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2024年9月 6日 (金)

新・私の本棚 番外 毎日新聞 【松井宏員】散歩日和 奈良凸凹編 大倭/1 2/3

散歩日和 奈良凸凹編 大倭/1(奈良県桜井市)「歴史の鍵穴、纒向遺跡」毎日新聞大阪夕刊4版[特集ワイド]2024/9/4
私の見立て ★★★☆☆  場違いな力作 前途遼遠  2024/09/05-09

 ただ、大型建物群や箸墓をはじめとする古墳群を持つ纒向遺跡[中略]

 大型建物群や古墳群を持つ「纒向遺跡」』とは、錯綜・混乱している。ここは、「遺跡」論議ではなかったか。「特徴」は出ず、遺跡大小が問われて見える。

纒向遺跡の範囲
 (1)弥生後期に突然出現
 100年代末~200年代初めに現れ、[中略]4世紀前半に消滅する。

 意味不明の紀年である。普通に考えると、100年代は、101年から110年であるから、100年代末は110年であるが、当時、誰が、キリスト教紀元(ユリウス暦か)を、そこまで精密に知っていたのだろうか。西暦を、古代史に持ち込まざるを得ないとして、普通に書くとすると、二世紀中に出現し四世紀に入ってほどなく消滅したということか。なにも文書記録はないのだから、五十年、百年程度でも過剰な精度かもしれない。
 「範囲出現」は、ペンの滑りとして、遺跡構造物は、一日にして出現しない。多くの人々の労苦の成果である。廃墟となっても消滅はしない。活発な扇状地なら世紀を経ずして堆積土砂に埋もれるだろうが、ここは、そのような大河、奔流の流域ではないのである。埋もれるまでに随分な年月を要したはずである。だれか、地形変動の記録をとっていたのだろうか。それにしても、墳丘墓は、「消滅」などしていない。用語の混乱で、錯乱したのだろうか。

 (2)とにかく大きい
 東西約2キロ[中略]にわたり、後の藤原宮、平城宮、平安宮より大きい。

 定義が混乱している「遺跡」の範囲と比較したのは、平地に整地された条坊構造の城市の内部の一角である。山麓の扇状地で大規模墳墓を包含する(とも言われている)「纏向遺跡」(領域範囲が皆目不明だが)の面積とは、まるで別物/異次元であり、子供の口げんか(賈孺争言)でもないから、どっちが大きいか比べられない。つまらない御国自慢に付き合っていられない。

 (3)外来系(大和以外)の土器が多い
 出土土器の約15~30%にのぼり、[中略]外来系土器の49%が東海で、山陰・北陸17%▽河内10%▽吉備7%――と続く。

 「範囲」談議と見えない。真意不明の「ヤマト」を持ちだして、内外を仕切っているが、これら地区名は、随分後世に定義されたはずであるから、三世紀当時には、意味を持たないのである。要するに、纏向集落の権力者にとって、これらの地域は、権力圏外、異国だったと主張しているのだろうか。

*内外区分の不確かさ 2024/09/09
 ちなみに、素人考えをお許しいただけるなら、纏向遺跡の「大王」が、「東海」系の出自であったとしたら、歴史上のその時点で、「東海」は「纏向遺跡」に包含されていた、あるいは、その逆で、この地は、「東海」と言うことになるから、どちらの見方をしても、「外来」の定義を外れているように見られる。そのような形勢では、当然、東海系の土器制作技術が渡来しているだろうから、その場合も、「外来」の定義を外れているように見られる。

 (4)農耕の形跡がない
 弥生集落は鍬(くわ)や鋤(すき)が出土し、中でも田畑を耕す鍬が多いが、纒向は土木工事に使う鋤が圧倒的に多く、田畑はほぼなかった。

 「範囲」談議と見えない。弥生集落は、水田稲作で生計を立てたと理解している。論者は、「纏向遺跡」は弥生集落遺跡ではないと決め付けて、農地らしき場所を避けて発掘しているのではないか。長年に亘り、卑弥呼金印発掘に身命を賭したから無理ないと思うが、「農耕の形跡がない」と断定していいものか。

*にわか扇状地と潤沢な纏向渓流の幻想
 「纒向遺跡は、纒向川の扇状地に[中略]全く前触れもなく出現するんです」。[中略]纒向の立体地図を見ると、幾筋もの川と川の間の微高地を利用しているのがわかる。

 何の根拠があって、太古のことを物々しく断定しているのか不明である。基本的な考察に立ち返ると、「扇状地」は、河川分流の砂礫堆積物の積層であり、本来、堅固な地盤を要する大形建物の造成は困難である。また、河流に交差する「径」が造成困難であり、物資の輸送/人員の移動が困難である。現地は、三輪山山麓の扇状地なら砂礫が多く保水できず灌漑が困難である。ついでに言うと、現地は、雨季の河川氾濫で知られている。ため池兼用の環濠無しでは灌漑も治水もならない。大規模聚落は、極めて困難である。
 むしろ、纒向川は三輪山麓に扇状地など形成せず、既存の平地を削って渓谷を形成して流下していたように見えるのではないか。それなら、西方の巨大な沼地が次第に埋まって、今日の盆地西部の低地帯に至ったと見える。
 要するに、太古、前史時代以来、長期間を要した地形形成のはずであるが、3世紀時点でもどのように形成されたかという根拠はあるのだろうか。全域で、出土物の放射性炭素法検定を実施した上で言っているのだろうか。それとも、現代巫女に頼った神がかりなのだろうか。

 提示の現代地図からは、纒向川がJR巻向駅方面に北流していたと見て取れない。物の役に立っていない。

*「纒向の立体地図」公開回避の怪 2024/09/06, 07
 「纒向の立体地図」は、紙面掲載されたもののウェブ記事に表示されていないので、多額の費用を投じたと思われる「立体地図」の単なる紹介画像を評価しようがない。夕刊紙面の(不出来な)画像から判断すると、氾濫蛇行の果てに形成されたとみえる、河流に遮られた中洲状の堆積地に、どのようにして、かくも壮大な「遺跡」が造成されたか、想像を絶している。通常、地盤が不安定な、災害多発地域に「大型建物」など構想しないはずである。
 常識的に考えて、渓流の浸食、扇状地の堆積何れにしろ、タップリした水量で、滔々たる流速が無ければ、形成されないものであり、表示されているような、湿原とも見える「水郷」風景は、大河淀川の中下流を見ている感がある。
 ということで、紙面から見て取れる水郷地帯を「復元」した根拠を伺いたいと思うものである。

 根拠が確かと思えない「立体地図」 に多額の公費を投じる以上は、多年の宏大な発掘成果に基づいた考証が提案されたものと見えるのである。是非、御公開頂きたいものである。

 ちなみに、別の機関で別途作成された動画では、堂々たる大運河の水運が描かれている。絵を描いて誤魔化すのは、不合理である。

                                未完

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