族階級であり、従って、単なる逃亡でなく、中原世界で通用していた中国文化を持ち込んだ亡命と見ているのでしょう。
*遺らなかった文化資産
それなら、定着地で中国語を語り、漢文を書き記し、中国「文化」の種をまいたものと思うのです。そのためには、木や竹から簡牘を作り、筆と墨を作り、持ち込んだ豊富な書籍に親しみ、時に応じて文筆活動したはずです。衣類も、中国のものとして、麻などの種子を栽培したはずです。
断髪、文身、黥面は論外です。生食は禁忌です。牛肉、狗肉が必要です。
祭礼として、家族の祖先をまつることも当然です。これは、中国文化の根幹です。家を守るという事は、「姓」を墨守します。中国の暦から切り離されても、月日の経過を年代記に書き綴り、また、墓碑や家系図を残したはずです。
「文化」とは、固持すべき必須要件を持ち、かつ、それを支える多くの要素を持つものです。単なる民俗、習慣の集合体ではないのです。
それにしても、古代遺跡で、中国南方の影響は、稲作や氏神祭礼などが多く継承されていて、北方風俗の伝播は、まことに目立たないように見えますが、素人の錯覚でしょうか。
燕の「文化」は、大地に溶け込んで、伝来風物なる微かな断片だけが遺ったのでしょうか。
*文化幻想
著者は、「縄文文化が消え弥生文化が広がった」と無造作に言い放つのですが、文字なき社会に文化も文明もないのです。「文化」は、確固たる漢語であり、後世日本人が、勝手に言い崩すのは、ありふれた、無教養の語彙錯誤です。
亀卜談義がありますが、「筆者は、「亀卜の趣旨がわからないと逃げます」しかし、占いたい趣旨を書き込んだ上で亀卜し、神の回答である割れ目解釈するのが、亀卜であり、託宣には、確立された解釈法があったはずです。
そのためには、亀卜文字の大系が必要です。殷(商)は、卜辞の解釈に適用するために漢字を創出したと言われています。ついでに言うと、易の筮竹も、易経に基づく解釈がなければ、託宣できません。いずれも、文化の一部です。
*憶測の集成
「弥生文化」の開花に、「中国文化」の流入を説く割には、「文化」に即した具体的な物証、論証が欠けているのです。遺物考古学にしては、域外の話題なのでしょうが、ちと、不勉強に過ぎます。なお、記事に於いて依拠した文献史料も、明示されていません。憶測の堆積でないでしょうが、かなり疑問に感じます。
◯まとめ
念のため言うと、不満の対象は、不確かな文献解釈への無批判の依存であり、遺跡、遺物の実見による「純然たる」考古学的考察に、素人が口を挟むものではないのです。文献解釈を、時代同定に持ち込まざるを得ないとしたら、安易に俗耳に訴える「定説」に無批判に追従するのではなく、自律的な史料批判を怠るべきではありません。
もし、遺物考古学が、定説に追従して定見としたら、逆に、そのような遺物考古学定見を根拠として定説が強化され、混迷が深まるのです。
いや、現に深まっているのですが、その責任の過半は、遺物考古学界の無定見な追従姿勢にあるのです。
本書に署名されている諸賢は、後世に名声を残したいと思われているのでしょうが、これでは、後世の批判を浴びる標的となっていると言わざるを得ません。
毎度のことですが、以上は、一個人、素人の意見ですから、断言調で展開していても、別に絶対視されるべきと確信しているわけではないのです。ひたすら、晩節を穢すことが無いよう、ご一考いただきたいというだけです。
以上
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