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2024年11月20日 (水)

新・私の本棚 刮目天一 ブログ記事公開質問への回答 補 1/3 補追

                                 初稿 2020/06/27 補充 2023/02/05, 2024/11/20
 本件、貴ブログで公開質問いただいたので、対して公開回答いたします。
 九州王朝説は古代史の躓き石だろ(^◇^)

*加筆再掲の弁
 最近、Amazon.com由来のロボットが大量に来訪して、当ブログの記事をランダムに読み囓っているので、旧ログの揚げ足を取られないように、折に触れ加筆再掲したことをお断りします。代わって、正体不明の進入者があり、自衛策がないので、引きつづき更新を積み重ねています。

◯始めに

 貴ブログを折に触れて拝見しているのですが、それぞれの記事の貴見の元になっている史料の「史料批判」が、大抵の場合、よくわからないので、安易な批判を避けています。要は、大抵のご意見は、どんな根拠でそのような理解に至ったかよくわからないのです。
 今回も、折角時間をとっていただいたのに、貴質問の趣旨が今ひとつわからないので、小刻みに回答いたします。

 まず、小生のブログ記事は、別に川村氏の人格攻撃でなく、また、氏の国内史料基点の論考の筋道を非難しているものでもないのです。むしろ、確たる基点から進めているにしては、事実誤認や時代錯誤が目立つので、丁寧に字数をかけて指摘しているものです。

 また、学術論であれば、批判対象の「九州王朝説」の全貌を確認した上で展開すべきです。ここは、末節である古代史書の評価基準を論難しているようですが、それは、「九州王朝説」批判と言っていいのか、大変疑問です。

 小生のいう「躓き石」は、「大丈夫」(巨漢のこと)が気づかずに踏み越えても、子供が大けがする邪魔ものを言うのです。要は、間違った、きたない言葉を、後世を担う子供達に伝えたくないから、延々と、全国紙記者や公共放送担当者に対して、うるさく警鐘を鳴らしているのです。趣旨をご理解いただけていますでしょうか。
 世人に警告するなら、どこでどう躓くのか、具体的に指摘しなければなりませんが、川村氏は、気づいてないのでしょう。

 と言うような事どもは、議論しても進まないので、隋書「俀国伝」の史料解釈に挑んでいるわけで、川村氏非難でないし、氏の信奉する諸説そのもの非難でもないことを繰り返します。

*各論展開
 と言う事で、ようやく、貴兄の見解に対応できるわけです。

*海路の愚~たっぷり、どっさりの贅沢
 まず、貴兄は、長野氏を「古代海洋技術の専門家」と崇めて、無批判で称揚していますが、在野の史論家の判断としては、賛成できません。
 掲示の新書は、小生の書評記事において、著作の論理を細かく見通した上で、延々と難点を摘出し、手厳しく『虚偽(フェイク)の塊、「全体として悪書」』と批判していて、貴兄と評価が大きくずれているので、この際、貴見に従うことはできません。
 なお、「古代海洋技術」なる無法な新語は、太古以来の典拠に無く、古代史論には、一切通用しません。用語の時代錯誤には、目立つものも、目立たないものも合わせて、くれぐれもご注意ください。言うまでもないのと思うですが、「海洋技術」自体が、何の事か意味不明でもあります。
 また、長野氏が、無造作な憶測の根拠とされている「日本書紀」は、少なくとも、当分野、つまり、中国史料の史料考察では、史料として全面的には信頼できないとして保留しているので、これもまた議論の俎上には載せられません。史料批判で門前払いです。いえ、見当違いというのですから、見当の合う国内古代史論で、十分な史料批判の上、見当が合うように補正してから、出直して頂きたいものです。

 と言う事で、折角のご批判ですが、誠に恐縮ながら、六世紀末、ないしは、七世紀初頭、瀬戸内海を、隋から渡来した帆船が易々と航行したとする根拠は、一切いただけなかったと考えます。「易々と」というのは、見たことも聞いたことも無い大型の帆船である隋使船を案内して良いほど、「万に一つの失敗もない」、と言う意味です。何しろ、隋皇帝の使者を遠路はるばる招請しようというのですから、「多分」、「恐らく」では済まないのです。
 要するに、まずは、陸上街道には、万に一つも「難船」「難破」の危険はないのに、わざわざ命がけで船に乗るのが理解できません。中原人は、山東半島までは、安全、安心な大地を行く街道行程であり、竹斯国まで(倭人伝でいう)万二千里の大半が、海船の船酔い地獄行程を、死ぬ気で、とは言え、命を全うして無事乗り切ったのに、不沈大地を離れる危険に取り組むことが理解しがたいのです。
 隋使裴世清は、武官なら、軍命達成に命をかけたかも知れませんが、堅実を旨とする(最下級)文官文林郎であり、「使命を確実に果たして、無事帰国報告することが至上命令」ですから、命(いのち)を惜しんだと思うのです。

 言うまでもありませんが、小生が述べているのは、数多くの難所があり、日々の漁で海況に慣れている地元漁師の手漕ぎの小舟ならいざ知らず「吃水が深く、幅広で、舵の効きが悪い」と知れている(東夷の目からみて、途轍もなく)大型の帆船は、無事通れない(可能性が大変高い、せいぜい、絶対安全とは言えない)というのであり、反論には、難所を残らず解消したとの明確な論証が必要です。信用できない著者(長野氏のことです)の漠たる発言や伝聞や史料を盾に取るのではなく、信じるに足る論証/論拠を提示いただくようお願いします。(いえ、「後悔日誌」でも「航海日誌」でも、具体的な文献史料を提示いただけば、それで十分なのです)

*無法な悪書~無頼派の台頭か
 因みに、長野氏への重大な難詰は、史記、漢書から魏志に至る中国「正史」に一切登場しない「海路」なる無法な用語を振り立てて、無法、無意味な推論を繰り広げている点です。善良な読者に、未検証の生煮えの作業仮説を麗々しく飾り立ててばらまくのは、無法です。
                                未完

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