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陸行1月の呪縛= 後漢書東夷傳(その1)-會稽東冶ー(ママ) 2024-07-27
私の見立て ★★★★☆ 前途遼遠 2024/09/09-13
□はじめに
范曄「後漢書」(以下、范書)東夷列伝「倭条」飜訳の根拠は不明ですが、素人目にも誤訳と勘違いが多いので、背景説明を惜しまずに指摘します。
飜訳は、渡邊義浩氏訳等を参照された方が良いと思います。
◯本文質疑 傍線は、原ブログ記事引用
倭在韓東南 大海中依山島為居 凡百餘國 自武帝滅朝鮮 使驛通於漢者三十許國 (劉攽曰使驛按當作譯説巳見上)
*倭は韓の東南にある。広大な海の中の山深い島によりそって居住している。
◯誤解の起源 (「よりそって居住??」)
「倭」は、漢代東夷管轄楽浪郡から「韓」の東南に在るのでしょう。漢武帝「朝鮮」討伐時、韓国は未形成ですからこれは後漢末情勢です。ただし、魏武曹操が統治した後漢献帝建安年間を除外するので、遼東郡太守に公孫氏の時代、帯方郡を設けて韓濊倭を管轄した時期は書かれていない(はず)です。
◯魏志倭人伝「大海」・「水行」考
記事解釈で、氏は、おそらく、現代辞書を優先しているため、早々に、大きく脱輪しますが、現代研究者の大半に共通した思い違いです。
班固「漢書」(以下、班書)西域伝により「大海」は内陸塩水湖です。班固、陳寿の知識外の現代語「瀬戸内海」は、本来、中四国、備讃瀬戸、芸予諸島が囲む、現在燧灘と呼ばれる海域の「内海」であり、「大海」と見えます。
余談はさておき、陳寿は、陳寿「三国志」(以下、陳書)「魏志倭人伝」の郡から倭に至る「従郡至倭」行程を読書人向けに書きこなして、塩水海流と言えども、「大河」(河水、黄河中流)渡船同様と示して、無用の警戒心を解いています。この比喩は、西域で言えば、途上の沙漠「流沙」、「砂の川」の中洲(オアシス)が浮かんでいるのと同様で、共に「瀚海」を有しています。
古典書の用語、用例を極めた中島信文氏は、「海」は、現代的地理概念「うみ」(英語Sea,米語Ocean)でなく、「中国」四囲の異界「海」(かい)と峻烈ですが、陳書は至近の班書に従い「大海」は塩水湖と見えます。
また、陳書で、韓の東西は「海」ですが南は「倭」即ち「大海」と峻別し、韓倭間は、塩水大河の洲島を、順次渡り継ぐとの解釈が順当と愚考します。
*「水行」の有り得ない不正解
「陳書」では、「従郡至倭」で、並行陸路のない狗邪・対海軽舟渡船を河水渡船に見立てた上で、史記禹后記事まで遡っても官道行程記事に用例皆無である「水行」を、新たに「魏志倭人伝」限定で定義したのです。
以上、陳寿は、「魏志倭人伝」道里行程記事で、未聞の用語を不意打ち起用して読書人の不信を買わないように長途の官道行程を規定したのであり、就中、安全な陸上路程が並行・確立しているのに、危険無類の海船行程など、到底有り得ないのですが、後生東夷は、苦し紛れに妄想を巡らすのです。
◯范曄なる偉大な井蛙
陳寿の没後、「西晋」は、内乱の果てに北方異民族に天子を誅され、亡命王族が東呉旧地建康に「東晋」を再建しましたが、漢代由来公文書庫が散佚して、後生范曄は半人前の教養であり、范書「倭条」不都合は斟酌すべきです。
范曄中文解釈は、陳寿と異なり、史官訓練を受けず、史官教養に富む老師も得られず、太古以来の史官用語で書かれた「班書」読解は困難と見えます。
未完
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