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2024年9月13日 (金)

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陸行1月の呪縛= 後漢書東夷傳(その1)-會稽東冶ー(ママ) 2024-07-27
私の見立て ★★★★☆ 前途遼遠  2024/09/09-13

*(これは今の名である邪摩堆の音の訛りである。)
 これは、范書原文でなく付注です。後出史料で、原本否定など無法です。

◯「万二千里」のホントウの起源
*楽浪郡の境界からその國(邪馬臺國)へ行くには12、000里である。

 楽浪郡檄(つまり、大倭王と交信する帯方縣)は、大倭王居城を去る万二千里との公式定義です。
 范書によれば楽浪郡(帯方縣)倭間の公式道里万二千里(余里無し)は後漢代規定で、「陳書」はこれを踏襲したので、責任はないのです。
 范書倭条は、陳寿の知り得なかった何らかの原史料に依拠しているとの解釈になります。蕃夷は、服属の際に、王名、国名、城名、城数、道里、戸数、口数を申告する義務があるので、文書通信の所要日数が不明とは途方もないことです。ちなみに、新規参上、服属の蕃夷は、金印(青銅印)とふんだんな下賜物をいただくのですが、何も書かれていないのは、不審です。

*楽浪郡の境界からその國(邪馬臺國)の西北の境界である拘邪韓國へ行くには7、000里である。

 正確には、楽浪郡檄(大倭王と交信する帯方縣)は、其の国の西北境である拘邪韓國を去る七千余里ですが、拘邪韓國(誤写)は韓国でなく倭です。
 帯方郡成立は後漢献帝建安年間で、范書には書かれていません。随分、いい加減ですが、無校正の書き飛ばしだったのでしょうか。

*その地(倭)は概ね會稽東冶の東にある。
*倭、會稽東冶と朱崖儋耳(海南島にあった珠崖郡、儋耳郡)はそれぞれ近いので、この3箇所の規律や風習は多くが同じである。

◯范書錯乱
 この部分は意味不明です。「魏志倭人伝」では、夏王族が亡命先で蕃夷の習俗に染まったと嘆じたとして、「会稽東治」、読者に衆知の禹后故事と結びつけますが、范書「倭条」は、無意味な「会稽東冶」を唱えます。
 「陳書」「魏志倭人伝」は「その地」風俗の後、海南島に近いと記しますが、これは南方の狗奴国紹介と見えます。後ほど倭地は(寒冷な帯方郡と比して)温暖と述べ、別地域と分かります。それにしても、范曄は原史料の所引で、記事の要点をごっそり取りこぼしています。

 范曄は史料誤解の上、「東治」を会稽「東冶」と作ったのですが、会稽郡の遙か南方に「東冶」のない後漢期であり、笵曄は、時代錯誤に陥っています。

 范書は、意味不明な「会稽東冶」の後、「海南島」に近いから法俗は似たものと言い放って、原文と乖離して雒陽ならぬ建康風に書き換えたと見えます。
 このあたり、范書は原史料文意を理解できないまま、後日を期していたのでしょうが、其の急死によって(不本意な)未完稿が遺されたと見えます。

 陳書では、禹后故事の会稽東治之山「会稽山」であり、陳寿は、三国東呉の内部で曹魏の知らない会稽郡東冶縣を知るはずもなく、従って錯解しなかったのです。范曄は陳寿の百五十年後生(後生まれ)で、「魏志倭人伝」の抜き書き/所引を元に書いたので、走り書きに伴う抜けや誤写が発生したと見えます。この推測は誰にも否定できません。(教養ある諸兄姉に向かって、賛成しろと言っているのではないのです)

 范書「東夷伝倭条」を「倭伝」と無謬聖典視しても、誤写誤解は不可避です。信奉者から天誅を受けそうですが、恐れてばかりいられないのです。

 ご指摘の「魏志」王朗伝「東冶」は、禹后会稽「東治」故事に関係ないゴミで、どさ回りの范曄ならともかく、東京雒陽官人の陳寿の知ったことではないのです。「大行は細瑾を顧みず」
 陳寿は、「魏志」編纂に「呉書」を参照せず、「魏志倭人伝」論議で、「呉書」は「参考」に留めるべきです。

◯最後に
 掲載地図は、端的に言うと時代錯誤の悪用であって、読者に偏見を押し付け、学術的に無意味です。善良な読者の誤解を誘うので撤回をお勧めします。

                               以上

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