« 新・私の本棚 KATS.I ブログ =水行20日、水行10日...  3/3 | トップページ | 新・私の本棚 KATS.I ブログ =水行20日、水行10日...  1/3 »

2024年9月13日 (金)

新・私の本棚 KATS.I ブログ =水行20日、水行10日...  2/3

陸行1月の呪縛= 後漢書東夷傳(その1)-會稽東冶ー(ママ) 2024-07-27
私の見立て ★★★★☆ 前途遼遠  2024/09/09-13

◯現代風地理観の危殆
 ということで、「大海」を「広大な海」と解するのは、現代風地理観の押し付けであり、「倭人伝誤解症候群」の兆候とも言える重大な時代錯誤です。
 ちなみに、「山島」は、山が島となって「大海」中に在り、漢代、戦国齊領域の山島半島から対岸朝鮮半島をみたものです。以下、この調子です。

◯東夷変遷
 太古以来の「東夷」が中国(華夏)文化に属して「齊」となって以降、「東夷」は東方異境に放逐され、魯の偉人孔子が筏で浮海しようとしたのも、秦始皇帝が「東海」の果てに見たのも山東半島対岸の朝鮮半島と見えるのです。
 歴史的に、朝鮮は「燕」に続く半島北部で、同南部は「齊」の影響下です。

*凡そ100國である。
*武帝が衛氏朝鮮を滅ぼしてから(紀元前108年)、漢の都に通じる宿駅に使者を派遣したのはおおおそ30國であった。

 ここで「漢」は、東夷を管轄していた楽浪郡(宿驛)であり、「倭」は、後漢代東京雒陽まで遣使したわけではありません。范書で廃都長安は無意味です。

*(劉攽(1019年ー1068年)曰く、使譯を使驛と記述したのは他にも見られる。)

 「作譯」とは、考証の上、「驛」字を「譯」に書き換えたという事です。

◯世世傳統の怪
國皆稱王 世世傳統 其大倭王居邪馬臺國 (按今名邪摩堆音之訛也)
樂浪郡徼 去其國萬二千里 去其西北界拘邪韓國七千餘里也
其地大較在會稽東冶之東 與朱崖儋耳相近 故其法俗多同
*すべての國には王と称するものがいる。王は代々受け継がれている。
*その大倭王は、邪馬臺國に居住している。

 范曄は、原史料を読解できず迷走しています。漢制王自称は論外で、正史東夷伝倭条に書くと史官が断罪されます。世襲国主だけが「蕃王」なのです。

◯「邪馬臺国」創世
 漢(楽浪郡)の通達先は大倭王「邪馬臺国」城ですが、粗雑な所引の国名が正確とは考えにくいのです。併せて、「大倭」の由来は不明です。

◯「国邑」の由来
 「城」は、字形通り、四周土壁城郭の集落であり、「國」と書く以上、「国王」は常備軍を擁しますが、そのような王制の根拠は与えられていません。
 陳書は「倭人」居処は「國」ならぬ太古「国邑」は島嶼で城郭は無くとも無法でなく、戸数は万戸に及ばないとしています。國王伝統は数国のみです。

 時代考証すると、范書は、史料に、全く忠実でなく、現代風に言うと、「創造的」と見えます。(倭条に限ったはなしです)

 陳寿原本が皇帝至宝となり、時代最高の人材による綿密な校正が重ねられた「陳書」に対して、劉宋皇帝が、刑死范曄の未定稿を接収したため唐代まで閑却された「范書」は、全く、同列で評価することはできないのです。

〇范曄不遇
 以上、范曄は、史官基礎教養に欠け、綿密な史料解読を謬り、西晋滅亡時、基本資料の多くが失われたため、范書「倭条」は、依拠資料のない臆測を続けますが、范書西域/東夷伝が、仮普請で乱れているのは范曄の責任ではないのです。後生読者は、未完の紙書を遺した范曄の無念を忖度すべきです。

                                未完

« 新・私の本棚 KATS.I ブログ =水行20日、水行10日...  3/3 | トップページ | 新・私の本棚 KATS.I ブログ =水行20日、水行10日...  1/3 »

新・私の本棚」カテゴリの記事

後漢書批判」カテゴリの記事

倭人伝道里行程について」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« 新・私の本棚 KATS.I ブログ =水行20日、水行10日...  3/3 | トップページ | 新・私の本棚 KATS.I ブログ =水行20日、水行10日...  1/3 »

お気に入ったらブログランキングに投票してください


2024年10月
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31    

カテゴリー

  • YouTube賞賛と批判
    いつもお世話になっているYouTubeの馬鹿馬鹿しい、間違った著作権管理に関するものです。
  • ファンタジー
    思いつきの仮説です。いかなる効用を保証するものでもありません。
  • フィクション
    思いつきの創作です。論考ではありませんが、「ウソ」ではありません。
  • 今日の躓き石
    権威あるメディアの不適切な言葉遣いを,きつくたしなめるものです。独善の「リベンジ」断固撲滅運動展開中。
  • 倭人伝の散歩道 2017
    途中経過です
  • 倭人伝の散歩道稿
    「魏志倭人伝」に関する覚え書きです。
  • 倭人伝新考察
    第二グループです
  • 倭人伝道里行程について
    「魏志倭人伝」の郡から倭までの道里と行程について考えています
  • 倭人伝随想
    倭人伝に関する随想のまとめ書きです。
  • 動画撮影記
    動画撮影の裏話です。(希少)
  • 古賀達也の洛中洛外日記
    古田史学の会事務局長古賀達也氏のブログ記事に関する寸評です
  • 名付けの話
    ネーミングに関係する話です。(希少)
  • 囲碁の世界
    囲碁の世界に関わる話題です。(希少)
  • 季刊 邪馬台国
    四十年を越えて着実に刊行を続けている「日本列島」古代史専門の史学誌です。
  • 将棋雑談
    将棋の世界に関わる話題です。
  • 後漢書批判
    不朽の名著 范曄「後漢書」の批判という無謀な試みです。
  • 新・私の本棚
    私の本棚の新展開です。主として、商用出版された『書籍』書評ですが、サイト記事の批評も登場します。
  • 歴博談議
    国立歴史民俗博物館(通称:歴博)は歴史学・考古学・民俗学研究機関ですが、「魏志倭人伝」関連広報活動(テレビ番組)に限定しています。
  • 歴史人物談義
    主として古代史談義です。
  • 毎日新聞 歴史記事批判
    毎日新聞夕刊の歴史記事の不都合を批判したものです。「歴史の鍵穴」「今どきの歴史」の連載が大半
  • 百済祢軍墓誌談義
    百済祢軍墓誌に関する記事です
  • 私の本棚
    主として古代史に関する書籍・雑誌記事・テレビ番組の個人的な読後感想です。
  • 纒向学研究センター
    纒向学研究センターを「推し」ている産経新聞報道が大半です
  • 西域伝の新展開
    正史西域伝解釈での誤解を是正するものです。恐らく、世界初の丁寧な解釈です。
  • 邪馬台国・奇跡の解法
    サイト記事 『伊作 「邪馬台国・奇跡の解法」』を紹介するものです
  • 陳寿小論 2022
  • 隋書俀国伝談義
    隋代の遣使記事について考察します
無料ブログはココログ