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2024年9月 6日 (金)

新・私の本棚 番外 毎日新聞 【松井宏員】散歩日和 奈良凸凹編 大倭/1 1/3

散歩日和 奈良凸凹編 大倭/1(奈良県桜井市)「歴史の鍵穴、纒向遺跡」毎日新聞大阪夕刊4版[特集ワイド]2024/9/4
私の見立て ★★★☆☆  場違いな力作 前途遼遠  2024/09/05-09

◯はじめに 「歴史の鍵穴」の遺産
 大見出しで「歴史の鍵穴」とあって、往年の専門編集委員が連発したトンデモ記事を引き継いでいるのかと一瞬身構えた。どん詰まりには、吉野山金峯山寺に吉野宮があって、厳冬・極寒にめげずに、持統天皇ご一行が行幸を重ねたと途方もないホラ話に墜ちていた。今日ロープウェイしかない登山路を、女帝を担いだ一行が駆け下りて韋駄天帰館、そして...という次第であきれ果てたものであった。

 当時、典型的な老害で、誰も専門編集委員にだめ出ししなかったと見える。天下の毎日新聞が、墜ちたものだと呆れた。同記事だけでなく、継続記事の「カシミール3D」権利侵害も、未解決である。ちなみに、「7」と書いているように、同様の不合理な地図妄想は、毎日新聞の記事として、延々と続いていたのである。当時も今も、その点では、なんの進歩もないのである。一蓮のブログ記事は削除していないから、興味のある方は、検索で発見できるはずである。
 毎日新聞 歴史の鍵穴 地図幻想批判 7 吉野宮の悲劇 1/2 再掲
 それにしても、素人目にも明らかな、曰く付きの粗雑な比喩が、堂々と継承されるとは、もったいないことである。

 なお、今回の記事に、罰当たりな吉野宮談義は出てこないし、掲示されている地図は、今日の国土地理院データに基づく現代地図としているので、重大な侵害は回避しているように見える。但し、れでは、古代の地形、特に河川の水脈が不明であるから、古代遺跡の解説図の用をなしていない。当たり前の話しだが、JR桜井線や国道169号の路線は、特に参考にならない。むしろ、梅林氏が確固たる信念としていると見える「東海方面」への交通を強く示唆する近鉄大阪線が割愛されているのは不審である。

 紙面掲載された桜井市立埋蔵文化財センター提供の立体地図は、同記事を見る限り、データ出典など一切不明であり、方位、縮尺、高度が不明である。当然、詳細な測量データに基づいた科学的な「ジオラマ」であるから、それぞれの時点でどのような傾斜になっていたのか、どの程度の流速で流下していたのか、緻密な解析が行われているはずである。また、縄文時代以来の長大な時間経過に渡る「微高地」形成史が騙られているはずである。さらには、大型建物群や箸墓の造成時の交通/物流について、堅実な考証がされているはずである。
 それにしても、掲示されているのは、部分図であり、しかも、立体画像ではないので、高低差の見て取れない。物の役に立たない単なる参考イメージである。それにしても、折角の立体図が、作りっぱなしで埋もれているのは、税金の無駄遣いと言われかねない。まことに勿体ないことである。

 同地図は、毎日新聞サイトのウェブ記事からは割愛されていて、ここで述べた批判は空振りである。要するに、桜井市立埋蔵文化財センターの諒解のない無断掲示だったようである。全国紙の報道として、もっての外ではないか。
 とはいえ、折角多額の公費を投じた地図が、世に知られないまま埋もれているのは、公費の浪費である。それとも、いずれかの場で公開されて居ねるのだろうか。そうであれば、無礼をお許しいただきたいものである。

*本文批判
 ヤマト王権発祥の地はどこか? 有力視されているのは纒向(まきむく)遺跡(奈良県桜井市)だ。弥生時代後期に、奈良盆地南東部に突如出現する大規模遺跡で、しかも一角には最初の巨大前方後円墳の箸墓(はしはか)古墳を擁する。[中略]三輪山の西に位置する遺跡や古墳を訪ねる。
 [中略]築造年代がぴったりはまることから、卑弥呼の墓とみる研究者は多い。ただし、纒向には箸墓より古い前方後円墳がいくつもある。[中略]

*揺動する論旨
 「ヤマト王権」は当ブログ圏外で、いつどこの発祥か知るところでない。また、「纏向遺跡」の定義が、記事の末尾に至るも不明である。現代考古遺跡ではないのか。二世紀に「遺跡」だったと言うことか。墳丘墓を含むのか。その場その場で表現が揺らぐ。
 出典不明の地図で「遺跡」の範囲が明示されるが、誰が、どのようにして範囲の境界を見定めたか示されていない。ここまでの連載記事で、東海方面への交通路を示唆するように示されていた近鉄大阪線が図示されていないのも、首尾一貫せず、記事趣旨に背を向けているのも、いかがわしいと言われそうである。
 どうやら、通称「纏向遺跡」の一部が「史跡指定」されているようである。もっと、その辺りを公知のものとすべきでは無いかと思われる。

*根拠不明の古墳築造年代推定
 「2009年に国立歴史民俗博物館が放射性炭素年代測定により、箸墓古墳の築造年代を240~260年代と発表した。」と言うが、「歴博」は、何の根拠と権威で「発表」したのだろうか。いずれかの公的機関に委託して「年代測定」報告を得たというのだろうが、それは、二千年過去の二十年範囲に限定できる信頼性を確証されているのか。「築造年代」は、どんな根拠で特定されたのか。科学技術の分野で当然の検証が、すっぽり抜けているように見えるのは、どんなものか。そして、毎日新聞が、そのような杜撰な考古学界活動を支持しているように見えるのは、どんなものか。善良な一介の納税者としては、多額の国費の費消について、克明な会計監査を御願いしたいものである。

 比較対照されている「魏志倭人伝」は、二千年を経て、綿密に年代考証されているが、「歴博」は、どんな確証で、卑弥呼の「冢」、小ぶりな土饅頭が、所謂「巨大前方後円墳」であったと主張しているのか。まことに、不審である。それとも、「魏志倭人伝」誤記説にこだわっているのだろうか。「魏志倭人伝」に信を置かないのであれば、卑弥呼の実在すら疑わしく没後の葬礼も信じがたいとなる。笵曄「後漢書」東夷列伝倭条の簡牘巻物「レプリカ」に続いて、陳寿「三国志」魏志倭人伝の国産化に挑むのであろうか。

*果てし無き風評論議
 記事は、「ぴったりはまる」とするが、ドロ沼にはまっているのではないか。
 賛同している研究者が「多い」とは、百人か、千人か。箸墓より古いとは、どうやって年代測定したのか。いくつもとは、何個のことか。ドロ沼である。以上、権威ある全国紙として、責任を持てるご説明をいただきたいものである。野次馬古代史マニアの言いたい放題の私見ではないのである。

                                未完

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