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2024年10月15日 (火)

新・私の本棚 「古賀達也の洛中洛外日記」第2762話 『古田史学会報』170号の紹介 再掲

『古田史学会報』170号の紹介 百済祢軍墓誌の「日夲」 ―「本」「夲」、字体の変遷―
                 2022/06/16 2024/10/15

*加筆再掲の弁
 最近、Amazon.com由来のロボットが大量に来訪して、当ブログの記事をランダムに読み囓っているので、旧ログの揚げ足を取られないように、折に触れ加筆再掲したことをお断りします。代わって、正体不明の進入者があり、自衛策がないので、引きつづき更新を積み重ねています。

◯はじめに
 本項は、私淑する古賀氏のブログ記事の批判でなく、随想であることは、ご理解いただきたいものです。

*引用
 … もう一つの拙稿〝百済祢軍墓誌の「日夲」 ―「本」「夲」、字体の変遷―〟も半年ほど前に投稿したもので、順番待ちのため、ようやく今号での掲載となりました。本稿は、百済祢軍墓誌に記された「日夲」の「夲(とう)」は「本」とは別字であり、「日夲」を国名の「日本」とはできないとする批判に対する反論です。七~八世紀当時の日中両国における使用例を挙げて、「夲」の字は「本」の異体字として通用していたことを実証的に証明しました。 …

*コメント

 勉強不足の初心者が見当違いの新発見を提言するのは手ぶらで書いてすむのですが、権威と責任のある古賀氏が、丁寧に諸資料を検索して実証的に反論するのは、大変不公平と見えます。
 バリバリの私見で恐縮ですが、率直に発言させていただくと、本件は、同時代の中国史料について論考を展開する程度の教養を有した人物にとっても当然、自明の事項であり、当然「不成立」なのですが、そのような当然、自明の事項を個人的に知らないからと言って、未審査の思い付きを公然と提言すべきではないと思われるのです。

 いや、このような思い付き発言は、古代史学分野では、ありふれているので、「言ったもん勝ち」だと思っている方も多いでしょうが、まずは、とことん自己検証すべきのです。

 素人なりに調べても、「本」の字は、十の縦横書画の交点から、左下、右下への書画が始まるので、紙面で言うと、墨がうまく流れないと、四本の書画の交わるところに墨が溜まって、にじみやすいのです。あるいは、交点の一点から、二本の書画が始まるので、書き出し位置の狂いが目立ちやすいのです。

 公文書の清書などの改まった場は、名人が時間をかけて書き進めるので、そのような不始末は出ませんが、公文書の下書きや日常の信書では、余計な心配がいらない「夲」が通用/常用されていたのです。(実証は、端から不可能ですが)

 ご参考までに言うと、知る限り、現代でも日常文書では「日夲」が、むしろ普通と見えるのです。字体は「変遷」していないのです。

 本題に還ると、墓誌は石刻であり、刻工は、墓誌全体を「ボツ」にするような手違いの出にくい「夲」と刻んだのです。
 因みに、「百済祢軍墓誌」に「日夲」国号をみるのは、明らかに、早とちりの勘違いですが、既報なのでここでは論じません。

 思うに、古賀氏ほどの論客が、「七~八世紀当時の日中両国」とは、氏の見識を疑わせかねないので、ご自愛いただきたいものです。

 衆知の如く、「日本」が国号として「中国」に認知されたのは八世紀以降であり、また、当時、「中国」が国号であったかどうか、不確かと思うのであり、古代史論で「日中」は、不適切と見ます。
 ちなみに、「魏志倭人伝」に、全文引用された曹魏皇帝の帝詔では、曹魏自身を「中国」と称しているように見えますが、詔の対象は、対等の天子でなく、遥か下位、番外の蕃夷の王ですから、名乗りを上げているとは見えないのです。つまり、自身の実名を述べる場合ではないのです。

 いやはや、「思いつき」を契機に「新説」を言い立てる方は無造作で済んでも、責任を持って回答するには、大変な苦労が伴うのです。

                               以上

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